その他
風雲急を告げる「J2EE」対「.NET」 激化するウェブサービスの覇権争い
2002/11/18 21:12
週刊BCN 2002年11月18日vol.966掲載
J2EE陣営の巻き返しが始まった。マイクロソフトが.NET賛同に向けた多数派工作を着実に進めるなか、伊藤忠テクノサイエンスとサン・マイクロシステムズは、J2EE賛同社を増やすべく、ソフト開発ベンダーやシステム販社の囲い込みに本腰を入れ始めた。膨張を続ける.NET陣営を、J2EE陣営は押さえ込むことができるのか。(安藤章司●取材/文)
サンとマイクロソフトの代理戦争の様相
■.NET派かJ2EE派か、激しさ増す囲い込みの動き
システム販社やソフトベンダーを見れば、.NET派かJ2EE派か、ある程度見分けられる。例えば、.NET派を標榜する富士通ビジネスシステム(FJB)は、来年1月から販売を始める販売管理システム「ウェブASコレクション」を.NET準拠に仕立てた。しかし、J2EEを完全に捨てたかといえば、そうではない。
開発環境に詳しいFJBの清水吉治・取締役マーケティング本部副本部長兼経営企画室長は、「技術は必ず移り変わる。今は.NETで攻めるが、一方で、J2EEの良い点もあり、技術者のすべてを.NETに投入するわけではない」と、両にらみで臨む。
リスク分散の観点から、J2EEと.NETの2大潮流の双方に通じておくことは重要であり、この点でFJBの判断は正しい。だが、開発資金や人材などの資源は限られており、主力の業務ソフトを.NETとJ2EEの両方に対応させるのは難しい。この狭間で揺れるシステム販社やソフト開発ベンダーをいま、.NET、J2EE双方が自らの陣営に引き込もうと必死になっている。
いま囲い込めば、次世代技術の「ウェブサービス」の立ち上がりにタイミングに合致する。ウェブサービスとは、情報システムが生み出す各社サービスをXMLで有機的に結びつける技術。マイクロソフトの眞柄泰利取締役は、「.NETを一言で定義すれば、XMLウェブサービスのためのプラットフォームだ」と言い切る。
動きの早いマイクロソフトは、今年8月からソフト開発ベンダーを対象に、.NET対応ソフトの開発を促進する「.NETパートナープログラム・フォー・ISV」をすでに始めた。
一方、J2EE陣営の伊藤忠テクノサイエンス(CTC)とサン・マイクロシステムズは、システム販社を組織する「コラボレーティブ・コマース・アライアンス」と、全国のソフト開発ベンダーを組織する「ビジネス・コンポーネント・ファクトリー」の2つのプログラムを10月から開始した。
いずれもJ2EEによるウェブサービス開発を支援するのが目的であり、J2EE陣営によるこうした支援プログラムは、国内で初めての試みだ。
CTCの小林雅弘・e-ビジネス営業推進本部イードットコム営業推進部長は、「今回の支援プログラムは、明確に.NETの動きを封じ込める施策」と断言する。「支援プログラムを通じて、Javaの開発体制を強化することも重要だが、それよりも、ウェブサービス時代におけるJ2EEの優位性を改めて訴えたい。賛同企業を年内30社集める」と意気込む。
■開発環境の整備が急務 ビジネスへのメリットで様子見
マイクロソフトは、.NETの賛同企業はすでに60社に達し、来春.NETサーバーが登場するときには200社に増やす方針を打ち出しており、J2EE陣営との“陣取り合戦”は、ますます激化する様相を見せる。
マイクロソフトの基盤によるウェブサービスは、来春登場する.NETサーバで実現する。だが、マイクロソフトでは、開発者向けに、先行して開発ツールのビジュアルスタジオ.NETや、開発基盤である.NETフレームワークを提供することで、今の段階から早々とウェブサービス準拠のシステムづくりを促進する。
一方、J2EEでは、来年早々に規格がまとまるJ2EEバージョン1.4で、正式にウェブサービスへの対応を図る。だが、実際の規格がまとまる以前から、J2EE主要ベンダーはウェブサービスの開発環境を先行して提供する。
サン・マイクロシステムズの石原直樹・アイフォース推進統括部ディベロッパーリレーションズテクニカルマーケティングスペシャリストは、「今年6月から、サンとしては異例の早さでウェブサービスを開発するためのパッケージを製品化した」と.NETへの対抗姿勢を鮮明に出す。
日本BEAシステムズの伊藤敬・チーフテクニカルストラテジストは、「バージョン1.4で実装されるだろうとわかっている範囲内で、当社の主力アプリケーションサーバーの『ウェブロジック』に先行して採用した。J2EE準拠で開発した業務システムは、自動的にウェブサービスを提供できる仕組みをつくった」と、ウェブサービスへの親和性、移行性が高いことを強調する。
CTCの小林部長は、「次のトレンドはウェブサービスであることは間違いない。ウェブサービスは2004年に立ち上がり、07年にピークへ達するなど、いろいろな予測はあるが、正直なところ手探りの状態。しかし、サンとIBMだけが盛り上がっているのではなく、マイクロソフトをはじめ世界の主要ITプレーヤーがこぞってウェブサービスに肩入れしているところをみると、直感的に金脈を感じる」と話す。
システム販社やソフト開発ベンダーを囲い込む原動力がウェブサービスであるという点は、両陣営とも共通している。
一方、販社やソフトベンダーの立場から見れば、どちらの陣営に参画すればより多くの金脈に結びつくのかが、もっとも重要な関心事である。より多くの商談や案件を獲得できる仕組みを早くつくった陣営に勝機がある。
J2EE陣営の幹部は、「われわれの究極の使命は、マイクロソフトより多くの仕事を獲得して、J2EEに賛同するシステム販社やソフト開発ベンダーと共有することにある。この不景気で、とくに地方の賛同会社は、都市部の大手ベンダーや販社が獲ってきた案件への依存度が高まっている。万一、われわれがしくじれば、J2EE陣営全体にとって深刻な打撃となる」と危機感を露わにする。
次の大きなトレンド「ウェブサービス」に向けて、両陣営の戦いはいま始まったばかりだ。これまでのように、大規模システムはJ2EE陣営で、中小規模のシステムはマイクロソフトといった線引きが成立するのか、あるいは業界再編に発展するのか――。慎重に見極める必要がある。
J2EE陣営の巻き返しが始まった。マイクロソフトが.NET賛同に向けた多数派工作を着実に進めるなか、伊藤忠テクノサイエンスとサン・マイクロシステムズは、J2EE賛同社を増やすべく、ソフト開発ベンダーやシステム販社の囲い込みに本腰を入れ始めた。膨張を続ける.NET陣営を、J2EE陣営は押さえ込むことができるのか。(安藤章司●取材/文)
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