その他
業務用端末は携帯電話で 本腰を入れ始めたキャリア
2002/07/15 15:00
週刊BCN 2002年07月15日vol.949掲載
携帯電話を活用した法人向けソリューションが増えている。NECのネットワークス社は「電話機を納入するだけの“出入り業者”の時代は終わった。通信事業者(キャリア)と足並みを揃えた法人向け業務システムの開発に力を入れる」との方針を打ち出す。ほかのベンダーも、受発注システムや、携帯電話の位置情報と地図を連動させた指示管理システム、J-フォンの写メール用カメラを使った現場報告システムなど、特徴あるシステムを相次いで開発している。
Javaで業務システムが可能に
●法人向けにも携帯電話システム提供が増加
法人向けのモバイル端末は、PDA(携帯情報端末)が有利と見られていた。しかし、意外に携帯電話が粘り強い食い込みを見せている。
この背景には、キャリア側が本腰を入れてベンダーやシステム販社の支援を始めた影響が大きい。NTTドコモは、中堅・中小企業向けにドコモショップを活用した販売力強化を進める。J-フォンでは、システム販社を集めた販売組織「J-フォン認定ソリューションプロバイダー(JCSP)」の活性化に力を入れる。
携帯電話の販売台数が右肩上がりで伸びていた時期は、どのキャリアも手間のかかる法人売りより個人向けのシェア争いに気を取られていた。だが、個人向け販売が一巡した今、「シェアも重要だが、いかにトラフィック量(通信量)を増やすか」という原点に立ち返った施策を重視するようになった。
これを受けて、NECネットワークスは、携帯電話のJavaアプリケーション領域(約200KB)に、超小型データベースを実装する技術を開発。試作第1号はJ-フォンの携帯電話に組み込んだ。
NECネットワークス国内第二システム事業部営業部・千田康博主任は、「J-フォンの携帯電話は、ROMメモリにJavaアプリを焼き付ける方式で、最大200KBまで搭載可能。ドコモの機種より容量が多い。ここに超小型データベースを実装する」と、携帯電話のPDA化を進める。
データベースを実装すれば、これを利用した業務アプリケーションの開発が可能になる。
たとえば、受発注や在庫管理のシステム。これまでは、データ参照のたびに回線をつないで、携帯電話に内蔵したブラウザで閲覧する必要があった。しかし、データベースを使えば、たとえ電波の圏外であっても、事前に読み込んだデータをいつでも自由に閲覧できる。また、不足しているデータは“差分”だけをダウンロードすればよい。
携帯電話実装型の超小型データベースだけではない。NECネットワークスでは、J-フォンと専用線で直結したデータセンターを6月に開設した。
このセンターは、J-フォン用のJavaアプリを利用者がダウンロードするために開設した「Javaアプリダウンロードセンター」。J-フォン向けのJavaアプリを開発する企業向けに月額5000円で10個のJavaアプリを格納できる容量を貸し出す。
同営業部の勅使河原宏行営業課長は、「先の超小型データベースと当社のデータセンターを組み合わせたソリューションも計画中。今後は、他社にも超小型データベースとセットでデータセンター領域を貸し出し、さらに複雑で大規模なシステムに仕上げる。これまでは、J-フォンにサーバーを売り込む“出入り業者”の役回りだったが、それだけでは尻すぼみになる。携帯電話インフラを使ったソリューションを当社自身が開発することで、より主導的なビジネスを展開できる」と“脱・出入り業者”を宣言する。
●需要多い位置情報サービス、基幹システムとの連携も
システム構築のIXI(嶋田博一社長)は、携帯電話の位置情報と地図情報を照合して、利用者の位置を割り出すシステムを今年4月から始めた。このシステムは、au(KDDI)などが提供している衛星利用のGPS(全地球測位システム)とは異なり、J-フォンの基地局を基準点に位置を割り出す。1件あたりの測位料金が約3円(関西地区では約2円)と安いのが特徴だ。
その代わり、GPSほどの精度はなく、都心部で約200mほどの誤差が発生する。同社東京企画部の篠原建悟部長は、「J-フォンでは、スカイメール(J-フォン内部だけの専用メール)に位置情報を付帯する方式。したがって料金が安い。GPSの場合はパケット料金が発生するため、1件の測位あたり最低数十円はかかる」という。
位置確認が必要な業務システムは意外に多い。篠原部長は、「たとえば、介護ヘルパーや建設関係の多くは、現場に着いてから勤務が始まる。携帯電話の位置情報と本社のタイムカードシステムと組み合わせれば、勤怠管理システムができあがる」。
「介護ヘルパーらは、介護終了後の日報を自宅からファクシミリ(FAX)で送るケースが多い。本部側はFAXが毎日数百通と届くだけで作業が増える。勤務地の現場から位置情報を含んで日報を送れば、信頼性が高まると同時に、本部の作業効率も大幅に向上する。写メールなどのビジュアルを併用すればより効果的だ」と話す。
PDAと基幹サーバーの無線通信高速化ミドルウェアを開発するデジタルデザイン(寺井和彦社長)は、「今はまだPDAだけに対応したミドルウェアだが、将来的には携帯電話と基幹サーバーのリアルタイム通信を高速化するミドルウェアの開発も可能」(寺田社長)と、携帯電話向けミドルウェアの開発に意欲を示す。
システム販社のイートレックジャパン(進藤隆志社長)は、「携帯電話の最大の利点は、若い人を中心に誰でも使えること。PDAは使い慣れていない人が多く、重量も重い。化粧品販売員の発注端末や、小売店の棚割りを記録して歩くラウンダー用端末としては携帯電話が最適。実際、当社のシステム構築案件のなかで、携帯電話を端末として使うケースが急増している」と話す。
J-フォンe-サービスソリューションズグループの山口信主任は、「法人向けの本格的な業務用Javaアプリの開発環境と写メール、セキュリティの3つの優位性をベンダー各社に訴求することで、より多くのソリューションを開発していただく」と、ベンダー支援に力を入れる。
一方、対するドコモは最新機種で、Java容量をJ-フォン並みに拡大し、写メールに対抗するカメラ機能も採用するなど、対抗意識を顕わにする。
携帯電話は使い方や運用次第で、PDAと肩を並べる業務用情報端末の座を占める可能性が高まっている。(安藤章司●取材/文)
携帯電話を活用した法人向けソリューションが増えている。NECのネットワークス社は「電話機を納入するだけの“出入り業者”の時代は終わった。通信事業者(キャリア)と足並みを揃えた法人向け業務システムの開発に力を入れる」との方針を打ち出す。ほかのベンダーも、受発注システムや、携帯電話の位置情報と地図を連動させた指示管理システム、J-フォンの写メール用カメラを使った現場報告システムなど、特徴あるシステムを相次いで開発している。
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