これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「STANDAGE・足立彰紀代表取締役社長」を取材しました。
決済時の困難を変革したい
商社で働き世界中の国と貿易する中で、決済時に困難を感じる場面がよくあった。新興国は金融ネットワークが脆弱で、国際間での大きな金額のやり取りが難しい。そんな頃、ブロックチェーンを知り、ビットコインを実際に保有してみた。お金の価値をデジタルデータとして銀行などのネットワークを通さず第三者に送れることに感銘を受けた。
「世界中の人とビジネスという共通のフィールドで交渉し、やり遂げたときに喜び合える」貿易の仕事が好きだった。その領域を新しい技術で変革するため、貿易DXの実現に向けて会社を立ち上げた。
中小企業の挑戦を支援
決済サービスのプロトタイプをつくり、ある中小企業の社長に説明したところ「人もいない、知識もない、英語も分からないから、そもそも貿易に挑戦すらできない」と言われた。国内の中小企業で直接海外との貿易ができているのはわずか5%程度だという。
全ての国が全てのものに平等にアクセスできる世界の実現をビジョンに掲げる中、「中小企業の挑戦を後押ししたい」との思いから、海外での営業や販路開拓、契約交渉、決済まで一気通貫に提供する中小向けの貿易支援パッケージを開発した。昨今の円安も相まってニーズは高まっており、サービス開始から2年で約250社が導入している。
一歩先を突き進む
ブロックチェーンでの貿易決済システムは、信頼性に課題があったが、ナイジェリアに支店をつくり、金融基盤が弱い場所で実証を行って手応えを得た。2023年の改正資金決済法により、ブロックチェーン上で発行される暗号資産の一種で、価格が法定通貨に対して安定するように設計されたステーブルコインを、世界に先駆けて日本の銀行が発行できるようになるなど、市場環境も自社の取り組みを後押ししている。
「ブロックチェーンとビジネスの接点となるアプリケーションを生み出すこと」が今の目標だ。貿易では、従来の仕組みを変えるテクノロジーが生まれてこなかったと感じるが、「次世代の貿易のあり方を根本から変える」と信じ、これからも一歩先を突き進む。
プロフィール
足立彰紀
1984年、大分県出身。九州大学大学院を修了後、伊藤忠商事に入社。医薬品の輸出入や海外での工場建設のプロジェクトマネジメントなどに従事。2016年からは、石油化学品の先物トレーダーとしてトレーディングに携わる。17年、STANDAGEを創業。
会社紹介
ブロックチェーンやステーブルコインを活用した新貿易決済システムを開発。決済領域にとどまらず、販路開拓や受発注、国際物流といった貿易全体のDXを実現するシステムで中小企業の輸出事業を支援。中小企業向け貿易支援パッケージサービス「まるなげ貿易」は海外拠点のスタッフが営業などを代行し、貿易のハードルを下げている。