春商戦を迎えた電子辞書。市場をリードするカシオ計算機は、PC/デジタル家電関連製品の年間販売台数No.1のメーカーを表彰する「BCN AWARD」電子辞書部門の最優秀賞を、6年連続で受賞している。電子辞書は、学生や社会人などターゲットごとに商品化されているが、最近ではさらに細分化が進んでいる。植原正幸営業本部戦略統轄部コンシューマ戦略部部長に、市場動向を踏まえた事業の方向性を聞いた。(取材・文/井上真希子)

教育機器として進化する電子辞書
辞書以外のコンテンツにも注目

Q. 2010年の電子辞書市場を振り返ってどうだったか。

A.
 09年まで、当社は画面がモノクロ液晶だった。コンテンツが辞書で文字を表示するものなので、白黒でいいと判断していたのだが、その後、他社がカラー液晶を展開したことで、10年は当社も全モデルでカラー化を実現した。カラー化がこの時期になったのは、電池の消費が大きく、技術面で納得するものを提供できるまで待ったためだ。カラー化によって、それまで下がっていた平均単価を、07~08年の水準の3万円程度まで戻すことができた。


Q. 「BCN AWARD」電子辞書部門を6年連続で受賞している一番の理由は。

A.
 96年に電子辞書「EX-word」を発売してから、今年でちょうど15年になる。一つは、ブランドの認知向上に取り組んできたことが挙げられる。もう一つは、コンテンツの質の追求にある。とくに高校生、大学生向けモデルには教員の意見を取り入れるなど、教育現場と協力してつくり上げてきた。この二点が、ユーザーから長く支持されている理由だろう。強みである学生向けモデルは、01年に製品化した。それ以前は、コンテンツを厳選したモデルを中心に投入しており、シニア層が多く買っていた。高校生、そして大学生に早期に着目してターゲットを絞ったことが、トップシェアに結びついたと分析している。

Q. カシオ計算機はラインアップが豊富だが、今年、とくに力を入れるターゲットは。

A.
 ターゲットは、30~50代の社会人と中学生に期待している。前者は、10年にすでに製品化したが、今年はさらに細かいニーズに応えるコンテンツを収録したので、ぜひビジネスパーソンに活用してしてもらいたい。後者は、05年に製品化したものの、当時はそれほど販促活動をしなかった。今年は、小学校で英語が必修になるなど、ゆとり教育が見直されるタイミングということもあって、訴求に力を入れる。

Q. 今後の市場の見通しと、事業の方向性は。

A.
 ユーザーによって必要な辞書、つまりコンテンツは異なるので、これからもターゲットに合わせたコンテンツを精選して提供していく。ユーザーには、高校生、大学生、社会人と、人生の節目となる時期にその都度購入してもらいたい。当社が実施したアンケートによると、多くの世代で「電子辞書は便利だ」と思っているが、年齢層によっては保有率が低いところもある。当然だが、需要はこうした電子辞書をまだ持っていない層にある。主に専業主婦を想定し、料理や育児などのコンテンツを充実したモデルを投入したのはその一例だ。電子辞書は、これから教育機器としてさらに進化していく。今後は、辞書以外のコンテンツも強化する。11年は、販売台数シェアで50%以上の獲得を目指す。

・Turning Point

 40代のとき、1年間の社外研修会に参加した。いわゆる異業種交流会で、さまざまな業界の部門長クラスが集まった。利害関係のない者同士ということもあって、研修後はお互い何でも話せる間柄に。「研修の内容よりも、人間関係がつくれたことがよかった」と植原部長は振り返る。そして、社外に幅広いネットワークができたことで、自身の考え方が大きく変わった。「年を重ねると頭が堅くなりがちだが、柔軟な発想が大切であることを学んだ」。この経験をもとに、現在では「他人がもっていない情報を入手ができる人的ネットワークを自らつくるべき」と部下や後輩に説いている。