これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Smart Craft・浮部史也・代表取締役」を取材しました。
現場の解像度を上げる
新卒で入社した会社で製造業向けの法人営業を経験し、現場の課題感を強く覚えた。「ものづくりの現場は、帳票など紙が多く、その管理や効率化にITが貢献できる」との思いで起業。当初は中小製造業をターゲットにペーパーレス化を目指したが「工場内にWi-Fiがない、使えるタブレットもない、掛けられる予算が少ない」と大きな壁を感じた。
紙をなくすだけでは本質的なDXにならないとも感じ、生産計画に対する実績を見える化する工程管理クラウドの製品化にかじを切った。「現場の解像度を上げようと、20~30社から聞き取りをした」と、徹底的に現場の声を反映したプロダクトを目指した。
ツールだけでは変わらない
製造業は、工場によって業務内容が異なるため、システムはオンプレミスで個社ごとに開発するケースが多いが、自社の製品はSaaSで提供する。汎用化し、どの現場でもカスタマイズなしで使える仕様になっているのが特徴だ。月額20~30万円程度で利用でき、一からシステム構築するより大幅にコストを抑えられる点も評価されている。
導入企業には、専門チームが3カ月伴走し、使い方の説明を徹底的に行う。「ツールを入れただけで現場が変わるほど簡単ではない」との思いで、顧客がサービスを使い倒すことで収益の改善を実現できるようサポートしている。
凡事徹底で一日をやりきる
日本の競争力の源泉である製造業を元気づけることが、自社のミッションと考える。現在は工程管理を支援するが、品質管理、在庫管理、設備管理など隣接する業務についてもモジュール化で機能拡張する予定だ。「日本の高い技術力を生かせるよう、製造現場をスマートにしていきたい」。より多くの企業にサービスを届けられるよう、間接販売も視野に入れている。
常に胸にある言葉は、「凡事徹底」。やると決めたことは絶対にやりきって毎日を積み重ねることが大きな差を生むと信じる。顧客から寄せられる期待や、それに応えられたときの反響を励みに、今日も一日をやりきる覚悟だ。
プロフィール
浮部史也
1994年生まれ、新潟市出身。慶応大学法学部卒業。2017年キーエンスに入社しファクトリーオートメーション関連のセンサーなどを販売する法人営業に従事。20年アクセンチュアに転職し、新規事業や戦略立案のコンサルティング業務を担当。21年、Smart Craftを創業。
会社紹介
工場内の一連の業務プロセスをデジタル化し、ものづくり企業のDXを支援するクラウドサービス「Smart Craft」を提供。製造現場の帳票をペーパレス化、生産の実績を記録することで離れた場所からの進捗確認が可能になり、データを活用した生産性向上を実現する。