これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「miibo・功刀雅士代表取締役CEO」を取材しました。
自分の分身をつくる
日曜プログラマーの父の影響で、幼い頃からプログラミングが好きだった。小学生のときにゲームをつくって遊び、高校生ではドライブスルーの自動応答システムの開発に着手。大学生の頃には会話型AIに興味を持ったが、「すみません、分かりませんでした」という返答に淋しさを覚え、何にでも返答できる雑談AI「おしゃべりアシスタント」を開発した。
雑談AIは、全ての質問に答えるには限界がある。奇妙な回答も出てくるが、それがヒントになり、気持ちの整理につながることもあった。自らが開発したAIから得た幸せを多くの人へ届けたいとの思いから、ユーザーが自分(me)の分身となるAI(bot)をつくるプラットフォーム「miibo」を生み出した。
発想をかたちにする舞台を整える
ビジネスで重視するのは当事者意識だ。企業がアプリケーションをつくる際に、下請け、孫請けとバケツリレーが続くと、最初にあった当事者の「意思」が薄れて、想定とは異なる製品が出来上ってしまうことに課題感があった。だからこそ、miiboでAI搭載アプリケーションの構築をサポートするうえでも、顧客企業の当事者と伴走する。
誰もが当事者として、やりたいことに向き合える世界を目指す。「奇想天外なことは考えられないが、その発想をかたちにする舞台を整えることはできる」。空欄を埋めるだけでプロンプトをつくれるテンプレートや、自然言語による指示からプロンプトを自動生成するAIアシストなど、ノーコードで利用できるmiiboの仕組みは、やりたいこと以外に力を入れなくてもAIを構築できるようにするための工夫だ。
経営者でもつくり続けたい
対話システムは「盆栽のようなもの」だと考え、大切に育ててきた。目指すのは、幼少期に見た変身ヒーロー番組の劇中で飛行機に搭載されていたアシスタント。「数十年後に花開く」と、高校時代から開発を続けてきた。2022年冬に「ChatGPT」ブームが到来し、miiboの利用者も急増したことで、「これまでつくってきたものが、今、役に立つ」と、腹をくくって起業した。
「経営者になっても常につくり続けたい」。この思いからAIドリブン経営を実践している。社内会議ではAIの出した提案を人間が受け止め、実行に移すことをアジェンダとした。マネジメントを極力減らし、趣味にもなっている開発と、顧客とのコミュニケーションに時間を割く。やりたいことと仕事を一致させることが、モチベーションを保つこつだ。
プロフィール
功刀雅士
1993年生まれ、山梨県出身。筑波大学情報学群卒業。2016年にヤフー入社。その後、さまざまな企業でエンジニアとして働きながら、会話型AI領域の研究・開発を続け、20年にmiiboを開発。23年に法人化した。
会社紹介
ノーコードで会話型AI搭載アプリケーションを構築できる「miibo」を提供。専門知識がなくても、紹介文やプロンプトを入力することでAIエージェントやチャットボットを作成できる。RAG(検索拡張生成)構築やLLM(大規模言語モデル)の選択が可能。開発サポートやパートナーとの協業も進めている。