これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「IVRy・奥西亮賀CEO&Founder」を取材しました。
「何か違う。これじゃない」
脱サラして人材データを分析する会社を立ち上げた。就労人口が減る中で生産性を高めるかぎを握るHRテックは「伸び代が大きい」と考えたからだ。狙いどおりユーザー企業の関心は高く、大手企業を中心に問い合わせが増えたが、「何か違う。これじゃない」と感じて本格サービスを始める前に歩みを止めてしまった。
「広く社会課題を解決する事業を立ち上げる」ことを起業の目的としていたため、一部の大手だけでなく、中小企業のユーザーにも広く行きわたるサービスでないと「目的を達成できないし、やる意味がない」と考えたからだ。
「今さら電話」ではない
起業の目的に近いアイデアを10個余り出して検討したところ、AI技術者が「数年後には生成AIが実用化され、自然言語処理の技術が飛躍的に進化する」と話しているのを耳にして、将来のAI活用を視野に電話の自動応答(IVR)サービスを始めることにした。
投資家からは「なぜ今さら電話なのか」と疑問を持たれることもあったが、中小企業の多くが電話やファクスで受付や受発注の業務を行っていることを踏まえると、「電話にまつわる業務の変革は社会課題の解決と言えるのではないか」と考え、起業から2年後の2021年、IVRにちなんだ「IVRy」に社名を変えて経営資源を集中させる。
予想的中で胸を躍らせる
今、当初の予想どおり生成AIが実用化され、「これまで人手で受けていた電話の応答をAIが代行する時代がやってきた」と胸を躍らせる。アカウント数はすでに3万件を超えており、中小企業ユーザーも多い。4月には、よくある問い合わせをAIが抽出して回答候補を生成する新サービスを投入するなどAI活用を加速させる。
飲食や宿泊、美容などの領域だけでなく、企業間取引の領域でも電話による受付業務は必ずあるが、その多くが「従業員が片手間で受けていることが多い」のが実情だ。AIが人に代わって受け答えし、その内容を分析して業務改善を提案することで、生産性を高める“電話新時代”を切り開いていく。
プロフィール
奥西亮賀
1991年、兵庫県生まれ。2015年、同志社大学理工学部大学院情報工学科修了。リクルート入社。19年、Peoplytics(現IVRy)創業。
会社紹介
電話の受付業務を自動化する電話自動応答(IVR)サービスを提供している。生成AIと組み合わせ、さまざまな付加サービスを開発。従業員数は約200人。