今年11月の企業向け「Windows Vista」「Office 2007」の発売に続き、来年1月30日にはついに消費者向けにVistaを発売する。5年ぶりのメジャーバージョンアップで、ユーザーからメーカーにいたるまで大きな話題となっている。買い控えともとれる今のPC市場の低迷は、Vista投入で一気に盛り上がるのか。ジェイ ジェイミソン・Windows本部本部長はVistaを「業界全体における大きな革新の波」と位置づけ、あくまでもパートナーとの連携により、PC市場全体の引き上げに確固たる自信を示す。
木村剛士 取材
鍋島蓉子 文
大星直輝 写真
「業界における革新の波」 Vistaで市場伸長図る
――発売日を1月30日にした理由は。 「Vistaは業界全体における大きな革新の波と位置づけるべきと考えている。発売にあたってはハードメーカー、デバイスメーカー、ソフトメーカーなど多くのパートナーに支援してもらうため、このタイミングになった。もうひとつはグローバル規模のリリースだけに、世界中の多くのパートナーの参加を促す意味合いもあった」
――こだわった点、苦労したポイントは。 「Vistaを開発し始めた当初、ブロードバンドが広範に広がり、今後はデジタル写真やデジタル音楽などが生活に不可欠になると予想していた。そのため、より高いレベルでのセキュリティの実装や、複雑になるシステムを使い勝手のよいものにするという相反することを実現する必要があった」
――セキュリティ機能については、Vistaリリース同日に有料ソフトを販売するが。 「セキュリティはVistaの開発のなかで、もっとも力を入れた分野だといっても過言ではない。ただ、Vistaはあくまでセキュリティの基盤。自社の有料ソフトや他社のソフトはさらに強力なセキュリティ基盤を構築するためにも必要だと考えている」
――Vistaのインパクトは。 「10月に開催された『WPC』で、Windows Aeroを実際に消費者に触ってもらったところ、8割がAeroのユーザーインターフェースが非常に魅力的と答えた。当社のホームページには記録的なアクセス数があり、β版のインストールで実に33万を配布している。業界全体が相まって他の追随を許さないものに仕上がったと考える」
――XPリリースの時と比べて手ごたえは。 「XPの出来を100として考えると、Vistaには200をあげてもよい。規模、影響度、成功の度合いにおいてXPをはるかにしのぐ。XPの時と比べ、デジタルカメラやオーディオプレーヤーなど、デバイス自体の発展やデジタルライフスタイルも進化した。そこにおいて人々が使い勝手よく楽しめるようになったPCに興味を持つようになった。人々が『PCを何に使いたいか』という今の消費者の要求に応えられるものになっている」
――今まで市場が伸び悩んでいた理由は。 「インターネット、eメールは頻繁に使用しているようだが、すべての場面でPCを使用するわけではない。今まではあと一歩のところで使い勝手がよくなかったり、楽しみがなかったりしたのだと思う。PC自体だけでなく周辺機器やアプリケーションなど、ユーザー体験の最初から最後までシンプルで使いやすく楽しめるものでないといけない。パートナーとの連携でもそこを重要視している。2007年は市場は伸びると楽観している」
――Vistaの普及の見通しは。 「既存ユーザーのなかで何%がVistaのPremiumバージョンを選ぶかということに関心がある。まずは最初の半年から1年で消費者の50%にプリインストールした形で使ってもらいたいと考えている」
DATA FILE■8割シェアで寡占市場 OS(基本ソフト)市場はマイクロソフトの寡占市場といっていい。
11月27日-12月3日のBCNランキングのメーカー別販売本数シェアはマイクロソフトが81.3%で断然トップ。2位には12.3%でアップルコンピュータ、純国産OS「ターボリナックス」を販売しているソースネクストが4.2%で3位につけている。今回のVista発売はPC市場の様相を一気に塗り替える大きな出来事だ。すでにVistaの予約販売分もランキング上位に上がってきている。
新OSで特に注目すべきは新機能Windows Aeroだ。複数のアプリケーションを3D表示することで見やすくなったのはもちろんのこと、CPUの負荷を軽減した。
また写真、音楽、動画などを1つで楽しめるWindows Media Centerの実装、PCやアプリケーションなどの起動時間の短縮、検索機能の向上などが図られている。