その他
新生HP、第3四半期決算発表 デル、IBMを前に厳しい船出
2002/09/09 15:00
週刊BCN 2002年09月09日vol.956掲載
コンパック・コンピュータを買収したヒューレット・パッカード(HP)が、買収後初の四半期決算を発表した。しかしその内容は不振を極め、新HPは厳しい船出となった。パソコンでは念願の世界トップの座は奪回したが、デルコンピュータとは僅差で、近いうちの再逆転の可能性も高い。ITサービスの売上高は7%減、エンタープライズ製品も20%余りの売上高減少である。厳しいIT市場で売上高を大きく伸ばすのはデルだけとなり、IBMも苦戦中だ。HPはUNIXサーバー市場でサン・マイクロシステムズに次ぐ有力メーカーだが、コンパックUNIX統合という難題も抱える。さらにUNIX業界標準はLinuxとなる公算も大きい。HPはLinux戦略でもIBMに大きく後れをとっており、当面苦戦が続く。(中野英嗣●取材/文)
多額のリストラ費用を計上
■パソコン首位は奪回
2002年5月にコンパックを買収した新生HPの、買収後初となる02年第3四半期(5-7月期)決算は、極めて厳しい内容であった。
前年同期のコンパック決算を合算した比較でみると(以下同)、売上高は10.9%減の165億3600万ドル、16億1200万ドルのリストラ費用計上のため、純損益は20億2900万ドルの赤字となった。前年同期も少額赤字1億1600万ドルであったが、赤字は大幅に拡大した。
セグメント別でみた売上高の前年同期比は、プリンタが9.7%増であったが、家庭向けパソコンを含むパーソナル機器が18.6%減、ITサービス7.0%減、そしてサーバーなどエンタープライズシステムは21.6%も減少した。
米IT市場は厳しさが増している。このため、IBMの直近四半期売上高も5.7%減だが、ウィンテル市場で独走するデルは売上高を11.1%も伸ばした。
HPは、デルはもとより、総合メーカーIBMより厳しい経営環境だ。HPはコンパックを買収したため、02年4-6月期の世界パソコンシェアは15.1%と、デルの14.8%を押さえてトップの座を奪回した(米ハイテク調査会社IDC調べ)。
しかし同期にデルは、世界市場が縮小するなか、パソコン出荷台数を15.5%も伸ばしたが、HPは逆に16.2%も減らした。デルが伸ばした台数にほぼ匹敵する数をHPが減らしたことになる。 こうしてデルは従来のHP、コンパック市場を浸食し、HPはデルのカニバリズム(共食い)によって苦戦している。
■法人市場で立ちはだかるIBM
HPのコンパック買収の狙いは、パソコン世界市場でデルからトップの座を奪うこと、そしてエンタープライズ市場でIBMと対抗できる強力なベンダーに発展することであった。
パソコントップの地位は奪回したが、現在の勢いを比較すれば、次の四半期での再逆転は必至だ。
また、エンタープライズシステムでの20%余りの大幅減、およびサービス売上高7%減は、IBMと対抗するHPにとっては厳しい数字だ。
IBMが、かつてHPが買収に失敗したプライスウォーターハウスクーパース(PwC)のコンサルティング部門を買収することも、これからのIBMとの競合上、HPにとっては極めて大きなマイナス要因となろう。
HPはITサービスでIBMと大きな格差があり、さらにこれからのウェブサービスの基盤となるLinux、グリッドコンピューティングでもHPは、IBMをはるか後方から追いかけることになる。
HPはエンタープライズの中核UNIXサーバーでは、コンパックUNIXをHP- UXに統合する計画だが、これには技術的課題も多い。さらにその統合に手間取る間に、UNIX標準がLinuxに移り変わってしまう可能性も高くなった。
この状況を認識するHPは、サンフランシスコで02年8月開催のLinux Worldで「Linux総合ベンダーHP」を誇示した。 しかし、エンタープライズLinuxではIBMが段突にリードしている。新HPはウィンテル市場でデル、そしてエンタープライズではIBMとの苦戦が続く厳しい船出となった。
コンパック・コンピュータを買収したヒューレット・パッカード(HP)が、買収後初の四半期決算を発表した。しかしその内容は不振を極め、新HPは厳しい船出となった。パソコンでは念願の世界トップの座は奪回したが、デルコンピュータとは僅差で、近いうちの再逆転の可能性も高い。ITサービスの売上高は7%減、エンタープライズ製品も20%余りの売上高減少である。厳しいIT市場で売上高を大きく伸ばすのはデルだけとなり、IBMも苦戦中だ。HPはUNIXサーバー市場でサン・マイクロシステムズに次ぐ有力メーカーだが、コンパックUNIX統合という難題も抱える。さらにUNIX業界標準はLinuxとなる公算も大きい。HPはLinux戦略でもIBMに大きく後れをとっており、当面苦戦が続く。(中野英嗣●取材/文)
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…