大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>53.海外PC事業に活路求めるメーカー各社

2007/06/18 16:51

週刊BCN 2007年06月18日vol.1191掲載

■Vista効果、顕著に現れず

 国内PC市場がなかなか回復しない。BCNランキングによると、1月30日にWindows Vistaが発売されてから、2月には一時的に台数ベースで前年同月比0.9%増と前年実績を上回ったが、3月には4.8%減、4月には6.7%減、5月には4.9%減と、その後は、前年割れで推移している。Vista効果は、PC需要を押し上げたとはいえない状況にある。

 BCNでは、秋口までは前年同月比5%減程度で推移し、その後、前年並みに戻ると予測しているが、秋口以降の前年実績がVista発売前の買い控えにより2ケタのマイナス成長となっていたことを考えると、前年並み程度に回復しても、手放しで喜べる状況とはいえない。

 一方、電子情報技術産業協会(JEITA)では、「過去最高実績となった2005年度に匹敵する規模への成長を想定しており、推計で5-6%増の成長を見込む」としている。今年度の集計からデルおよび日本ヒューレット・パッカードの2社が抜けるため、集計数字上では大幅な減少となるが、市場全体としては06年度の落ち込みを07年度にカバーできるとみている。

 だが、各社とも国内向けPC事業は厳しいとみている。

 PC事業を国内に特化しているNECは、前年並みの270万台と慎重な見通しを示し、ソニーも国内PC事業は前年並みの出荷台数にとどまると予想している。

■ノートPCで海外を攻略

 こうしたなか、PC各社が期待を込めているのが海外市場である。

 国内PC市場の計画を慎重にみている富士通、東芝、ソニーといった国産PCメーカーは、海外戦略では一転して成長路線を描こうとしている。

 東芝の執行役員常務兼PC&ネットワーク社副社長の下光秀二郎氏は、「日米欧の3極での事業体制に加えて、アジア、中南米、ロシア、中国といった地域での本格展開を視野に入れている。ロシアでは、すでに前年比2倍の売り上げで推移している。今後は、新興市場向けのローエンド機種、ボリュームを担う機種の展開も必要になる」との見方を示している。

 また、ソニーVAIO事業本部の石田佳久本部長は、「新興市場向けに低価格モデルを用意することは考えていない」と前置きしながらも、「海外においては、ソニー製PCの高機能に対する評価が高く、付加価値戦略が成果をあげている。東欧をはじめ、新たな国にも事業を拡大しており、07年度のPC事業は、海外事業の成長がひとつの鍵になる」と語る。ソニーでは、07年度の事業計画として前年度比15%増の460万台の出荷を目指すが、この成長分はすべて海外事業で賄う計算だ。

 一方、富士通も好調な欧州市場向けの展開を強化していくことで、10%増の930万台の出荷を目指す。

 日本のメーカーが得意とするノートPCの需要が、欧米でも顕在化。さらに、新興市場向けの基盤が整備されつつあることが、こうした海外での成長戦略の下支えになっている。

 PCメーカーにとって、2007年度における事業のポイントは、海外戦略にあるといえる。
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