その他
“役所はサービスカンパニー” 各ベンダーが狙う次のビジネスとは
2003/02/24 15:00
週刊BCN 2003年02月24日vol.979掲載
電子自治体を突き詰めると、「サービスカンパニー」としての役所の姿が見える――。“平成の大合併”で多くの自治体が基幹系システムの再構築に追われるなか、次のビジネスである“サービス”面に、早くもシステムプロバイダの商談の矛先が向かっている。(安藤章司●取材/文)
自治体合併をめぐる商談
■ポイントは「合併、電子化、BPR」
自治体の究極の目的は、市民サービスにある。市町村合併と電子自治体化への取り組みは、市民サービス向上への初歩的な段階にすぎない。
だが、現状は、全国に3300ある自治体が1000に向けて合併・集約していくなかで、商談規模が大きい基幹系システムをどう押さえるかとベンダーは頭を悩ませる。
富士通の羽鳥誠一郎・公共営業本部e-Japan推進統括部長は、「当面のシステム提案のポイントは、合併と電子化とBPR(業務改革)」だと話す。
まずは、この3つが揃わなければ、本来の目的であるはずの市民サービスまで漕ぎ着けないからだ。
しかし、基幹系システムの電子化だけでは、市民サービスの向上には結びつかない。民間企業で例えるなら、ちょうどERP(統合基幹システム)だけで収益を得ようというもの。実際の商品やサービスが不在では、どんなに素晴らしいERPを導入しても顧客の満足を上げられない。
合併にともなう基幹系システムの再構築が終わった次の段階では、①電子申請や文書管理といった情報系システムを拡充し、これを2005年を目途に完了する、②BPRを経て、自治体のサービスメニューそのものの見直しをする、③有料化に値する、これまでになかった質の高い付加価値サービスを生み出す――。
自治体が提供する有料サービスは、例えば、住民票の発行手数料からはじまり、学校教育や医療サービス、上下水道、公園整備などさまざまだ。自治体は、市民の需要を調査・把握したうえで、具体的なサービスを有料で提供する。
この市民サービスの企画から開発、提供に至るまで一連の流れを、電子自治体という情報システムの上でどう実現すべきかが今後の大きな課題である。
■市民サービス系の案件に期待
今は商談の中心となっている基幹系システムだが、合併が終われば、いずれ同システムの価値は相対的に下がると予測するベンダーもいる。
日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の蔵田憲治・公共システム事業部e-Japanソリューション事業部長は、「自治体の数は半減するが、単純に計算して1自治体あたりの市民の数は2倍になる。市民サービスの拡充という本来の目的に照らし合わせれば、市民サービスに直接結びつく新しいシステムの価値が高まってくるのが自然な流れ。今は自治体ビジネスのうち基幹系システムの占める比率が8-9割かも知れないが、いずれ市民サービス系の部分が基幹系を上回る」と話す。
戦略的に動くベンダーのなかには、基幹系を押さえたうえで、さらに05年以降の市民サービスの拡充という究極目標の提案をすべく、今の段階から準備を進めている。
「具体的な提案内容は明かせないが、サービスカンパニーとしての役所の姿は、もう見えている。BPRを経て、市民のために何をすべきかを世界の自治体の案件事例をベースとして積極的に提案する」(蔵田事業部長)と意気込む。
付加価値のある市民サービスを提供するには、今のように大手ベンダーだけでは役不足だ。コンテンツベンダーやサービスベンダーなど、今後役所はさまざまなビジネスパートナーと組み、最新の市民サービスを構築しなければならない。同時に、IT業界も「電算室の予算取り」から、市民サービスの支援ビジネスに切り替えるタイミングに来ている。
電子自治体を突き詰めると、「サービスカンパニー」としての役所の姿が見える――。“平成の大合併”で多くの自治体が基幹系システムの再構築に追われるなか、次のビジネスである“サービス”面に、早くもシステムプロバイダの商談の矛先が向かっている。(安藤章司●取材/文)
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