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「e-Japan重点計画-2002(案)」公表 05年、日本はIT先進国になれるか
2002/05/27 15:00
週刊BCN 2002年05月27日vol.942掲載
政府はe-Japan戦略の具体的な施策をまとめた「e-Japan重点計画-2002(案)」を公表した。6月3日までの期間、パブリックコメントを募集しており、6月中にも新しい重点計画がまとまる見通しだ。最大のポイントは、重点政策5分野の1つ「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成」のなかで「自由かつ公正な競争原理の整備促進」が打ち出され、競争の枠組みについて2002年度中に一定の結論を得ると明記されたことだろう。「05年に世界最先端のIT国家となる」と定めたe-Japan戦略をどう実現していくのか。2年目を迎えたe-Japan戦略も、さらなる進化が求められている。(千葉利宏●取材/文)
国民の理解を深めるための施策とは
●具体的施策は300以上、5つの横断的課題
e-Japan戦略もいよいよ2年目に突入した。01年1月にe-Japan戦略が策定された後、220の具体的な施策を盛り込んだ「e-Japan重点計画」が打ち出されたのは01年3月のこと。
01年11月には「e-Japan加速・前倒し」によって計画の一部前倒しが行われ、今回、01年度の実績を踏まえて新重点計画へとステップアップすることになった。
「昨年のe-Japan計画で策定された220の施策のうち、昨年度中に予定されていた103施策はすべて実施。残る117施策に今回200施策を追加して、新重点計画案では合計で300を超える具体的な施策を盛り込んでいる」(内閣官房IT担当室・関啓一郎参事官)。
新重点計画案の全体構成は、図に示す通り。IT基本法で定められている重点政策5分野に加えて、5つの横断的課題があり、今回「国民の理解を深めるための措置」が追加された。
確かに、インターネットのブロードバンド化が進み、通信料金が大幅に下がったという成果を除くと、一般国民にとって実感しやすい電子申請などの電子政府関連サービスは、まだ一部が始まったばかり。
「e-Japan戦略も、かなりのスピードで進んでいるが、国民の目から見ると分かりづらいのではないか。今回、横断的課題のなかに“国民の理解を深めるための措置”を加え、e!プロジェクトなどの施策を通じて積極的にITの成果をアピールしていく必要がある」
「これまでの重点計画のなかでも、『インターネット利用環境の整備』は、当初の目標である00年時点で野心的だった『2005年までに高速網に少なくとも3000万世帯、超高速網に1000万世帯が接続可能な環境を整備する』は重点計画の施策も奏功して目標をクリア」したうえに、「ADSLの料金は、物価水準を考えると韓国より安い。世界で最も安い水準だ。光によるサービスも世界に先駆けてスタートしている。ただし、ブロードバンドの実加入が380万にとどまっているため、これが課題だ」と分析する。
ブロードバンドへの接続可能な環境と実加入のギャップをどのように縮めていくには、デジタルデバイド(情報格差)を是正するためのIT教育を地道に進めていくほか、何らかの優遇策の導入も必要かもしれない。
新重点計画案では、317施策のうち3分の1以上の126施策を02年度中に実施する方針を打ち出している。
「どの分野をとくに重視するというわけではなく、通信インフラなどのハードの基礎と、教育や人材育成などのソフトの基礎の上に、電子商取引・電子政府などのIT利用促進がバランスよく進んでいくことが必要である」
02年度分では「高度情報通信ネットワークの形成」関連が40施策と最も多いが、情報セキュリティ分野でもサイバーテロ対策など16施策を実施したい考えで、「目に見えにくい分野だからこそ、絶え間なく努力していかなければならない」と強調する。
利用の面でも、インターネットの普及率などは1年間で大幅にアップしているが、世界各国と比較した場合、「どの国もIT化を積極的に推進しており、順位はむしろ下がっている」状況にある。
「世界最高水準をめざす」とした目標は、世界の“山”がどんどん高くなっているため、実行のスピードをさらに加速する必要が出てきているのだ。
●行政改革にどう踏み込むか、02年度中に議論加速
一方で、e-Japan戦略がますます加速するなかで、ITと実際の社会の仕組みをどうマッチングするかも重要な課題になってきた。電子商取引も、BtoB市場は順調に拡大しているものの、BtoC市場は米国などに比べて出遅れており、02年度中に事業活動の電子化を妨げる規制の総点検を実施する。
行政や公共分野の情報化では、02年度内で行政手続き全般のアクションプランの策定や、政府内の情報セキュリティポリシーの実効性確保なども計画案に盛り込まれた。
「電子政府については、IT化によって業務改革、バックオフィス改革をどうするのか」は重要なテーマであり、IT化の本来の目的の1つ、業務の効率化にも力を入れていく。
ただ、これらが行政改革と連動した形で組織や人員定数まで踏み込めるかどうかは、まだ未知数のようである。
また、新重点計画案では、自由かつ公正な競争環境の整備について、インターネット時代に対応するため、「電気通信事業法における一種・二種の事業区分を含む競争の枠組みについて見直し、02年度中に一定の結論を得る」との内容が盛り込まれた。
この点は、今回の重点計画(案)のなかで最も注目されていた部分で、昨年12月にオリックスの宮内義彦会長を座長とするIT戦略本部IT関連規制改革専門調査会がまとめた報告書「IT分野の規制改革の方向性」、いわゆる宮内レポートに関連するところである。
同レポートに対しては、当時から放送業界などマスコミから強い反発が出ていた。
今年1月末に開催されたIT戦略本部でも、「(地上波放送に関しては)ハードとソフトが合体している現在の制度が適当」(片山虎之助総務大臣)と、「原則自由、独占禁止の方針に沿って、徹底した規制の明確化と簡素化を図るべき」(平沼赳夫経済産業大臣)と、スタンスの違いが際立っていた。
「新重点計画の具体的施策では、担当の府省と、実施期限を明記させたのが大きなポイント」というように、02年度中と期限を区切ったことで議論が一気に促進されるのは間違いない。
その議論を通じて法改正まで手をつけるかどうかがポイントになると見られている。今年度中に、総務省がどのような方向性を打ち出すのか、注目される。
政府はe-Japan戦略の具体的な施策をまとめた「e-Japan重点計画-2002(案)」を公表した。6月3日までの期間、パブリックコメントを募集しており、6月中にも新しい重点計画がまとまる見通しだ。最大のポイントは、重点政策5分野の1つ「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成」のなかで「自由かつ公正な競争原理の整備促進」が打ち出され、競争の枠組みについて2002年度中に一定の結論を得ると明記されたことだろう。「05年に世界最先端のIT国家となる」と定めたe-Japan戦略をどう実現していくのか。2年目を迎えたe-Japan戦略も、さらなる進化が求められている。(千葉利宏●取材/文)
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