これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Laboro.AI・椎橋徹夫代表取締役CEO」を取材しました。
アカデミアとビジネスをつなぐ
大学では物理学と数学を専攻した。研究は楽しかったが、「世の中のダイナミックな動き」にも関心が広がり、実社会の課題に触れるためにコンサルティング企業に入社。一方で、課題解決にもっと高度な数学的アプローチや技術を活用したいと考え、再びデータサイエンスを前線で研究するアカデミックな環境に身を置いた経験がある。
先端技術を活用した社会の変革に必要なのは「アカデミアとビジネスの双方を橋渡しする」こと。立ち上げた自社の役割を「つなぐ存在」のプロフェッショナル集団と定義した。
バリューアップ型のAI活用
バリューアップ型のAI活用を目指している。AIを取り入れたい企業は多いが、「コストカットや業務効率化を目指すプロジェクトではなく、新しいサービスや事業を開発し、ビジネスモデルを変革することに伴走したい」
AIの活用はルールや型に落とし込むべきではないと考えている。むしろ「人が思いつかない可能性を探索し発見することに使うべき」。自社のAIコンサルティング部隊が提供するのは、顧客ごとの問題と向き合い「未知の解決策をデザインする」ことだ。
産業の新しい姿を
社名の「Laboro」には、「労働」の意味を持つラテン語に研究所を表す「Labo(ラボ)」と、さまざまな人々と協業する「Collaboration(コラボレーション)」の意味を込めている。
あらゆる産業や経済活動の根源である労働のあり方を、AIを活用して変革し、「全ての産業の新しい姿をつくりたい」。そのためには、AIを目先の投資対効果ではなく、中長期的な戦略の中に位置付けるとともに、未知の可能性を共に追求する経営層や現場のリーダーとの出会い、対話が重要になるだろう。まだ見ぬ未来を目指して歩みを続ける。
プロフィール
椎橋徹夫
米国州立テキサス大学理学部物理学/数学を二重専攻卒業。2008年にボストンコンサルティンググループに入社。その後、AI系のスタートアップや、東京大学工学系研究科の松尾豊研究室に参画し、16年にLaboro.AIを創業。
会社紹介
機械学習を活用した顧客に合わせたオーダーメイド型AI「カスタムAI」を開発する事業や、カスタムAIの導入・運用を支援するコンサルティング事業を展開する。