セキュリティソフトの市場に、異変が起きている。トップベンダーとして君臨していたシマンテックが、ライバルに1位の座を譲ったのは約半年前の今年3月のこと。この9月、そのシマンテックがトップに返り咲いたのだ。熾烈な競争を展開している上位3社の動きを、BCNランキングをもとに分析してみよう。


今後の勢力図占う秋の新製品

 セキュリティソフト上位3社のシェア争いが白熱している。9月のベンダー別販売本数シェアでシマンテックが30.3%を獲得。7か月ぶりの首位だ。これまでトップを走っていたトレンドマイクロは29.5%にとどまり、0.8%差で2位に後退。3位はソースネクストで24.8%だった。2強のシマンテック、トレンドマイクロは、今秋の新製品でプロモーションを強化、認知度の拡大に力を入れる一方、ソースネクストは、USBメモリタイプの製品を投入して新機軸を打ち出している。

 同じく9月の製品別販売本数シェアトップ5をみると──。1位はシマンテックが今秋発売した「Norton Internet Security 2009」で17.1%。2位は今年2月発売のソースネクスト「ウイルスセキュリティZERO 3台まで使える新パッケージ版」で16.0%だった。3位もソースネクストで今秋発売の「ウイルスセキュリティZERO(3台まで使える新パッケージ)USBメモリ版」。続く4-5位はトレンドマイクロが占める。4位に今年3月発売の「ウイルスバスター2008 1年版 SP1対応」、5位に今秋の新製品「ウイルスバスター2009 1年版」がランクインした。

 シマンテック、トレンドマイクロの新製品は、旧バージョンと比べてメモリ使用量の削減や動作速度を向上させただけでなく、プロモーション展開の強化策が目立つ。例えばシマンテックは、PRにキャラクターや「しょこたん」こと中川翔子を起用し、認知度アップに力を入れている。またトレンドマイクロは、旧バージョンでは地方中心だったテレビCMを、今回から東京エリアでも展開している。

 こうした新製品およびマーケティング戦略が、今後の勢力図を左右することになる。


ミニノートPCが市場をけん引か

 2強が認知度アップに力を入れるかたわらで、追随するソースネクストはUSBメモリタイプの製品を投入。パソコンソフトに新機軸を打ち出した。CD-ROM 版に比べて4分の1程度の小さなパッケージのため、パソコン本体売り場にも設置でき、売り場を拡大している。USBメモリタイプのソフトは、CD/DVDドライブを搭載していないパソコンでもインストールできることから、ミニノートPCユーザーの需要獲得も睨んだ製品だ。ミニノートPCは、インターネット閲覧を主な使用法とするユーザーが想定されるため、セキュリティソフトの需要も見込める。

 しかし、ミニノートPCにセキュリティソフトをインストールする際に懸念されるのは、HDD容量が少ないことだ。その一方で、もはや主流となったセキュリティソフトの複数ライセンス販売が、市場拡大に寄与する可能性がある。現在、セキュリティソフト市場では、販売本数の9割近くが3ライセンス版。つまり、セキュリティソフトを買うと、当たり前のように3つのライセンスが付いてくるのだ。例えば、ミニノートPCの入手を機にセキュリティソフトを購入したユーザーは、1ライセンスをミニノートPC用に、残りをデスクトップなどの既存のパソコンに利用できる。このため「追加購入」を促す起爆剤になるという見方ができる。

 セキュリティソフトは、店頭市場では本数・金額ともに前年を下回っているものの、ネット販売での売れ行きは好調だ。今年6月以降は本数ベースで1.6-1.8倍、金額ベースで1.5-1.7倍と大幅に拡大している。この期間は、ミニノートPCとイー・モバイルの通信カードとのセット売りが本格化した時期と重なる。ネットの利用を前提としながらも、ほとんどのミニノートPCにはセキュリティソフトがインストールされていない。ミニノートPCの拡大がセキュリティソフト需要を押し上げる副次効果も生んでいるようだ。(田沢理恵)