その他
大手ベンダー、ソフト開発で下請けコスト抑制に走る
2003/01/13 15:00
週刊BCN 2003年01月13日vol.973掲載
大手ITベンダーが、系列のソフト開発会社に発注した金額の10―15%を天引きしている実態が明らかになった。受注価格の下落のしわ寄せが、下請けのソフト会社に重くのしかかる構図だ。富士通系のソフト会社は、「富士通の経営悪化と時期を同じくして、すでに契約済みの開発案件でさえも、契約価格から一律10%の蕫天引き﨟が始まった」と話す。NEC系やIBM系でも、天引き率は異なっても、似たような状況にある。IT不況が長引くなか、大手ベンダーといえども背に腹は代えられない。ソフト開発会社も、単にベンダーからの仕事を待つだけでは採算確保は難しくなりつつある。
背に腹代えられず
富士通のソフト開発パートナーとして認められるには、全体売上に占める富士通関連の比率が6割を超えるのが条件だといわれる。だが、“天引き”施策により、ソフト会社からは「依存度が6割もあったら経営を圧迫するだけ。すでに富士通が赤字体質になってから2年間も耐えてきた。今年も天引きが続けば、収益構造の転換で乗り切るしかない」と、実力のある企業から依存度低減を図る動きが出ている。
下請けソフト会社への圧力を強めているのは、何も富士通だけではない。NEC系のソフト会社の幹部は、「下請け体質のままだと、NECでも、IBMでも、ソフト開発の契約価格の請求時に10%前後の天引きを要求される。たとえば、1000万円で開発を請け負っても、入金時には900万円しかない。もともと見積価格が低く、利幅を7-8%程度しか織り込んでいないケースならば、完全に足が出る。請求金額通りの入金を求めると、次の受注が難しくなる」と嘆く。
見積価格の多くは、発注者であるベンダー側が、ソフト会社の技術力やコストを独自の基準で算定して提示する場合が多い。営業力を持たない開発会社が、この見積金額に対して異議を申し立てられる材料は持ち合わせていない。
ソフト会社だけではない。ある中堅システム販社のトップは、「大手ブランドを掲げるベンダー本体が、数千万円の小型案件を取りに来る。通常は大手ベンダーが提示する価格より、われわれ中小のシステムインテグレータが提示する価格の方が安いために案件が獲れる。だが今は、大手ベンダーが中小と同等の低価格を提示するため、“身内”であるはずの系列ベンダー本体の営業部隊に、案件を取られる。ベンダーは安い価格を提示した分、系列の下請け会社の開発費を天引する」と明かす。
下請けの中でも、天引きで困る企業と、そうでない企業の両極化が進んでいるようだ。つまり、営業力がないとベンダーから足下を見られ天引きに遭う。自ら仕事を獲れるソフト会社は、ベンダーのお荷物にならず収益を伸ばせる。
あるベンダー幹部は、「国産ベンダーが外資に勝てるのは全国にビジネスパートナーがいるからだ」と語る。確かにこれは事実だろう。だが一方で、仕事が獲れず、生産性が低いソフト会社に見切りをつけ、ベンダー自身の収益を高めなければならない台所事情もある。背に腹は代えられない。
同時にソフト会社も自衛策に乗り出す。まず第1に、1つのベンダーからの受注を20%以下に抑える。第2には、下請け体質から脱却する。どんなに小さな会社でも営業担当者を置き、ベンダーの営業に同行させ、システム提案の段階から主導権確保に力を入れ、天引きを事前に阻止しようという考え方だ。さらに第3には、直接のエンドユーザーの数を増やす。これは、ベンダーからの受注を待つのではなく、自らエンドユーザーを開拓しリスク分散につなげる策だ。
ソフト開発の下請け、孫請けの体質が問題視されて久しい。ベンダー側も、営業力のあるインテグレータの存在価値は認めても、単純な下請けソフト会社の面倒をみるには余裕がなくなっている。ソフト各社は、ベンダーのコスト削減競争に巻き込まれぬよう、自衛策を打ち立て苦境を乗り切る時期を迎えている。
大手ITベンダーが、系列のソフト開発会社に発注した金額の10―15%を天引きしている実態が明らかになった。受注価格の下落のしわ寄せが、下請けのソフト会社に重くのしかかる構図だ。富士通系のソフト会社は、「富士通の経営悪化と時期を同じくして、すでに契約済みの開発案件でさえも、契約価格から一律10%の蕫天引き﨟が始まった」と話す。NEC系やIBM系でも、天引き率は異なっても、似たような状況にある。IT不況が長引くなか、大手ベンダーといえども背に腹は代えられない。ソフト開発会社も、単にベンダーからの仕事を待つだけでは採算確保は難しくなりつつある。
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