ユーリードシステムズのリン社長は、ビデオ編集や画像編集ソフトの市場拡大には、遊び心の提案が重要だという。パソコンのほか、ビデオカメラ、デジカメ、DVDレコーダーなどのデジタル機器が普及し、ユーザーが保有するコンテンツが増えている。しかし、多くのユーザーが「コンテンツを眠らせたままの状態」とリン社長は指摘する。こうしたユーザーにアプローチできれば、編集ソフトの市場は拡大できると確信している。昨年は、次世代DVD対応に向けた開発投資に集中した「我慢の年だった」と振り返るが、今年は先行投資を回収しつつあることに自信を示し、一気にビジネスを加速させる。
田澤理恵 取材/文
清水タケシ 写真
ビデオ編集で遊び心を提案 眠っているコンテンツを呼び覚ます
――昨年4月、米インタービデオの子会社となった。現在の両社の状況は。 「両社の重複したリテール向け製品群を整備した。もともとユーリードはリテール市場を強みとしてきた。そのため、インタービデオブランドのソフトについてもマーケティングとリテールはユーリードが担っている。一方、インタービデオジャパンは、法人向けOEMが主体。ユーリードのOEMビジネス拡大の強みとなる。インタービデオのOEMのノウハウと、当社のリテールでの強みを組み合わせて相乗効果を発揮していきたい」
――ユーリード製品の販売戦略は。 「主力のビデオ編集、オーサリング、映像編集にフォーカスして拡販を図っていく。昨年は、販売金額では前年並み、販売本数については、2004年に比べると上昇した。今年度は、リテールで前年度比105-108%を予測している。さらに、ECのチャネルの伸び率が好調に推移しているため、ECでは前年比110-120%の2ケタ成長を見込んでいる」
――ビデオ編集は、ソフト市場全体のなかで決して大きな市場とはいえない。どのように伸ばしていくのか。 「数字的にみると確かに大きな市場ではない。しかし、ワールドワイドでは、日本市場のシェアが最も高く、伸び率も大きい。日本はデジタルビデオカメラ、デジカメ、DVDレコーダー、テレビパソコンなどのデバイス類が充実している。これらのユーザーは、持っているコンテンツを眠らせている。このコンテンツを最大限に引き出すことが最大のミッションだ」
――具体的な取り組みは。 「10年前のパソコンと違い、現在ではCPUやメモリのパフォーマンスが上がっていることから、昔のようにレンダリングに一晩かかることはない。ハイビジョンのキャプチャをリアルタイムで行うことも可能だ。しかし、ユーザー拡大のためには、編集の早さや多機能化を追求しても市場拡大にはつながらない。なぜなら、一般ユーザーにとってビデオ編集は難しいというイメージが強いからだ。操作を簡単にしなければ、市場拡大は図れないだろう。ユーザーが難しいと感じている点を払拭するには“遊び心”を提案することが重要だと考えている」
――その“遊び心”の提案とは。 「ビデオ編集ソフト『Video Studio』では、撮影シーンにあったテンプレートをユーザーが選択して、自動編集できる機能を搭載している。提案策としては店頭でのプロモーションのほか、学校などの教育機関へのアピールも重要だ。若い世代がメールを使うような感覚で、遊び心を持ってビデオ編集ソフトを使ってほしい。そのためはクリエーターを目指す学生に限らず、一般の学校でビデオを使った研究成果の発表など、小さいころからビデオ編集にふれる機会を提供していきたい」
――今年、どのくらいのシェアを狙うか。 「ナンバーワンシェアは意識しない。ナンバーワンが全てではないと考えており、獲得しても満足することはない。ただ、3年後をめどに『Video Studio』と『MovieWriter』のトータルの販売本数シェアで、75%を狙っていきたい。30%程度のシェアで満足していては、意味がない」
DATA FILE■次世代DVDの編集ソフトに注力 ユーリードシステムズは、ビデオ編集ソフト市場で首位を獲得している。図は、BCNランキングのビデオ関連ソフト市場全体のなかから、編集ソフトのみを抽出し、メーカー別シェアを表したもの。首位のユーリード(27.4%)は、2位のソースネクストに7.6ポイント差を付けて優位に立っている。機種別では、DVDオーサリングソフト「DVD MovieWriter 5 乗換/アップグレード」が首位を獲得している。
同社は、次世代DVD対応製品の開発に注力している。今年はインタービデオジャパンの製品を含め、順次、対応製品を発売。ソニーが6月に発売する「バイオ」のブルーレイディスク(BD)ドライブ搭載機種には、ユーリードの「Ulead BD DiscRecorder for VAIO」が搭載されている。