秋葉原ITセンターを中心とした東京・秋葉原駅前の再開発事業が、いよいよ本格的に動き出した。今年2月、東京都の保有地を対象に、秋葉原の再開発事業コンペ(公募)が実施され、NTT都市開発・ダイビル・鹿島の3社グループが当選した。東京都議会の承認を経て、東京都は同グループと先月末に土地売買契約を正式に締結。3社グループは来年5月の着工をめざして実施設計作業に入った。全面オープンは2006年2月を予定。05年度には常磐新線「つくばエクスプレス」も開業する。秋葉原の街が、今後どのように変貌していくのか。目が離せなくなってきた。(千葉利宏●取材/文)
2006年2月の全面オープンに向けた動き
●「秋葉原ITセンター」設置、“儲かる秋葉原”目指す
東京・秋葉原地区は、東京都心部で具体化している再開発事業としては、最後に残った大型案件だ。
旧・国鉄保有地の売却を機に始まった新橋駅近くの汐留地区、品川駅東口地区、東京駅丸の内北口地区などの大型案件に、民間主導で進んでいる六本木六丁目地区の再開発案件を加えても、ほとんどが03年には完成してしまう。
日本経済の活性化のために、政府は「都市再生」に本格的に取り組むことになり、都市再生を支援する法的な枠組みなどもようやく整備されつつあるが、それに基づく具体的な案件はこれから。それだけに秋葉原地区への注目度が今後ますます高まるのは間違いないだろう。
「日本の最先端IT拠点に!」――。東京都は秋葉原再開発に当たって、明確な基本方針をもっていた。
新しい街区に期待される集客機能や産学連携機能、情報ネットワーク機能を支援するデータセンターとして「秋葉原ITセンター」を設置することも、東京都が事業計画に盛り込むように求めた条件だった。
開発事業者側は、それぞれの条件を具体的なプランとして、どうまとめるかがポイントだったと言える。
東京都が導入を決めた機能・施設は、全部で12。
「集客機能」として、(1)ショールーム、(2)コンベンションホール、(3)多機能イベントホールなど、(4)デジタルワークショップ。
「産学連携機能」として、(5)サテライト連合大学院、(6)プロフェッショナル教育センター、(7)インキュベーションセンター、(8)総合情報センター、(9)プレゼンテーションセンター。
「情報ネットワーク機能」として、(10)秋葉原IT拠点情報センター、(11)学びと創造の場Xネットカフェ、(12)データセンター。
このように、実に多様な機能と施設が盛り込まれることになった。
「かつての秋葉原は、あらゆる電気部品が調達でき、モノづくりを支援する街だった。最近ではコンピュータなどのモノ売りの街となっていた。新しい街区は“儲かる秋葉原を創る!”をコンセプトにモノづくりを支援する機能をもつ街をめざしている」(NTT都市開発開発推進部・大堂宗了氏)。
●2棟のビルを建設、集客力は高まるか
再開発用地は、JR山手線に接して中央通り側に位置する約1万6000m2の街区だ。
基本プランでは、JR秋葉原駅寄りの1街区に地上29階建てのタワー型ビル(延べ床面積約4万7000m2)、3街区に地上21階建ての大規模複合ビル(約14万m2)を建設する。
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