その他
大規模システムでLinux採用 「富士通ならでは」を出せるか
2002/10/28 21:12
週刊BCN 2002年10月28日vol.963掲載
10月23日、富士通がLinuxを大規模基幹システムに採用していくとの発表を行った。これまでもLinuxをOSとして搭載したシステムを提供してきた富士通だが、「フロントシステムでの提供にとどまっていた」(杉田忠靖副社長)として、今回の発表以降、対応領域を順次拡大し、2006年には銀行の基幹システムといった大規模基幹システムにもLinuxを活用していくという。
杉田副社長は、「基幹システムでのLinuxで世界ナンバーワンを目指す」と宣言、06年時点ではLinux基幹システムの事業規模としてハードで1000億円、ソフトおよびサービスで2500億円、トータルで3500億円規模を目標とする。富士通としては、力の入った宣言である。しかし、疑問も残る。富士通が提供するプラットフォームは、ウィンドウズ、ソラリス(UNIX)、メインフレームの3つ。「このプラットフォームのどれを最優先するのかをこちらから言い切るのではなく、お客様個別に最適なものを勧める」と、どうも煮え切らない。もちろん、その理由もわかる。
前日、NECがオープンシステムで大規模基幹システムを構築する際のプラットフォーム製品コンセプト「VALUMO(バルモ)」を発表した。その際、記者から、「それだけオープンシステムで大規模基幹システムに適用できると自信をもってアピールするのであれば、メインフレームは一切止めると宣言した方がユーザーにとってもNECの戦略がわかりやすくなるのでは」という質問が飛んだ。
それに対しNECソリューションズの川村敏郎カンパニー副社長は、「企業の論理だけで、一方的に商品をやめるというのでは、信頼性のあるベンダーとはいえない」と切り返し、現在顧客を抱えるプラットフォームを簡単に捨てることはできないということを強調した。富士通としても、Linuxに注力するからソラリスをやめるといえば、顧客も納得しないだろうし、ベンダーとしての信頼性に欠けるという評価となってしまうだろう。当分は最優先がどれかは明確にしにくいかもしれない。
とくにオープンシステムの場合、3年後にどういう状況になっているのか、想像するのが難しいという事情もある。例えばソラリスの場合、3年前の99年には絶好調で、独立系ソフトウェアベンダーはソラリス用アプリケーションづくりに励んでいた。逆にLinuxの利用は非常に限定されていたが、今はその風向きも変わり、ソラリスよりもLinuxの方が勢いをもってしまった。富士通としても、風向きを見ながら最優先プラットフォームを見極めたいという思いもあるのだろう。
だが、そうした面を差し引いても、富士通のこの戦略は、すでにLinuxを大規模領域まで採用していくことを表明しているIBMと比べて、その違いがわかりにくい。先に発表したIBMの後追い戦略のように見えてしまうのだ。杉田副社長は、「IBMはメインフレーム上にLinuxも乗せるという戦略だが、当社はLinuxの性能を生かすLinux専用のシステムを開発していく。グローバルサーバーの領域までカバーしていくことを、世界で最初に発表したのは富士通だ」と、Linux採用の深さを強調するが、大きな戦略の方向は共通している。そのなかで、「富士通ならでは」がどんな部分に加味されていくのか。「世界で1番」を標榜するのであれば、その点を明確に示す必要があるだろう。(三浦優子●取材・文)
10月23日、富士通がLinuxを大規模基幹システムに採用していくとの発表を行った。これまでもLinuxをOSとして搭載したシステムを提供してきた富士通だが、「フロントシステムでの提供にとどまっていた」(杉田忠靖副社長)として、今回の発表以降、対応領域を順次拡大し、2006年には銀行の基幹システムといった大規模基幹システムにもLinuxを活用していくという。
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