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リニアPCMレコーダー 高機能モデルの売れ筋は 「生録」ブーム再来か?

2008/10/27 16:51

週刊BCN 2008年10月27日vol.1257掲載

台数、金額とも上昇の傾向

 楽器の演奏や乗り物の駆動音など、現場音をリアルに録音できるリニアPCMレコーダー。CDより優れた音質で手軽に録音できるのが特徴だ。音質の目安は、音声をアナログからデジタルに変換するきめ細かさを示す「サンプリング周波数」と「量子化ビット数」。民生用でもプロ並みの録音品質の「96kHz/24bit」に対応するものもある。「BCNランキング」で売れ筋をピックアップした。

■「周波数」と「ビット数」が目安

 リニアPCMレコーダーとは、アナログ音声を圧縮せずにデジタルで録音できるレコーダーのこと。会議などを録音するビジネス用途のICレコーダーとは利用シーンが異なり、ユーザーにはプロの音楽業界関係者、アマチュアながらバンドを組んでいる中高年の人たちなどが多い。さらに、鳥の鳴き声、流水音など自然の音を録音することに関心のある人など、音にとことんこだわりたい人に人気がある。

 録音フォーマットのリニアPCM形式には、録音時の音質を規定する「サンプリング周波数」と「量子化ビット数」にいくつかの種類がある。現在一般向けに販売されている主なモデルは、CDと同等の音質である「44.1kHz/16bit」と、それ以上の高音質で録音できる「96kHz/24bit」の2種類。特に「96kHz/24bit」は高音質で録れるため、保存するデータの容量は非常に大きくなる。

■音楽制作向けの機能搭載モデルも

 9月の機種別販売台数シェアから、サンプリング周波数/量子化ビット数が「96kHz/24bit」のリニアPCMレコーダーについてトップ5をあげてみよう。1位はローランドの「R-09HR」。画面にはレベルメーターが見やすいよう、視野角の広い有機ELディスプレイを採用。付属リモコンで遠隔操作もできる。

 ほかの機種と比べると本体が小ぶりで使いやすいのが、オリンパスの「LS-10」。2位にランクインした。ストレート型携帯電話をひとまわり大きくした程度のコンパクトサイズ。表面の質感が高く、握りやすい。マイク部をアルミ製にして、本体の振動が伝わりにくい構造を実現した。

 楽器演奏を録音するのに特化したモデルもある。音楽制作機器メーカーのズームが発売した3位の「Handy Recorder H2」は、2組のステレオマイクを内蔵し、「90度」「120度」「360度」の収音に対応。ソロやバンド、野外演奏など状況に合わせて録音範囲を設定できる。楽器の練習向けにチューニングやメトロノームの機能も内蔵。USB端子を搭載し、PCに接続すれば外付けマイクとしても使える。

 4位はソニーの「PCM-D50」。音質を優先するため、ほかの機種と比べて大きめの基板を採用した。ノイズを抑える回路構造を工夫し、高音質を追求した。マイクの向きを「90度」「120度」に変更することで、音源までの距離に応じた収音の調節が可能。サンプリング周波数/量子化ビット数が「96kHz/24bit」で、ヘッドホンで音声を確認しながら録音する場合、ニッケル水素充電池4本で約13時間の長時間録音ができる。

 5位にランクインしたのは、3位と同じズームの「Handy Recorder H4」で、ギターやベースの演奏を考慮したモデルだ。プロ用のマイクなどを直結できるXLR/フォーン兼用入力端子を搭載。複数の楽器の音をそれぞれトラックに分けて録音できる「4トラックモード」を備え、マルチトラック録音に対応する。

 9月の「BCNランキング」では、リニアPCMレコーダーはICレコーダー全体の販売台数シェアで約1割、金額シェアで約2割を占め、市場としても徐々に盛り上がりを見せている。これから、さまざまな音を集める「生録ブーム」が再来するかもしれない。(井上真希子)
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