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電機大手8社の02年度見通し 半導体事業の悪化、パソコン不振…厳しい環境下、下期回復に期待つなぐ
2002/05/13 21:12
週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載
相次ぐ下方修正の発表で、すでに予想されていたとはいえ、大手電機メーカーの2002年3月期(01年度)決算は惨憺たる結果に終わった。ゲーム事業が好調だったソニーを除き、各社とも軒並み減収を強いられ、うち6社が当期赤字となった。パソコンや携帯電話事業などの不振、さらにはこれらに起因する半導体事業の急激な採算悪化が業績を直撃した格好だが、今回の決算を底に業績は回復に向かうのか。03年3月期(02年度)については、「上半期は厳しい状況が続き、下半期の回復を期待したい」という希望的観測を出すメーカーが目立つ。はたして、電機大手各社は赤字体質を払拭し、黒字へと転換していくことができるだろうか。
●日立 経営改革・事業構造の転換が赤字脱出の道
日立製作所の02年3月期の連結実績は、売上高が前期比5.0%減の7兆9937億円と、かろうじて前期に近い水準を維持したが、損益面で大幅な赤字に転落した。同社では今年中のV字回復を目指し、03年3月期に売上高8兆1000億円、営業利益2000億円、当期純利益600億円を見込んでいる。
黒字回復の要因について同社では「抜本的な経営改革・事業構造の転換を進める」と説明。04年3月期については、「市場動向をじっくりと見据え、体力をつける時期」と捉えている。
●東芝 今期はリストラ効果で下期回復見込む
東芝の03年3月期の連結予想は、上期で売上高2兆7000万円、税引前損益は600億円の赤字、当期純損益は270億円の赤字を計上するものの、通期では売上高5兆8500億円、税引前損益が400億円の黒字、当期純損益が230億円の黒字となる見通し。
島上清彦副社長は、「今期(03年3月期)は、前期に行ったリストラによる固定費削減や映像関連機器の伸長により、下期から回復する。前期から実施している『01アクションプラン』で経営体質の早期強化を図ることがカギだ」と強調する。
●三菱電機 電子デバイスなどが赤字、他部門の伸びで業績回復
三菱電機は03年3月期の連結予想で、情報通信システム部門の営業損益が110億円の赤字、電子デバイス部門が290億円の赤字を計上するものの、ほかの部門の堅調な伸びにより、業績が回復に向かうとみている。
佐藤行弘・取締役経理部長は、「今期は、パソコン関連市場が前期より悪化することはないが、本格的に回復するのは03年度(04年3月期)になるだろう」と分析する。
今期の連結予想は、売上高が前期比1.4%増の3兆7000億円、営業損益が650億円の黒字、税引前損益が450億円の黒字、当期純損益が250億円の黒字となる見通し。
●NEC コスト削減と 事業体質の強化
NECの02年3月期の連結決算は、売上高が前期比5.7%減の5兆1010億円、営業損益が555億円の赤字、当期純損益が3120億円の赤字だった。
03年3月期の連結売上高は、前期比ほぼ横ばいを見込むが、前期に実施したリストラ策の効果、中国におけるパソコンや携帯電話などの完成品調達の拡大によるコスト削減で、営業損益は800億円の黒字を確保する見通しだ。
同社が黒字転換へのカギとするのは、「景気変動の影響を受けにくい強固な事業体質の構築」としている。
●富士通 e-Japan関連などへの注力で建て直しを図る
富士通の02年3月期の連結決算は、当期純損益が前期85億円の黒字から3825億円の大幅赤字となった。
「営業損益が赤字になったのは創業以来初めて」(高谷卓副社長)という。03年3月期の連結予想は、売上高で同3.9%増の5兆2000億円、営業損益で1000億円の黒字を見込んでいる。
高谷副社長によると、「下方修正を行わない方向で堅実に予測数値を立てたつもり」という。e-Japan関連やアウトソーシング事業に重点を置くほか、ネット機器関連にも期待をかける。
●ソニー ゲーム事業で売上高1兆円突破、決算にも好影響
他社が軒並み減収決算となるなかで、ソニーの02年3月期の連結売上高は、過去最高の7兆5783億円となった。ゲーム事業が初の売上高1兆円を突破したのをはじめ、「バイオ、クリエなど、ソニーブランド製品の売り上げが好調だった」(徳中暉久副社長)のが要因。
ただ、半導体や、他社にOEM供給しているパソコン周辺機器などの需要が落ち込んだことで、営業利益は前期比40.3%減の1346億円、税引前利益は同65.1%減の928億円、当期純利益は同8.6%減の153億円にとどまった。
03年3月期の連結予想は、第1四半期こそ赤字となるものの、通期では売上高が同6%増の8兆円、営業利益が同2.1倍の2800億円、税引前利益は同3.3倍の3100億円、当期純利益が同9.8倍の1500億円と強気の見通しを示している。
●松下電器 中村社長、V字型回復に向け強い自信
松下電器産業の中村邦夫社長は、03年3月期の連結見通しについて「売上高は前期比3.0%の成長、営業利益は1000億円を達成する。社会的約束と考えてもらっていい」と、V字形回復に強い自信を示した。
「本当は5%成長を目標にしたいが、現状ではパソコンと携帯電話に回復のめどが立っていないため、3%に抑えた」とも語った。
10月1日付で子会社5社を合併する。新体制ではAVC事業、固定通信事業、移動通信事業、カーエレクトロニクス事業、システム事業、環境システム事業、FA(生産システム)事業の7分野に集約。社内分社あるいは別会社の形で開発・製造・販売の全機能の統合・一元化により、事業ドメインごとの成長戦略の加速と責任経営の徹底を図っていく方針だ。
●シャープ 液晶テレビと協業強化で業績回復へ
シャープの02年3月期の連結実績は、3年振りの減収減益となったものの、当期純利益で113億円を確保。他社に比べると堅調な決算となった。
佐治寛・専務経理部長は、「今期(03年3月期)は、国内において液晶テレビの製品ラインアップの充実、海外においてはパートナー企業との協業強化などで業績回復を図る」と意気込む。
今期の連結予想は、売上高が前期比10.9%増の2兆円、営業利益が同22.3%増の900億円、経常利益が同39.1%増の680億円、当期純利益が同227.1%増の370億円を見込む。
今後は、モバイル機器向け次世代機能デバイス「システム液晶」の需要拡大を見込んでおり、同デバイス生産工場の本格稼働で売上増をめざす。(三浦優子●構成)
相次ぐ下方修正の発表で、すでに予想されていたとはいえ、大手電機メーカーの2002年3月期(01年度)決算は惨憺たる結果に終わった。ゲーム事業が好調だったソニーを除き、各社とも軒並み減収を強いられ、うち6社が当期赤字となった。パソコンや携帯電話事業などの不振、さらにはこれらに起因する半導体事業の急激な採算悪化が業績を直撃した格好だが、今回の決算を底に業績は回復に向かうのか。03年3月期(02年度)については、「上半期は厳しい状況が続き、下半期の回復を期待したい」という希望的観測を出すメーカーが目立つ。はたして、電機大手各社は赤字体質を払拭し、黒字へと転換していくことができるだろうか。
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