これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「アセンド・日下瑞貴代表取締役社長CEO」を取材しました。
社会課題を放置しない
近年、物流業界の労働環境が問題視されている。とはいえ、低水準が続く賃金や長時間労働といった課題はここ30年にわたって変わらずに残り続けてきた。この大きな社会課題に取り組まずに放置をしておくことはできない。この決意が起業を選択させた。
物流には根源的な価値がある。どのような社会にも物流は存在するし、物流が関わらない産業はない。自社が掲げるミッションは「物流の真価を開く」。物流が持つ価値を解き放つことができれば、日本全体でさらなる経済成長を果たせるはずだ。
悪手も問わない覚悟
物流業界の課題解決にあたっては、「長い時間軸で考えて商慣習から変えていく必要がある」。元々コンサルティング会社に勤めていたが、コンサルティングでは個社の支援にとどまってしまう。コンサルティングだけでなくSaaSも提供し、講演会などの業界活動まで着手することは、既存の企業ではできなかった。
ビジネスにおいて複数の事業を展開することは、リソースの分散と裏腹であり「一般的には悪手とされている」。しかし、個社を取りこぼさずに業界全体を変えていくために「あらゆる手段を用いて業界課題を解決していく」覚悟だ。
絶望せず着実に前進する
起業して4年目を迎える。世間を見渡すと、このタイミングで辞めていく経営者は少なくない。経営者にはプレッシャーがかかる上、さまざまなリスクにさらされるからだ。自身は困難に対して小さくまとまってしまうのではなく、志を高く保ち続けながら仕事を全うするようにしている。
最近マラソンを走り、ゴールを目指して長い道のりをただ走るという点で経営とマラソンは近いと感じた。世の中はすぐに変化するわけではない。しかし「絶望せずに着実に前進をしていくことが一番大切」。物流業界の明るい未来はまだまだ遠いかもしれない。けれど、必ずゴールにたどり着ける。確かな手応えを糧に、きょうも息を切らして駆け抜ける。
プロフィール
日下瑞貴
2016年、早稲田大学大学院政治学研究科を修了。同年にPwCコンサルティングに入社し、サプライチェーンマネジメント案件に従事。18年に野村総合研究所に移り、官公庁や業界団体を中心に物流業界に関する政策提言や業界の構造分析など上流からの改革プロジェクトに関わる。20年にascendを創業。23年に社名をアセンドに変更。
会社紹介
運送管理システム「ロジックス」を提供。運送会社向けのDXコンサルティングサービスも展開している。