今年度(2003年3月期)のIA(インテル・アーキテクチャ)サーバーは、前年度比で5-10%(台数ベース)落ち込む可能性が出できた。国内市場全体で4月以降、前年水準の1ケタ減で推移しており、「今後も明るい材料は少ない」(ベンダー幹部)ことから、年度を通じてもマイナスとなる見通しだ。企業需要や消費の低迷が、IAサーバーの販売動向に水を差す。だが、一方で自治体を中心にIT投資が増える兆候が見られ、下期の踏ん張り次第では、上方修正も不可能ではない。
自治体のIT化に活路も
昨年度のような成長は期待できず、良くて前年並み――。IAサーバーのベンダー・販社の販売動向を総合すると、企業のIT投資が予想以上に冷え込んでいる。IAサーバーの市場指標としてクライアント動向がある。電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、4-6月の法人向けクライアントパソコンの出荷台数は、前年同期比16%減と激しく落ち込んだ。
キヤノン販売・コンピュータビジネス企画課の鈴木徹課長代理は、「クライアントの2ケタ減が続くなか、『サーバーだけ持ってこい』という商売はあり得ない。企業の情報化投資という切り口で見れば、(サーバーとクライアントの動向に)共通する部分は多い」。大塚商会・マーケティング本部販売企画課の野田正夫係長は、「企業向けのクライアント販売が落ちれば、サーバーも連動して落ちる」と、クライアントほどの落ち込みはなくても、それに近い数値になると指摘する。
日立製作所・インターネットプラットフォーム事業部マーケティング統括の木村政孝本部長は、「業界全体でIAサーバーの販売が鈍化しているということは、この上で動くソリューションビジネスが活性化していないことの証」と、サーバーを基盤としたソリューションビジネスの先行きに警鐘を鳴らす。「4-6月は、毎年落ち込むが、今年はさらに悪い。セキュリティへの投資は活発だが、業務ソリューションは市場全体で縮小傾向にある」と話す。
日本IBM・システム製品IAサーバー&PWS事業部の岩井淳文事業部長は、「ブロードバンド(BB)への過渡期で、UNIX機も含めてサーバー業界自体が踊り場」。リコー・販売事業本部OSOセンター(購買・調達部門)の杉窪倫之課長代理は、「中間期末の需要で、9月にかけては回復基調になると期待しているが、先行きは不透明」と言葉を濁す。コンパックコンピュータは、「HP(ヒューレット・パッカード)との合併発表以来、買い控え影響を受け、前年に比べ10%前後落ち込んだ」(樋口泰行取締役)と、不況と合併で“産みの苦しみ”を痛感する。
昨年7-12月は、前年同期比50%増の勢いでIAサーバーの国内販台数を伸ばしたデルコンピュータも、「今年に入ってからは前年の約15%増と伸びが鈍化」(サーバマーケティング部の瀬戸弘和サーバブランドマネージャ)した。ハイテク調査会社のIDCジャパンでは、今年1-3月の国内IAサーバーは、市場全体で5%減と算出している。
一方で、富士通・プライマジー販売推進部の渡辺秋穂部長は、今後「住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)を基盤とした自治体のIT投資が活発化する」ことに加え、「ウィンドウズNT系のOSの無償サポートが、あと1年弱で終わる。この下期からウィンドウズ2000への更新がヤマ場を迎え、これにともなうシステム需要がある」と期待をつなぐ。
さらに、「業務サーバーが細分化する傾向に歯止めをかけるため、サーバー統合がこれから本格化する。これらの需要をうまく捉えれば、業界全体で前年度に対し台数、金額ともに100%前後に持ち直すことも可能」(渡辺部長)と食い下がる。
住基ネットに関連した自治体需要に、企業のシステム更新・統合化需要が重なれば、弱含みながらも市場が持ち直す可能性も、まだ十分残されている。
【大塚商会】売れる業種ソリューションを出せば、サーバーの販売台数は自然についてくる。
【キヤノン販売】クライアントの販売台数は2ケタ減だが、サーバーはなんとか前年並みに漕ぎ着けたい。
【コンパック】合併発表による買い控えで、サーバーの販売は前年割れ。今年11月1日に日本HPと正式合併。
【デル】昨年後半は前年比50%増で売れたが、今年に入り伸びが同15%増に鈍化。
【日本IBM】実質的に価格を落としてでも、ハイエンドIAサーバーの販売に力を入れる。
【日立】サーバー台数が落ちているのは、ソリューションビジネスが活性化していない証拠。
【富士通】自治体需要やNT更新期であることなどから、後半はチャンスがある。
【リコー】2ケタ減のクライアント同様、IT投資減退はサーバーにも影を落とす。