これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「メダップ・柳内健Foundar/代表取締役CEO」を取材しました。
医療機関の連携にテクノロジーを
学生時代から、世の中にインパクトを与えることがしたいと起業を考えていた。就職したベンチャーキャピタルで電子カルテのスタートアップを担当した際、病院が抱える多くの課題を目の当たりにした。
病院経営は、入院患者をいかに確保するかに左右される。病床が85%埋まっていることが損益分岐点だが、どの病院に入院するかは、かかりつけの医院からの紹介で決まるケースが多い。基幹病院にとっては、周辺の医院との連携が重要だが、病院内のデータは診療科別などシステムが細分化されており、うまく機能していないのが現状だった。医療機関の地域連携を、テクノロジーによって改革したいと考えた。
効率化と意思決定を支援
病院で働く医師、看護師、事務職といった多職種の人が、同じ目線で動き最適な役割分担をするには、データを整えることが必要だった。熊本県の病院と共同開発したシステムは、患者がどの医院から紹介され、退院後はどういうフォロー体制を取っているのか、といった一連の動きをデータで管理。地域の医院からの紹介を増やすために働きかけをする根拠としても、データを活用できる。
病院スタッフの負担軽減という効率化と、経営の意思決定の促進という二つの面で病院を支援しており、全国で病床数が200床以上の比較的規模の大きい病院で導入が進んでいる。
難しいからこそ価値が出る
医療機関は人員の確保に苦労しており、地方ほどその傾向は強い。軽傷の患者が基幹病院に詰めかけると、外来診療にリソースを取られすぎるという問題もある。「医師の異常なまでの努力で成り立つようなものではなく、持続可能なかたちを支援したい」。そのためには、医療が最適な場所で必要な患者に提供される仕組みが必要だと痛感する。各地の病院の院長らと面会する機会が多く、「困っているから何とかしてほしいと言われると、よし、とモチベーションが湧く」
診療報酬の処理のように、医療分野には煩雑かつ改善が困難な業務が多く残る。「難しいからこそ価値が出る」と信じ、医療資源の最適化のために動き続ける。
プロフィール
柳内 健
1982年、兵庫県出身。東京大学大学院農学生命科学研究科修了。2008年、ITコンサルティングベンチャーに入社し製造業向けのコンサルティングを担当。10年にベンチャーキャピタルに転職し、電子カルテなど医療分野のスタートアップ支援を経験。17年、メダップを創業。
会社紹介
地域医療連携に特化した医療機関向けの連携先活動サポートツール「foro CRM」を提供。病院経営を支える入院患者を安定的に確保するため、他医療機関からの紹介、入院データ、コミュニケーション履歴などの情報を一元管理し分析を自動化。提携先病院との連携をスムーズにし業務効率化を支援する。