その他
キヤノン、NEC、オムロンの取り組み「特許を収益の柱にせよ」
2002/07/15 21:12
週刊BCN 2002年07月15日vol.949掲載
特許を収益の柱にしようという動きが顕著になってきた。従来、「防衛」としての位置づけが強かった特許が、「攻め」の手段として用いられるようになり、特許そのもので収益をあげようという企業が出始めてきたのだ。いわば、特許部門がコストセンターからプロフィットセンターに変わろうとしている。同時に、新たに企業価値を推し量る指針ともなりそうだ。特許取得件数で上位を占め続ける主要IT企業は、特許をどう捉えているのか。
企業価値を推し量る指針に
●キヤノンの特許戦略
特許ビジネスに先端的に取り組んでいる代表企業がキヤノン。
もともとキヤノンは、複写機事業を開始するにあたって、ゼロックスがもつ600件以上もの関連特許を打ち破るとともに、独自技術の周辺技術まで特許で押さえ、他社の参入を完全に封鎖した。
まさにこれは、自社事業を優位に展開するための「防御型」特許戦略といえるだろう。
だが、キヤノンの特許戦略の真骨頂は、他社がもっている特許技術と自社の約7万件にも上る特許技術を交換するクロスライセンス方式による「攻め」の戦略だ。
これにより、国内外の先端企業がもつ特許技術を入手し、自社の事業に生かすことができる。
この戦略は同社の根幹的な取り組みともいえる。特許収益だけで242億円を計上するほどだ。
一方、米国における特許取得件数で9年連続で第1位となっているIBMは、2001年の知的財産による収益が7億3600万ドル(約900億円)、ライセンスやロイヤリティによる収益が5億1500万ドル(約600億円)に達しており、収益源の1つとなっている。
●特許は知的「資産」
NECは今年4月、従来の知的財産事業本部を知的資産事業本部へと名称を変えた。
これは、流動性のなかった知的「財産」を流動性がある知的「資産」にする狙いから。現在、同社が進めている“西垣改革”の1つで、資産を流動化させることで新たな収益を確保しようというわけだ。
同時に担当部門の意識改革も進めている。
これまで特許申請のための書類を取り揃えるだけの業務から、事業部門に対して、より事業を戦略的に進めるための提案を行ったり、場合によっては他社から強い特許を買ってくるということも特許部門主導で行える体質への転換を目指す。
つまり、特許部門も事業に参加するという「攻撃型」の特許戦略である。
オムロンも今年6月、特許戦略に関する記者会見を行った。
各社があまり明らかにしたがらない特許戦略を、あえて会見のテーマにするのは異例ともいえる。
オムロンは「強い特許」創出のために、年間売上高10億円、市場独占などの条件をクリアした特許を「スーパー特許」と社内で規定。これまでの2年間で、10件に対して1800万円の報酬を特許を発明した社員に支払っている。
また、特許の価値を推し量る仕組みを独自に用意。これにより、特許により無形資産価値を企業体力として評価する考えだ。
現在、知的財産会計という新たな会計手法により、株価やバランスシートには出てこない企業価値を推し量ろうという動きが全世界的にあり、オムロンはこれを独自に進めようというわけだ。
いずれにしろ、特許の位置づけが大きく変わろうとしていることは間違いない。
近い将来、特許という新しい知的資産が、もう1つの企業価値を推し量る基準として定着する可能性もある。(大河原克行●取材/文)
特許を収益の柱にしようという動きが顕著になってきた。従来、「防衛」としての位置づけが強かった特許が、「攻め」の手段として用いられるようになり、特許そのもので収益をあげようという企業が出始めてきたのだ。いわば、特許部門がコストセンターからプロフィットセンターに変わろうとしている。同時に、新たに企業価値を推し量る指針ともなりそうだ。特許取得件数で上位を占め続ける主要IT企業は、特許をどう捉えているのか。
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