これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Malme・高取 佑代表取締役/CEO」を取材しました。
山積する課題をITで
土木業界には課題が山積している。人手不足は他業界以上に深刻で、従事者は毎年10万人ずつ減り続け、働く人の平均年齢は50歳超。国内の公共インフラは老朽化が進み、半数の橋は法律的な耐用年数が過ぎているといわれている。「今まで業界全体が目を背けていた課題が顕在化している」と感じる。
「ITを使い倒すことで、業界を持続可能にしたい」と土木DXにフォーカスしたITソリューションを提供するが、「簡単にはいかない」と本音を漏らす。紙の図面を長年使ってきた技術者集団が多く、IT領域の新しい技術を取り入れる人的余裕がないのが現状だ。
同じ目線で寄り添う
自社には土木業界を経験した人材が多くいるのが特徴だ。起業前に在籍したドローンベンチャーで、土木現場向けに産業用ドローンを提案しても、価値を感じてもらえなかった。「共通言語がなく、ミスコミュニケーションが起きていた」と振り返り、同じことを繰り返したくないと、土木業界出身者を集めて同じ目線で話し、寄り添える態勢を取る。
DXの基盤として、3Dモデルを中心とした情報管理手法のBIM(Building Information Modeling)を使いこなすノウハウを伝えている。「肝はAI」と考えているが、顧客がBIMを扱えるようになった先に、AIを活用したアプリケーションなど付加価値の高いサービスによって一層業界のDXが推進できると思い描く。
熱を持って瞬間をやりきる
社名は、業界団体の欧州視察で訪れたスウェーデンの街の名前が由来だ。そこで一緒だった「恩師」が日本の高度経済成長期の土木業界を支えた人で、強い感銘を受けた。「土木に求められる役割は当時と違っても、もう一度土木の地位を高めたい」と、業界の未来を支えたいとの思いを強めた。
正しい方向に事業を進めれば、業界を変えられる可能性があると感じられているのが最大のモチベーションだ。常に熱を持って仕事に向かい「いつ死んでもガッツポーズできるくらい、その瞬間をやりきる」。そんな毎日を積み重ねる。
プロフィール
高取 佑
1986年生まれ、佐賀県出身。九州大学大学院修了。2011年に新卒で建設コンサルタントのパシフィックコンサルタンツに入社、ODA(政府開発援助)のコンサルタントとして東南アジアを中心に日系中小企業の海外展開支援に従事。18年、テラドローンに転職し、利益管理や組織マネジメントを経験。21年、Malmeを創業。
会社紹介
BIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)技術を活用し、土木設計・施工の効率化と品質向上を支援。AIやOCRを活用した図面照査の省力化、Text to BIM(自然言語から3Dモデル生成)などの先端技術を開発している。