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<BCN REPORT>韓国の最新ネット事情 インターネットはカフェで
2002/07/29 21:12
週刊BCN 2002年07月29日vol.951掲載
インターネット上のコンテンツは、社会・文化・生活形態とその時代の流行に左右されやすく、パソコン向けのOSやCPUのように世界的なデファクトスタンダードは存在しない。日本では携帯電話がインターネット利用者の底上げに貢献しているが、隣国のIT先進国の韓国ではPC房(ピーシーバン)と呼ばれるインターネットカフェが若者にネットの楽しさと楽しみ方を教え、ネット普及の起爆剤となった。また、最近では自分の化身であるアバターを介したオンラインゲームやチャットが大人気で、アバター市場も急拡大している。現地のITコンテンツの最前線を取材した。(清水計宏●取材/文)
インターネットはカフェで
■街中に無料の公衆ネット端末
韓国情報通信部(情通部)の調査によれば、2001年末の韓国のインターネット普及率は56.6%。そのうち、男性が1354万人、女性が270万人で、男女の利用率はそれぞれ63%、50.2%となっている。年令別では、7-19歳が834万人(利用率93.3%)と最も多く、20代が708万人(同84.6%)とそれに続いている。その大半がブロードバンドユーザーで、世界でもトップクラスのブロードバンド先進国だ。
IT先進国・韓国の実態は、統計数字だけではなかなか実感がわいてこない。だが、いったん韓国に足を踏み入れると、その先進ぶりがひしひしと伝わってくる。韓国の表玄関である仁川(インチョン)国際空港ロビーには液晶ディスプレー付の公衆インターネット端末(無料)が設置されている。ソウル市街のいたるところには「パソコン部屋」を意味するインターネットカフェ「PC房(ピーシーバン)」の看板が目につく。
ソウルの新興地区でIT企業がひしめく江南地区。地下鉄2号線三成駅から韓国総合貿易センターの地下にかけて広がるアジア最大のショッピングモール「コエクスモ-ル(COEX MALL)」(総敷地3万6000坪、1日平均30-40万人が来場)にも、いたる所に有料と無料の公衆インターネット端末がある。無料の端末は数秒間広告を見れば、無料でインターネットに接続できるようになっている。
コエクスモールの一角には、韓国最大のPC房「KT MEGAWAVE(ケーティー・メガウェブ)」がある。未来志向のインテリアデザインの空間に、パソコン約200台とともに、音楽CD録音室、対戦ゲーム中継ステージ、ドラムルームなどが設置されている。ここでは、デジタルカメラを使って自分のオリジナルキャラクターを作成し、それをバッジやクッションにプリントするサービスも提供している。
KT(韓国テレコム)の職員が「独自文化の誕生地になるのを期待している」と語るように、利用者はほとんどが若者だ。オンラインゲーム、チャットに夢中になっている。なかには自作のオンラインゲームを制作したり、オリジナルキャラクターを描いている人もいる。各パソコンには監視ソフトがインストールされており、カウンターで受け取ったIDとパスワードを入れて利用する。一般のPC房は1時間1000-1500ウォン(約100-150円)。ここは1時間2000ウォン(約200円)と少し高めだ。制限時間内であれば、どのパソコンに移っても利用でき、タイムオーバー5分前に警告画面が出る。
■ネット普及の拠点「PC房」
韓国のインターネットは、PC房を拠点に始まった。
「PC房でインターネットを何に使うかを体験したユーザーが、自宅でインターネットを使うようになった。それに、韓国にはエンジニア、理工学系技術者の数が比較的多く、彼らが早くからインターネットを利用し、国のインフラ整備を促した。韓国では情報通信部が95年から情報化政策に取り組み、98年に金大中大統領が『知識基盤社会』の構築を宣言し、『サイバーコリア21』や『eコリア』などのIT化政策を掲げ、インフラ整備や産業振興に取り組んだ」
韓国でデジタルコンテンツ開発とモーションキャプチャービジネスを展開し、IT事情に詳しいソルフィクス(本社・ソウル市)の李恩泰氏は語る。
当初、PC房にはワープロしか置かれていなかった。その後、「スタークラフト」に代表される対戦ゲームが楽しめるようになってから、PC房は若者の間に一気に人気が高まった。97年末に通貨危機が韓国を襲い、その当時リストラされた「IMF退職者」がPC房の経営に乗り出したことも、その増大の要因となった。
韓国内のPC房の数は2万店を超す。97年当時は1500店だったことから、その成長ぶりがわかる。ソウル市内だけで約5600店がひしめく。PC房の利用者数は約1000万人(推定)、市場規模は1兆2000億ウォンを超える。
■アバター市場が急成長
ITバブル崩壊で下降ぎみになると心配されたこうしたインターネット市場を再興させているのがアバター関連ビジネスだ。
韓国最大のコミュニティポータル「SayClub」(セイクラブ)を運営するネオウィズは、この市場に00年末に火を付けた。01年にはアバター関連だけで130億ウォン(約13億円)を稼ぎ出す。02年に入ってからも月間12-13億ウォンを売り上げており、この市場が急成長していることから、今年から新規参入も相次ぎ、アバターとそのアイテムや関連サービスはネットビジネスの定番になっている。
アバターは、ネット上でユーザーが自分の分身として使うキャラクターで、自分を誇示し人気を勝ち取るツールとして一般化した。K4テクノロジーが提供している「JoyMe.com」のサイトで自らの写真からアバターを作成するサービスなどビジネスも多様化している。アバター愛好家は圧倒的に10代が多いが、主婦、中高年層、会社員にまで広がっている。
韓国のアバター人口は1000万人を超えたとされ、その市場規模は2002年度に1000億ウォン(約100億円)になると推定されている。
インターネット上のコンテンツは、社会・文化・生活形態とその時代の流行に左右されやすく、パソコン向けのOSやCPUのように世界的なデファクトスタンダードは存在しない。日本では携帯電話がインターネット利用者の底上げに貢献しているが、隣国のIT先進国の韓国ではPC房(ピーシーバン)と呼ばれるインターネットカフェが若者にネットの楽しさと楽しみ方を教え、ネット普及の起爆剤となった。また、最近では自分の化身であるアバターを介したオンラインゲームやチャットが大人気で、アバター市場も急拡大している。現地のITコンテンツの最前線を取材した。(清水計宏●取材/文)
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