これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「MNTSQ・板谷隆平代表取締役」を取材しました。
契約プロセスの常識を超える
契約交渉というプロセスは一種の闘争である。法律に関する専門知識をぶつけ合い、場合によっては有利な条件を勝ち取るために「あらん限りの知識を駆使して、相手をだますゲームのようなもの」ともいえる。一方で、契約を結ぶ目的に立ち返ると、この交渉は必ずしも多大な時間と労力をかけるべき事柄ではない。本質的に重要なのは、「合意に基づいて、双方が迅速に有意義な結果を出すこと」だ。
提供するリーガルテックは、お互いがだまされたことにならない、的確な「落とし所」を瞬時に提示するためにある。契約プロセスは煩雑で難しいという常識を乗り超え、顧客の「事業をいち早く前に進める」ための法務体制をつくり出す。
全ての合意をフェアにする
「全ての合意をフェアにする」をミッションに掲げる。法務ではないビジネスマンや一般消費者に対しても、「知識の差で不利を被らないように支援したい」。目指しているのは、誰にとっても不可欠なインフラになることだ。
組織マネジメントの点でも、重視しているのはあらゆる情報を社員に対してオープンにし、裁量を与え、いわば社員同士がフェアな状態で仕事に挑めるようにすること。「人間の知性の違いにたいしたものはない。同じ情報を与えれば誰でも同じことができるようになる」と話す。
技術で「法」の在り方を革新する
リーガルテックは世の中を変えられるものだと強く信じている。法務がさまざまなリスクを防ぎビジネスの背中を押す存在になれば、企業の在り方が変わり、企業間の関係性のつくり方も変わるだろう。
尊敬する中世フランスの思想家モンテスキューは、当時、絶対的なものとされていた「法」は、文化や技術の発展とともに改善されていくものだと考えた。現代はデータを基に、公平性を担保するための技術が整いつつある。フェアな合意を体現するシステムを発展させていけば、現実の実態と司法のギャップをデータで浮き彫りにできるだろう。そのかい離を解消するための立法をも動かせるかもしれない。
自社が提供するリーガルテックの価値を信じて突き進めば、当たり前に思われる仕組みでもきっと変えられる。
プロフィール
板谷隆平
東京大学法学部卒業。2014年に弁護士登録し、長島・大野・常松法律事務所に入所。企業買収やAI・ITなどのテクノロジー関係のアドバイスに従事。同事務所で勤務する傍ら、18年にMNTSQを設立。
会社紹介
契約ライフサイクル管理サービス「MNTSQ CLM」や「MNTSQ AI契約アシスタント」を開発・提供する。案件管理や契約管理機能などを搭載しており、主に大企業で利用されている。