経済産業省は「平成13年度電子商取引に関する市場規模・実態調査」を発表した。今回第4回目の発表だが、これまでEC市場についてのデファクト的数字として利用されてきたのがこのデータだ。もっとも、内容はかなり強気で、実態をどこまで正確に反映しているのか疑問という声もあった。今回の調査結果も基本的には強気で、BtoB市場規模は34兆円まで拡大したとしている。
「ITが経済に及ぼす影響に関する分析」
総務省・情報通信経済研究会まとめ
第2節IT化の進展による消費行動の変化 (4)その他の消費行動費
このほか、インターネット上で商品情報を収集し、購入契約は実店舗で行う形態の消費行動が考えられる。
例えば、米国における自動車購入に関する調査によれば、1998年第1四半期から1999年第1四半期にかけて、インターネットを利用して情報収集を行う消費者の割合は急激に高まっている。このことから、一般的に、消費者は自らの消費行動を決定するに当たり、インターネット上での情報収集を重視する傾向が強まることが考えられる。
その一方で、同調査によれば、1999年第1四半期に自動車を購入した消費者のうちインターネット上で情報を得ている消費者は40%に達しているものの、インターネット上で購入契約まで行う消費者は3%に満たない(図表34)。自動車のような高額商品については購入契約を実店舗で行う割合が低額商品に比べ高くなるものと考えられるが、割合の多寡はともかく、いずれの商品についても同様の消費行動が行われているものと思われる。
以上のことから、IT化の進展が消費に及ぼす影響は、電子商取引による消費額として顕在化している以上に大きいものと考えられる。
2 今後見込まれる変化 ここでは、今後のIT化の進展が消費に及ぼすことが見込まれる影響として、(1)技術革新を背景に機能やデザインに優れたIT機器やより高度なソフトウェアなど魅力ある製品が登場することによる名目消費の拡大、(2)ITを活用した情報収集手段の多様化が進むとともに消費の抑制要因として働いている将来への不安が解消した場合における名目消費の拡大の2つについて分析を行った。結果は図表35のとおりであり、とくに後者は年額17-19万円程度と大きくなっている。
なお、魅力あるIT関連製品の登場はインターネット未利用者の消費行動にも影響するものと考えられるが、今回はインターネット利用者を対象としたアンケート調査の結果をもとに分析を行っていることから、インターネット未利用者については調査対象外とし、表中では「-」と表示した。
(1) 魅力あるIT関連製品の登場による消費
IT分野は他の産業分野と比較して技術革新のサイクルが早く、今後も、機能やデザインに優れたパソコンやより高度に開発された音声認識ソフトウェアなど魅力あるIT関連製品の登場が期待される。こうした新製品の登場は消費者の新規需要や買替需要を誘発し、消費の拡大を促すものと考えられるが、他方、消費者は他の消費を節約することにより新製品の購入原資を捻出するケースも考えられる。
そこで、魅力あるIT関連製品の登場による消費のうち、貯蓄の取崩しなどによる追加的支出に係るものを抽出し分析したところ、消費者は年額6-7万円程度の名目消費の拡大を容認するとの推計結果を得た。これを利用回線種類別にみると、常時接続利用者やブロードバンド利用者はそれぞれ非常時接続利用者や非ブロードバンド利用者よりも1万円程度多く消費を拡大することが推計され、よりITの効用を享受している先進的ユーザの消費拡大意向が強いことを示唆している。
また、IT関連新製品の購入原資を捻出のために節約される消費の費目を尋ねたところ、洋服代や食費の割合が高く、次いで、教養娯楽費、交際費が挙げられた(図表36)。一般に消費は、衣・食・住関連など生活に不可欠な「必需的消費」と趣味・娯楽を目的とする「選択的消費」に分類される。節約する費目の上位に、一般的には必需的消費とされる洋服代や食費が挙げられたことについては、洋服代や食費の一部は生活のゆとりとしてのファッションや外食など「選択的消費」としての性格を有しており、この部分が節約の対象になっているものと考えられる。
(2) ITを活用した情報収集手段の多様化及び将来不安の解消による追加的消費
インターネットは、前述のとおり、商品・サービスに関する情報の入手を容易にし、消費意欲を刺激するものと考えられる。今後、インターネットの常時接続・ブロードバンド化が進展するとともに、動画や音楽などの大容量コンテンツの流通が拡大するものと考えられる。
一方、消費者は消費行動の決定に際しては、生涯にわたる収入・支出を勘案しつつ、現時点で支出可能な金額を判断していることから、将来の収入に対する不安が大きい場合には情報収集手段が多様化しても消費は拡大しない可能性がある。現在、消費者が感じている将来の不安としては、年金・老後生活資金が最も大きく、加齢による不自由さ、職への不安が続いており(図表37)、これらは消費の抑制要因となっているものと考えられる。