これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Opt Fit・渡邉昂希代表取締役CEO」を取材しました。
水泳選手から起業家へ転身
4才から水泳を始め、大学4年間は水泳選手として全寮制の学科で練習に励んだ。約2年の社会人経験を経て、スイミングスクールの情報紹介サイトの運営会社を立ち上げた。「自分を育ててくれた水泳業界の役に立ちたい」という思いからだった。
生まれ育った東海地方の水泳教室への送客を支援することから始めたが、地の利がある地元ならともかく「全国展開するのは難しく伸びしろが限られる」と、早くも壁にぶつかり事業を売却した。
水中監視から陸上監視への転換が奏功
縁あって画像認識AIに詳しい技術者兼起業家の2人と出会い、ともにプールの監視員の仕事を補助するAIサービスの開発に乗り出す。溺れて沈んでいる人を素早く検知して監視員に通報する仕組みを考案したが、「水中カメラの設置など思いのほかコストがかさんだ」ことから断念せざるを得なかった。
一方で「水中の監視は困難でも陸上なら問題ない」ことから、隣接業種のスポーツジムへの応用を試みたところ非常に実用性が高いことが判明した。転倒や器具に挟まれて動けなくなった人の検知、器具ごとの利用率、混雑状況を分析してジム運営会社の経営に役立てる「GYMDX」サービスを2021年に開発し、三つの施設への納入に成功する。
全国1000余りのジムが活用
当時、世の中はコロナ禍真っ最中。人との接触が制限されジム経営は厳しい環境にさらされていた。刻々と状況が変わっていく中、GYMDXは安全管理とデータ蓄積、分析による経営改革を両立させるサービスとして、変化への適応を急ぐジム経営者に広く受け入れられる。
混雑状況を可視化して対人距離を保ち、リモートワークによる運動不足解消でジムに通い始める人が出はじめることも追い風となり、直近では全国1000余りの施設が利用する事業に育った。2度の挫折にめげず、粘り強くサービス開発に努めたことで手にした成果だ。ジム施設は全国に1万カ所あると見ており、「伸びしろは大きい」と意気込む。
プロフィール
渡邉昂希
1994年、名古屋市生まれ。2017年、中京大学スポーツ科学部卒。同年、ベーシック入社。19年に独立。20年、Opt Fitを起業。
会社紹介
画像認識AIでスポーツジムの安全管理や混雑状況、器具ごとの稼働率を可視化する「GYMDX」サービスや、ジム会員向けの連絡アプリ「Linker Bell」などを開発。