これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Sapeet・築山英治代表取締役社長」を取材しました。
自分で手を動かす
「他の道があるなら、何をしたいんだ」。医師を目指していた高校生のとき、進路面談で問われた。頭に浮かんだのは、テレビで見たIT経営者だ。渋谷が「ビットバレー」と呼ばれ、IT企業が集まっていた時代。その光景に強く惹かれた。憧れを抱き、起業も意識して進学した。
大学時代、ECサイトで購入した服のサイズが合わなかった。アメフトに打ち込んで体重が大幅に増えていたからだ。大学院で技術を研究し、3Dアバターと服のシミュレーションを組み合わせたプロダクトを開発。解決するために自分で手を動かす。これが起業の原点となった。
知的好奇心を満たす
仮想試着システムにはAIを活用した。AIを軸に、姿勢分析や体型推定、骨格診断など、独自のソリューションを展開し、AIエージェントやAIトレーニングシステムの開発、ベテランの知見のAI実装も事業化した。新しい領域に進むことは「実験」のようだとも感じる。「モチベーションは、知的好奇心を満たすこと」。新しい価値を生み出す挑戦自体が情熱の源泉になっている。
上場を経験し、事業も組織も急拡大しているが、成果に浮かれることなく、あくまで内面の成長を重視する。「真摯で素直で、良いやつ」であることが、信頼され、誠実な関係を築く土台だと考え、人としての当たり前の振る舞いを自身にも会社の仲間にも求めている。
その思いはサービスにも反映されている。「言葉足らずで社員をやきもきさせたこともある」。だからこそ、相互理解がしやすくなることが、より良い社会につながると信じ、コミュニケーションを軸にしたサービスも展開する。
漫画の主人公のように前進する
目標を定めて前進することは、少年漫画の主人公の姿が根源にある。「ぶつかりながらも高いところを目指していく」。困難に直面する、その過程すらも楽しんでいる。
インプットの機会が多いため、休日はサウナでデジタルデトックスが欠かせない。静かな時間が、次の一歩を力強くしている。
プロフィール
築山英治
1991年生まれ、岡山県出身。東京大学大学院工学系研究科修了。大学院で仮想試着の研究、開発を行ったのを機に、2016年にSapeetを起業。
会社紹介
各領域の専門家のナレッジをAIで再現する「Expert AI」を軸にAIソリューションを提供する。ウェルネスやコミュニケーションの領域に強みがあり、自社プロダクトとしても展開している。