デジタルトレンド“今読み先読み”

テレビメーカー、次の一手 インターネット対応に活路

2011/04/28 16:51

週刊BCN 2011年04月25日vol.1380掲載

 7月に控えた地上デジタル放送への完全移行に向け、ここ数年、拡大していた薄型テレビ市場。昨年12月の家電エコポイント半減を前に、最も盛り上がりをみせた11月は、BCNランキングの販売台数は前年同月の5倍に達した。しかしこれ以降、台数・金額ともに減少し、概ね前年を下回っている。買い替え需要が一巡して単価下落が進むなか、テレビの活路はどこにあるのか。

2011年はインターネットテレビ元年
Twitter、Facebookなどを前面に

 「ブラビアはインターネットテレビへ」を打ち出し、ネット対応モデルの訴求を強化するソニー。液晶テレビ「BRAVIA(ブラビア)」の一部機種で、TwitterやFacebookなどのネットコンテンツの閲覧・投稿に対応した。震災の影響で東日本では放送を自粛したテレビCMでは、キャラクターの篠原涼子さんが、ブラビアでTwitterやFacebook、YouTubeなどが閲覧できることをアピール。テレビ放送だけではない新しいテレビの楽しみ方を提案している。

 ソニーを含め、すでに大手メーカー各社は、数年前からインターネットサービスに対応するテレビを投入してきた。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2010年の薄型テレビ総出荷台数のうち、インターネット対応テレビは61.4%の1547万8000台に上る。調査を開始した09年4月から10年9月までの累計では、2053万9000台(56.5%)となっている。また、テレビ向け動画配信サービス「アクトビラ」の累計接続台数は、11年3月23日に300万台に達した。

 これまでメーカー各社が新製品を出すとき、積極的にアピールしてきたポイントは、当然のことながら「画質」だった。ネット対応については各種機能の一つとして訴求しているに過ぎず、実際のところ、利用者が大きく拡大しているとはいいがたい。しかし一方で、訴求を強化することで、需要が立ち上がる可能性は大いにある。

 ソニーは07年にネット対応テレビを発売しているが、改めて2011年を「インターネットテレビ元年」と位置付け、本腰を入れる構えだ。最終的な狙いは、自社で提供する「Qriocity(キュリオシティ)」の利用者を獲得することにある。しかし現段階では、Qriocityよりも認知度が高いTwitterやFacebook、YouTubeが利用できることを前面に打ち出すことで、利用者のすそ野を拡大する。

ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」は一部機種でTwitterとFacebookの投稿・閲覧に対応

ホームネットワーク普及のカギに
ルータなど周辺機器の需要も

 テレビはあくまでも放送を視聴することを目的とする機器だが、ブロードバンドの普及拡大によって、テレビでネットを楽しむ環境は整っている。テレビ向け動画サービスのほか、TwitterやFacebookなどのPCサイトがテレビでも閲覧できるようになれば、いちいちPCを立ち上げなくても手軽に知人の近況をチェックでき、また、スマートフォンの画面よりも見やすいなどのメリットがある。

 一方、薄型テレビは技術革新によって、スタンダードモデルでも十分美しい画質で楽しめるようになった。量産効果も手伝って、単価は下がり続けている。「BCNランキング」での32V型の税別平均単価は、09年3月の7万5000円程度から、今年4月(1~16日)は4万7000円に下落。40V型は今年1月に10万円を切り、4月(1~16日)には8万7000円となっている。


 単価下落を食い止めるとともに、ポスト地デジ後の需要を喚起するためには、さらに高品位な画質や、3Dなどの付加価値、そしてネット対応のメリットをわかりやすく伝えていかねばならない。また、無線LANに対応するテレビが増えてくれば、ルータなど周辺機器の需要も喚起できる。さらには、リビングの中心に座るテレビがネットワーク化することで、ホームネットワーク普及の大きなきっかけになるだろう。(田沢理恵)
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