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<BCN REPORT>藤沢市、電子申請で実績 実証実験からサービス提供へ
2002/05/27 21:12
週刊BCN 2002年05月27日vol.942掲載
インターネットを使って申請、届出など行政手続きを行う電子申請が、地方自治体でも試験的にスタートした。国の電子自治体推進パイロット事業に参加した神奈川県藤沢市では、今年2月に2001年度の実証実験が終了した後も引き続き市民へのサービスの提供を続けており、電子申請に対する市民の関心は高いと手応えを感じている。しかし、今後対応すべき課題も多い。独自に電子自治体推進アクションプランを策定して、申請業務の分析作業を進めるとともに、個人認証や電子納付などの機能追加や、今年4月に発足したばかりの県市町村電子自治体検討協議会への対応など積極的に取り組む考えだ。
■3つのシステムで実験
「2月20日で01年度の実証実験は終了したが、そのあともIDとパスワードを発行してほしいとの要望が多い。電子申請に対する市民や企業の関心はかなり高いことがわかった」(藤沢市企画部情報推進課)。
藤沢市は、電子自治体への取り組みが積極的な自治体として全国にも知られており、インターネットを通じて市民が市政について議論する市民電子会議室を設置するなど先駆的な試みを実施している。
それだけにIT施策に対する市民の関心も高く、今回の電子申請の電子自治体推進パイロット事業でも、実験期間中の利用者ID交付件数は200件を上回った。
実証実験でサービスを提供したシステムは、申請・届出システム、施設予約案内システム、情報提供システムの3つ。 申請・届出システムでは救命講習会受講申請、小児医療証交付申請、犬の各種申請・届出、道路占用許可申請、公共工事などの業者登録申請の5つを受け付けた。
「利用状況は、閉庁日や閉庁時間の割合が65%と高く、八ヶ岳野外体験教室などの施設予約ではインターネットでの予約が申し込み全体の1割に達した」という。
これらのサービスメニューは、パイロット事業の運営主体で、汎用受付システムを構築した(財)地方自治情報センターに対して、参加8団体が実施したいサービス項目を提出。そのなかから、今回の実験で取り上げるサービスを選び、藤沢市の場合で申請・届出で5件を実施した。 もっとも、地方自治体で約5100件ある事務手続きの95%を電子化する目標から見れば、まだまだ道のりは遠い。
■申請業務の簡素化へ
最大の関門は、従来の事務手続きの業務フローを見直すという作業である。 これまで書面で行っていた申請・届出業務を単に電子化しただけでは、業務効率の改善効果が薄いと考えられるからだ。 つまり、電子化することで、簡素化できる手続きを省いたり、これまで別々だった手続きを一緒にしたり、行政手続そのものを見直すことが重要なのである。
藤沢市では、独自に策定した電子自治体推進アクションプランのなかで、行政手続の見直し作業の工程表を定めて、01年度から2年計画で見直し作業に入っている。
1年目は、市役所として実施している申請業務の全調査を実施して1758件の全体像を把握。さらに、これらの業務を図に示したように「電子化が容易なもの」、「電子化に条例・規則等の改定が必要なもの」など12パターンに分類。それらのパターンごとに業務フローなどの分析を行ってきた。
「申請書の特性なども調査して、ダウンロードサービスが可能な申請書も抽出。ホームページに200件ぐらいの申請書をダウンロードできるコーナーも設けた」
2年目は、市民から申請業務に対する要望などを調査し、市民の視点に立った使い勝手などを検討する。申請業務の違いによって、ページがバラバラで操作のやり方も異なるようでは、利用者にとっては明らかに使い勝手が悪いと考えられるからだ。
こうした検討を踏まえて申請書の統廃合、申請業務間の関連性などを整理し、効率的な申請業務フローを実現していくことにしている。
「これらの作業は、電子自治体の担当課である情報推進課だけでは実現できない。市役所全体の組織や職員定数などを所管している行政総務課と共同で、市役所の組織そのものを見直すことも視野に入れて作業を進めている」
電子自治体は、単に住民票の交付がインターネットで手軽にできるようになるといった表面的な変化だけでなく、行政の組織変革をももたらすインパクトを秘めているのである。
■“人にやさしいIT”
4月下旬には、県の呼びかけで県市町村電子自治体検討協議会も発足した。9月までには方向性を決め、10月からは共同運営方式による04年度からのサービス開始に向けて活動を本格化する計画だ。
共同運営方式を構築していく過程で、申請書の書式や業務フローも自治体ごとにバラバラではなく、標準化されていくのが自然の流れだ。
「確かに電子申請の操作方法や申請書の書式などが同じであった方が、利用者にとっては便利だろう」
電子自治体は、自治体内の組織変革だけでなく、自治体間の連携のあり方にも影響を及ぼす可能性もあると言える。 藤沢市の担当者は、電子自治体の将来像について、こんな夢も語ってくれた。
「いまの行政サービスは全て申請主義。市民の側から申請しなければ、サービスは受けられない。しかし、お年寄りをはじめ、自分がどんな行政サービスを受けられるのかを知らない住民も多い。個人情報保護の問題もあるが、それぞれの住民がどんなサービスを受けられるのかが検索できるサービスを実現できないかと考えている。できれば、行政の側からアドバイスするぐらいのサービスを提供できないか…」
“人にやさしいIT”である。
インターネットを使って申請、届出など行政手続きを行う電子申請が、地方自治体でも試験的にスタートした。国の電子自治体推進パイロット事業に参加した神奈川県藤沢市では、今年2月に2001年度の実証実験が終了した後も引き続き市民へのサービスの提供を続けており、電子申請に対する市民の関心は高いと手応えを感じている。しかし、今後対応すべき課題も多い。独自に電子自治体推進アクションプランを策定して、申請業務の分析作業を進めるとともに、個人認証や電子納付などの機能追加や、今年4月に発足したばかりの県市町村電子自治体検討協議会への対応など積極的に取り組む考えだ。
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