大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>104.着実に拡大する中古PC市場

2008/07/07 16:51

週刊BCN 2008年07月07日vol.1242掲載

 有限責任中間法人中古情報機器協会(RITEA)が発表した2007年度の中古情報機器の販売台数実績は、前年比33%増の165万1000台となった。そのうち中古PCの出荷台数は158万9000台。前年比30%増の高い成長率を記録している。

■高まった認知、環境も整備

 だが、この高成長率をそのまま鵜呑みにできない。というのも、昨年の調査対象31社に対し今回の調査では36社。市場カバー率も、前年の80%以上から、85%以上に拡大していることを差し引く必要があるからだ。「市場カバー率の上昇による影響は、成長率の半分程度」(RITEA常務理事・事務局長の小澤昇氏)というように、新品市場が前年比横ばいにとどまっていることからも、中古PC市場の伸びは特筆できる。では、なぜ市場が拡大しているのだろうか。

 最大の要因は、中古PCに対する認知度が向上してきたこと。ビックカメラやソフマップ、ヤマダ電機など大手を含め、中古PCを取り扱う店舗は明らかに増加傾向にある。それに伴い、PCを下取りに出して、新たなPCを購入するユーザーが増加しているのである。また、PCを廃棄しようとする場合、リサイクル費用が発生することから、少しでも金銭的メリットがある下取りに出すユーザーが増加したことも見逃せないだろう。

 さらに、設立から3年目を迎えようとするRITEAの活動によって、安心して売買できる環境が整ったことも大きな要素だ。RITEAでは、事業者に対して認定資格を付与する「RITEA認定中古情報機器取扱事業者制度」を開始。08年度は、会社単位の認定から事業場単位への認定方法に変更し、35社47事業場を新たに認定している。さらに、同認定事業者が再生品化を行い、データ消去作業が終了した完動品に対して貼付する「RITEA認定中古情報機器取扱事業者ラベル」を作成。これによって一般ユーザーは、情報漏えいなどを心配することなく安心してPCを下取りに出すことができ、さらに、一定レベルにおいて再整備された中古PCを購入できる環境が整ったといえる。

■業界全体で検証する時期

 「安心して売却、購入できる仕組みが構築されたことによって、製品価値があるうちに買い換える利用者が増加する。これが中古PC市場の形成につながり、新たな需要層にPCを広げることが期待できる。中古市場の活性化が、結果として、情報機器の長寿命化につながること、製造工程が省略できることの特徴を活かし、廃棄物の抑制やCO2排出量削減にも貢献できるという効果ももたらす」(小澤常務理事)というわけだ。中古PC市場は慢性的な品薄状態となっており、良質な製品確保が大きな課題。言い換えれば、中古市場に拠出される良質なPCが増加するということは、そのまま中古PC市場の拡大に直結することになる。

 いずれにしろ、158万9000台という市場規模は、新品PCの1割強にまで達する水準だ。その存在感は年を追うごとに高まっている。中古PC市場の確立によって、PCユーザーの広がりにどれほどの影響を及ぼし、どんなメリットを生むことができるのか。業界全体で改めて検証してみるタイミングに入ってきたとはいえまいか。
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