その他
なにやら元気なサイボウズ、システム販社と蜜月時代構築へ
2002/09/16 15:00
週刊BCN 2002年09月16日vol.957掲載
サイボウズ人気に乗じて基幹システムを売り込め!――。グループウェアのダウンロード直販で急成長したサイボウズが、システム販社を通じて新製品「ガルーン」を9月24日から販売する。大塚商会、内田洋行、リコーテクノシステムズ、日本ビジネスコンピューター(JBCC)、NEC、富士通などが担ぐ。ガルーンは従来製品と同様、グループウェアに過ぎないが、販社の期待は「単なるグループウェア」以上に高まっている。
新製品「ガルーン」にみるグループウェア戦略
■小規模企業向けで実績、他システムとの連携に難
正義の味方・アクションヒーローを思わせる筋肉質の「ボウズマン」が企業キャラクターのサイボウズ。10-30人のSOHO・零細企業を対象に、グループウェアのダウンロード直販で伸びてきた。
競合のノーツ/ドミノ(以下ノーツ)が、主に1000人以上の大企業を意識していたのとは対照的だ。サイボウズは、1997年10月から5年間で1万4000社、110万利用者を獲得。今年3月には東証マザーズから第2部へ昇格し、05年には480万人の利用者獲得を目指す。
人気の秘密は、軽い、簡単、経済的の「3K」にある。
サイボウズは誰でも自由にダウンロードでき、「社内に1人はいるだろう『パソコンに詳しいお助けヒーロー』がインストールし、全社で使えるよう動いてくれた」(サイボウズ・須賀宣社長)ために急成長した。「大衆」に支持されたサイボウズは、売り上げの半分をボウズマンを中心とした広告宣伝費に投じ、認知度を高め、さらに多くの利用者を獲得した。
だが、限界があった。「社内のお助ヒーロー」が個人の技量の範囲内でインストール作業をするため、複雑なシステムが組めない。
たとえば、社外からサイボウズに接続しようとしても、このためのファイアウォールやRAS(リモートアクセスサーバー)が立てられない。また、基幹系システムの情報を引き出そうとしても、サイボウズとのつなぎ込みができない。営業支援システム(SFA)や顧客情報管理(CRM)など、ほかの情報系システムとの連携ができない。サイボウズもサポートしない。
■ライバルはノーツ、販社との関係強化を図る
今回のガルーンは、この問題を克服するため、システム販社・ベンダーと手を組んだ。販社側は、「大衆に人気がある」サイボウズを切り口に、自社の基幹系システムの売り込みに弾みがつくと期待している。
ノーツ販社大手の大塚商会・マーケティング本部の山口雄二次長は、「ノーツは、グループウェアからナレッジマネジメント(知識の蓄積・管理)、コラボレーションウェア(共同作業支援システム)、文書管理システムなど、さまざまなコンセプトを取り入れたものの、現行バージョンに対する顧客の評判は、残念ながら極めてよくない。こうした発展の方向性とは別に、『3K』のサイボウズがあれよあれよという間に伸びた」と、サイボウズの勢いを認める。
肥大化して動きが鈍ったノーツに対して、身軽なサイボウズが間隙を突いて頭角を現した。さらに、サイボウズは今年6月、ノーツを扱うIBMとの提携に成功。ノーツ販社の大塚商会が、競合であるはずのサイボウズを担げる道が開けた。
「年内には、ノーツ最新バージョンの『6』が出る。ガルーンは、ノーツ6のエンジンと互換性があり、すでにノーツを導入している企業でも比較的簡単にガルーンを導入できる。しかし、ガルーンを導入しようという企業がノーツを使い続けるかどうかはまた別の問題。逆に、ノーツ6の方に人気が出るかもしれない」(山口次長)と、ノーツとガルーンの微妙な関係を指摘する。
折しも、来年1月末に、前バージョンのノーツ「4.x」のサポートが終わる。
それまでに、古いノーツ利用企業は最新バージョンのノーツに切り替えるか、あるいはガルーンなど他のグループウェアに乗り換えるかの選択を迫られる。
「基本的にノーツは1000人以上を意識したグループウェアであり、大手中心に導入が進む。大規模システムになれば、CGI言語を基盤としたガルーンではなく、J2EEや.NETなど最先端の技術を基盤に開発したノーツが有利。恐らくガルーンは500人以上1000人以下の企業に適合し、500人未満は、従来通りダウンロード販売型のサイボウズAGあたりが主流になるのではないか」(山口次長)と予測する。
内田洋行・情報システム事業部長の秦輝雄取締役は、「古いノーツ4.xを刷新するタイミングで、勢いがあるガルーンを売り込む。当社は、中堅・中小企業向け基幹系システムの構築には強いものの、情報系は弱い。ガルーンを足がかりに情報系システムの品揃え拡充に力を入れる」と、拡販に向け意気盛んだ。
内田洋行の基幹情報システム「スーパーカクテル」を担ぐパートナ販社は全国に100社ある。「基幹系はビジネスの中核であることには変わりないが、スーパーカクテルだけでは、商材の幅に限りがある。スーパーカクテル販社の商材の種類を増やすのに、ガルーンはちょうどいい。スーパーカクテルやほかのSFAやCRMの情報を引き出すポータル(窓口)として、ガルーンを活用する」と、自社パートナ支援にも役立たせる。
一方、直販のみの営業から、パートナー販売に踏み込んだサイボウズは、今後、大きな変革に迫られる。
ガルーンは、販社のマージンを確保するため、従来製品の価格より2倍以上高くした。従来製品は売り上げの半分を広告宣伝費に費やしていたが、ガルーンに限っては、売り上げの半分を販社に還元する。また、社内のお助けヒーローをイメージしたボウズマンは「客層と合わない」ことを理由に起用を取りやめた。
須賀社長は、「ドライな直販ベンダーでは、パートナーとの信頼関係は築けない。今回の提携は『兄弟の契り』と受け止め、技術セミナーや販売支援は当たり前で、年に数回の販社との懇親会、トップ販社の表彰など、しっかりしたお付き合いをさせていただきます」と、ボウズマンと別れ、パートナーと寝食共にする覚悟を決めた。
パートナーの力量を十分に活かし、ガルーンを大型商材に仕立てられるかが、サイボウズの今後を大きく左右する。
サイボウズ人気に乗じて基幹システムを売り込め!――。グループウェアのダウンロード直販で急成長したサイボウズが、システム販社を通じて新製品「ガルーン」を9月24日から販売する。大塚商会、内田洋行、リコーテクノシステムズ、日本ビジネスコンピューター(JBCC)、NEC、富士通などが担ぐ。ガルーンは従来製品と同様、グループウェアに過ぎないが、販社の期待は「単なるグループウェア」以上に高まっている。
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