その他
ソニー、松下電器産業の9月中間決算 増収増益、黒字転換へ
2002/11/04 21:12
週刊BCN 2002年11月04日vol.964掲載
ソニー、松下電器産業の2003年3月期(02年度)の9月中間決算が10月末、相次いで発表された。ソニーは連結の売上高3兆5115億円、営業利益1023億円。松下は同じく3兆5372億円、454億円。両社とも増収増益のうえ前年同期の赤字転落から「V字回復」し、黒字に返り咲いた。とくに松下の中村邦夫社長は決算発表会見の席上、「社会的に公約した今年度の連結営業利益1000億円を確保できる見通しができた」と宣言するなど、両社ともに復活の力強い一歩を踏み出した印象を与えた。しかし、そのイメージが鮮烈すぎたために、投資家には、ある種の「失望」が広がっているという。(村田知哉●取材/文)
「選択と集中」は道なかば
■低い営業利益率
複数の機関投資家が口にする、「市場に漂う失望感」。
その背景について、外資系証券会社幹部はこう解説する。
「投資家はいま、世界中で株を厳しく選別しており、営業利益率で6-8%を下回る銘柄は投資の対象にならない。しかし、日本を代表する業種の電機株にはその条件を満たすものがほとんどなく、今後も大幅改善は期待できない。そのうえ電機メーカーが黒字回復を強調すればするほど、自らの投資姿勢とのずれが明確になり、失望につながっていく」
確かに、ソニー、松下の連結営業利益率はそれぞれ2.9%、1.3%。現状は投資家が求める水準とはかけ離れているが、この両社と並んで日本を代表する優良企業であるトヨタ自動車、ホンダの今回の中間決算での営業利益率はそれぞれ9.3%、8.4%。「6-8%」は、けっして無理な数字ではない。少なくとも、大手民生電機各社も90年ごろまで6%を維持していたのだ。
こうした状況から、市場では、「もはやソニー、松下といえど、かつての競争力を失っている」(都銀の資金運用担当)と、低い評価につながっていく。
なぜ、こうなってしまったのか。
大手証券幹部は、明快に答える。
「もうからない事業部門を抱えているからですよ」
今回の中間決算。ソニーでは「音楽」と、広告子会社など「その他」の部門が、松下では産業機器などの「インダストリアル・イクイップメント」が赤字となっている。
これらに共通するのは、市場の縮小、もしくは海外メーカーの参入で価格低下が著しく、収益性が低い事業であることだ。
ソニーにおける音楽などコンテンツ事業とは、「ネットワークを通じてハードと結びつき、付加価値を生み出す存在」と説明される。しかし、ソニー幹部によれば、そのコンテンツ部門から、経営陣の意思に反して自活のために、「ハードをソニーだけに絞っていいのか。他社にも広く配信していきたい」との声が上がっているという。
そうした分野ごとに固有の理由はある。だが、いずれにせよ、音楽や産業機器などの採算が悪化しているのは、上で書いたような市場環境の変化に加え、世界中により強い競争相手が多数存在し、自社では、「非中核事業」でヒト、モノ、カネといった経営資源を集中できず、競争に負けているからにほかならない。
■不採算部門から手を引けない
両社とも、事業の「選択と集中」を標ぼうしているが、なぜ、すでに輝きが薄れた事業部門から手を引かないのか。
ある証券会社の調査部門幹部は嘆く。
「市場は高い利益率を求めるが、そうはいっても、むやみに事業撤退やクビ切りを求めているわけではない。雇用を守るためにも、ある会社の弱い事業部門を分割したり、その分野に強い他社に売却すればいい。しかし、ソニー、松下はじめ日本企業には、それができない。株主の力が弱い、大企業病による判断スピード低下、失敗を恐れリスクを取れないサラリーマン経営者…理由を挙げればキリがない」
典型的な例は、ソニー生命の売却交渉だ。「安藤国威社長が積極的に進めている」(ソニー幹部)というわりには、一向に進展していないようだ。
ともあれ、両社とも今回の決算で満足するわけにはいきそうにない。市場で高まる「事業分割・売却論」にどう答えるか。
そして、世界市場を席巻した強いソニー、松下の雄姿を再び見ることができるだろうか。
ソニー、松下電器産業の2003年3月期(02年度)の9月中間決算が10月末、相次いで発表された。ソニーは連結の売上高3兆5115億円、営業利益1023億円。松下は同じく3兆5372億円、454億円。両社とも増収増益のうえ前年同期の赤字転落から「V字回復」し、黒字に返り咲いた。とくに松下の中村邦夫社長は決算発表会見の席上、「社会的に公約した今年度の連結営業利益1000億円を確保できる見通しができた」と宣言するなど、両社ともに復活の力強い一歩を踏み出した印象を与えた。しかし、そのイメージが鮮烈すぎたために、投資家には、ある種の「失望」が広がっているという。(村田知哉●取材/文)
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