店頭流通

巻き起こる“iPhone旋風” 発売当日にシェア44.9%を記録

2008/07/28 16:51

週刊BCN 2008年07月28日vol.1245掲載

 「iPhone(アイフォーン)3G」が、発売直後の2日間とも携帯電話の販売台数シェアでトップを獲得した。7月11日にソフトバンクモバイルが発売したアップル製携帯電話iPhoneは、発売前から各地で長い行列ができるほどの人気を集め、日本列島各地にiPhone旋風を巻き起こした。強烈な立ち上がりを見せたiPhoneだが、日本の携帯電話市場にこれからどんな影響を与えるのだろうか?

携帯電話ビジネスに与える影響は?

ほぼ半数がiPhoneという熱狂ぶり

 2008年7月11日の「BCNランキング」では16GBと8GBの両モデルを合わせた販売台数シェアが速報値で44.9%。2桁シェアでも珍しい携帯電話市場で、発売当日の瞬間最大風速ながら5割に迫る驚異的な数値をたたき出した。

 モデル別で見ると、最も売れたのはiPhoneの16GBモデルで、11日には36.8%を記録。2位も同8GBモデルで8.1%だった。長蛇の列をものともしないユーザーには、やはり上位モデルが人気があったようだ。翌12日には、売り切れ店が相次いだ影響からかシェアは急落。しかし16GBモデルが10.3%と依然トップシェアを維持した。2位こそ5.6%でauのカシオ製防水モデル「W61CA」に譲ったものの、3位はiPhone 3Gの8GBモデルが占めた。

 またキャリア別の販売台数シェアにもiPhoneは大きく影響。11日時点ではソフトバンクが51.6%と過半数を占めた。しかし翌12日には27.7%と一気に落ち込んでいる。初回販売分を売り切ってしまったための現象だと思われるが、「iPhoneの予約は受け付けているが次回入荷は未定」とする販売店が多い。

世界規模でも100万台突破だが…

 発売直後の週末を含む7月第1週(7月7-13日)の販売台数ランキングでも、16GBモデルが10.0%の販売台数シェアで1位を獲得。同8GBモデルは3.0%で9位につけた。キャリア別でもソフトバンクのシェア拡大に大きく寄与し、7月第1週で今年初めて25%の大台を超え、25.2%を記録した。iPhone 3Gは世界21か国で発売されたが、アップルは7月14日、金・土・日の3日間での販売台数が世界合計で100万台と発表。スティーブ・ジョブズCEOは「初代のiPhoneが100万台に達するのに74日かかった」としており、iPhone 3Gの好調さがうかがえる。

 そして週が明けた14日の月曜日、日本市場ではiPhoneの嵐はいったんおさまったようだ。ほとんどの店舗で「品切れ・入荷未定」の状態になっているためで、売る製品がなければシェアを伸ばすことはできない。7月14日の速報値では、16GBが6位で3.4%、8GBが9位で2.8%と両モデルともトップ5から姿を消した。また、ソフトバンクが瞬間的に過半数を記録したキャリア別の販売台数シェアも、14日には20.8%と「平時」の水準に戻りつつある。

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 キャリア別の携帯電話販売台数シェアは、6月の時点でNTTドコモが52.5%、auが32.8%、ソフトバンクが13.8%。iPhoneは業界3位のソフトバンクモバイルのシェアを一気に拡大するチャンスをもたらしているが、そのカギは当面、製品の供給力にかかっているといえそうだ。

携帯ビジネスのトレンドは

 猛烈な立ち上がりをみせたとはいえ、この端末が日本の携帯電話市場でどれほどの位置を占めることになるのかはまだ判断できない。米国では2007年1月に発売されたものの、日本では長い間お預けの状態が続いていた。いわば長大なティザーキャンペーンが続いていたようなもので、立ち上がりの大きなインパクトは十分予測できた。

 だが、問題はこれから。操作体系も思想も全く異なる端末がどの程度日本の携帯電話市場に受け入れられるかは、熱狂状態から醒めた後に徐々に判明していくことになるだろう。もし、iPhone人気が衰えず長期間にわたって持続すれば、日本の携帯ビジネスに与える影響は大きい。

 携帯電話のキャリア各社はこれまで、携帯電話端末の開発にも大きな影響力を持っていた。この日本独自ともいえるシステムが、携帯メーカーのグローバルな競争力までも奪ってしまったとする批判もある。しかし、このところAQUOSケータイやVIERAケータイといった家電メーカーの主力商品のブランドを冠したモデルが登場。販売ランキングの上位を占めるようになってきた。

 07年1月に契約数が1億を突破して飽和状態に達している携帯電話市場だけに、キャリアとメーカーのパワーバランスも、微妙に崩れ始めているようだ。キャリアのロゴすらない究極のブランド携帯iPhoneが一定の成功を収めればその流れに加速度がつく。08年は日本の携帯電話ビジネスを大きく変える分岐点になるかもしれない。(道越一郎)
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