これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「ABEL・大島秀顕代表取締役/CEO」を取材しました。
データで経験や感覚を裏付ける
競馬は“血統のスポーツ”と呼ばれる。血統は馬の能力に大きく影響し、成績を左右する極めて重要な要素だからだ。ある馬が短距離向きなのか、長距離向きなのか、芝が得意なのか、ダートに強いのか。こういった要素を、血統から推測する人は多い。ただ実際には、血統は重要なファクターの一つではあるものの、全てを決定づけるものではないという。
競走馬の育成は、血統に加え、調教師の経験や感覚、さらには心拍数や走る速度、歩幅、レースの成績といったデータを「全部合わせてみないといけない」。目指すのは「馬づくりの“OS”」。経験や感覚の正当性をデータで裏付けられる存在になりたい。
自由と責任は表裏一体
現在、従業員は全員エンジニアで、開発力が会社としての強みだと分析する。自身も元々エンジニアだ。仕事をする上で意識しているのは、「エンジニアに変に口を出さないこと」。これは、エンジニア一人一人に責任感を持ってほしいということでもある。
エンジニアは、コードだけ書いていればいいということではない。特にスタートアップにおいては、どうすれば会社が伸びるのかを考えて動くことも責任だと考える。「自由と責任は表裏一体」という視点を大切にしている。
グローバル進出を心に
将来的には、馬以外の動物にも対応するソリューションを手掛けたいと考えている。ただ、まずは馬にしっかりと打ち込む段階だ。目の前に課題を持つ顧客がいる中で、その課題を解決するのが自分たちの役目だと心得ている。「数年かけて『ABELが新しい馬づくりのかたちをつくった』と言われるようになるところまでやりきる」
競馬は世界中で人気のスポーツだ。日本だけでなく、海外にも商機はあるとみている。だからこそ、グローバルには絶対に進出すると心に決めている。
プロフィール
大島秀顕
1993年、東京都生まれ。2019年にサイバーエージェントへ入社し、エンジニアとして従事。20年、東京都市大学工学部建築学科を卒業。21年にABELを創業。
会社紹介
「全ての馬に、最適な選択を可能にする」をビジョンに掲げ、生産からレース、引退までのデータを一括管理する競走馬管理クラウド「EQUTUM」を提供している。