大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>122.新MacBookに採用されたユニボディの衝撃

2008/11/17 16:51

週刊BCN 2008年11月17日vol.1260掲載

 アップルの好調ぶりが際立っている。米アップルが発表した同社第4四半期決算(7-9月)は、売上高は前年同期比27%増の78億9500万ドル、純利益は26%増の11億3600万ドルとなった。

 第4四半期のiPhone販売台数は689万2000台となり、前年同期比で約6倍の実績。Macの出荷台数は前年同期比21%増の261万1000台を記録。iPodの販売台数も8%増の1105万2000台と、大幅な伸びを見せている。

軽量化と堅牢性を両立

 こうしたなか、アップルはMacBookおよびMacBook Proの新製品を新たに投入した。

 新製品では、液晶部には、LEDバックライトを採用し、鮮やかな画面を実現。また、新採用のガラス製マルチタッチトラックパッドでは、マウスパッドのボタンを排除。パッド全体でクリックするという操作環境を導入するとともに、新たに4本指でのマルチタッチ操作を可能とし、さらに、設定によっては、右下部分をクリックすると、Windowsで一般的な「右ボタンクリック操作」を可能とする。右クリックに慣れたWindowsユーザーが、違和感のない操作をMac上でも再現できるのだ。

 また、今回の製品から初めてNVIDIA製のグラフィックス統合型チップセット「GeForce 9400M」を採用し、3次元グラフィックスパフォーマンスを格段に進化させている点も見逃せない。これにより、3次元ゲームなどの利用にも遜色がないパフォーマンスを得ることができる。

 最大の進化は、ユニボディと呼ばれる切削加工によるアルミニウム筐体を採用したことだ。

 通常ならば金型によって成形する筐体を一枚のアルミの板から削り出し、筐体と内部フレームを一体成形とすることで、軽量化、薄型化を実現しながら、堅牢性を維持することに成功した。

初の「生産工程公開」

 先頃、来日した米アップルのフィル・シラー上席副社長は、「今回のMacBookの進化をひとことで表現するならば、ブレイクスルーという言葉が最適だ」と語る。

 外見上は、MacBook Airのような大胆な薄さといったインパクトはない。新MacBookを一瞬見ただけで進化を感じ取る一般ユーザーは稀だろう。だが、その進化は、一つ一つの機能を見ればわかる。そして、アップルは、その進化に大きな自信を持っている。

 実は新MacBookでアップルは、これまでにないプロモーションを行っている。それは、ユニボディ切削加工の様子を自社サイトで公開していることだ。秘密主義のアップルが、一部とはいえ生産工程を公開するのは例がない。

 シラー上席副社長は、「ユニボディは、自慢の機能の一つだ。MacBookのデザイン、ポリシーを理解していただくという点でも重要なものでもある。ユニボディの生産工程をウェブで公開することは、何か月も前から決定していた」と経緯を述べた。新たなノートPCを作った自負があると、同副社長は自信のほどを示す。そしてまた、ゼロから作り上げることを恐れずに取り組む姿勢を証明できた、とも続ける。

 こうして見ると、外見以上に、新MacBookがもたらすインパクトとアップルの思い入れは強いようだ。
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