これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「フルカイテン・瀬川直寛代表取締役CEO」を取材しました。
顧客を笑顔にする仕事
IT企業の法人営業として華々しい成果を上げた。その一方で、次第にやりがいを感じなくなり、この領域から離れることを決めた。一番の理由は「大規模なシステムを顧客に納入しても、最終的に誰がどう喜んでいるのかが分からなかったから」だった。
離職中に子どものベビー服を探していた際、気に入った商品を見つけるのに苦労した経験から、ベビー服のEC事業を手掛ける会社を起業。「EC事業はレビューなどを通じて、顧客が喜ぶ姿を具体的にイメージできた。どうせなら顧客を笑顔にする仕事に時間を使いたい」との思いを強くした。
培ってきたノウハウを結集
EC事業は順調に顧客を獲得して成長したが、売り上げの拡大を狙って抱えた在庫が原因で、何度も倒産直前に追い込まれた。いずれの場合も、在庫が売り切れるまでのサイクルなどを徹底的に分析する中で得た知見によって乗り越えることができた。
「在庫で悩んでいない小売業者はいない。倒産危機の際に得た知見を生かせば、彼らの役に立つことができる」。この思いが、法人向けITの領域に再び挑む動機となった。EC事業を売却し、培ってきたノウハウを結集させた在庫管理ツール「FULL KAITEN」の開発・提供に本腰を入れ、小売事業者を支える側に回った。
少ない在庫で売り上げを最大化
顧客に提供する価値の中心は「少ない在庫で売り上げや粗利を最大化すること」。在庫の最適化により、物量に頼ったビジネスから脱却し、必要な商品が必要な顧客に届くための支援が可能になる。これが適量生産、適量消費につながればサステナブルな社会も実現する。
「人口が減る現代社会で求められるのは、顧客のニーズに刺さる個性ある商品。とがった価値を作り出すために、オリジナリティを発揮できる得意な領域を持つ人材を育成したい」。人も商品も個性が輝く社会の実現を目指す。
プロフィール
瀬川直寛
1976年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、コンパックコンピュータ(現ヒューレット・パッカード)などを経て、2012年にハモンズ(現フルカイテン)を設立。
会社紹介
ベビー服のEC事業を展開する企業として設立。2017年に在庫管理ツール「FULL KAITEN」の開発・販売を開始。18年にEC事業を売却し、FULL KAITENに事業を一本化。