その他
ITベンダー8社、「itSMF Japan」を設立 マイクロソフト、運用管理の標準化を先導
2003/05/19 15:00
週刊BCN 2003年05月19日vol.990掲載
マイクロソフトを中心とする8社により、「itSMF Japan」の立ち上げが先月発表された。itSMFは、システム運用管理の標準基準「ITIL」を推進する国際団体。体系的な運用管理手法をもたず、高いコストを支払っている日本のユーザーに対して、運用管理のベストプラクティスを推奨していく。その背景でマイクロソフトは、ITILに準拠した独自の運用管理体系「MOF」の本格的な立ち上げを狙う。ウィンドウズがミッションクリティカルな分野に浸透してくるに従い、運用管理向けのソフトやサービスをもたない同社の弱点が露わになってきた。大手コンピュータベンダーに対抗してエンタープライズ市場で打ち勝っていくには、MOFの成否がポイントになる。(坂口正憲(ジャーナリスト)●取材/文)
合理的な手法でコスト削減目指す
■運用管理のガイドライン「ITIL」
itSMF(ITサービスマネジメントフォーラム)は英国を本部として1991年に設立。全世界でシステム運用管理基準の標準化に努めている。その枠組となっているのがITIL(アイティル=ITインフラストラクチャー・ライブラリー)と呼ばれる基準だ。日本では馴染みが薄いが、運用管理のベストプラクティスを集めたガイドラインとして事実上、運用管理の業界標準の地位を占める。
IBMの「チボリ」、ヒューレット・パッカード(HP)の「オープンビュー」など有名なシステム管理ソフトは、ほとんどがITILに準拠する。欧米の大手企業は自らもITILの考え方を導入し、運用管理コスト削減に努める。ITILの導入で運用管理のベストプラクティスを実践、カンや経験に頼らず、合理的な視点から運用管理手法を見直せるという。
そのITILの日本での啓蒙普及を図るitSMF Japanは、NTTコミュニケーションズやNEC、富士通、日立製作所など大手ITベンダーを中心とする8社によって設立された。「システム稼働後の運用管理に関しては体力任せで、体系的な知識や基準がない」(設立参加企業の幹部)日本のユーザーに向けて、運用管理の重要性を啓蒙していく。
実際、日本のユーザーの運用管理手法といえば依然、人を張り付かせた、その場しのぎの対処療法的なものが多いと見られる。「IT予算の半分以上を運用管理に食われている企業が多い。そのため新規IT投資に回す予算が削られ、競争力強化につながる前向きなIT投資ができない」(同)。
その意味でも、IT予算の大枠が抑制されている現在、ユーザーが運用管理のムダを点検し、ITILをベースに合理的な運用管理体制に切り替えていくのは意味があるだろう。
■MOFとの相乗効果狙う
しかし、今回のitSMF Japan設立には、特定のベンダーの思惑もある。実は、設立を強力に先導したのはマイクロソフト(日本法人)だった。同社がitSMF本部に掛け合って日本支部設立を認めさせ、その後、NECや富士通に声をかけたのが事実のようだ。
なぜ、マイクロソフトはitSMF設立に自ら動いたのか。同社は今夏からウィンドウズ環境に特化した運用管理フレームワーク「マイクロソフト オペレーション フレームワーク(MOF)」のコンサルティングサービスを本格的に立ち上げる。このMOFもITILベースの基準である。つまり、itSMF Japanの啓蒙活動とMOFの営業活動の相乗効果を狙っているのだ。
マイクロソフトが運用管理に執着するのには理由がある。大企業のミッションクリティカルなシステムに、ウィンドウズ製品が採用されるケースが増えている。そこで問題となっているのが、運用管理に対する支援体制だ。「マイクロソフトには、チボリやオープンビューのようなシステム管理ソフトがない。これがユーザーの不満となっている。かといって、コンピュータベンダーのように人海戦術で運用管理を支援するサービス体制もない」(同社関係者)。
そこでマイクロソフトは、コンサルティングベースでユーザーの運用管理業務の合理化を支援する考えだ。そのためには、ITILに準拠したMOFの“正当性”を、公的な機関の啓蒙活動で裏打ちする必要があったようだ。
マイクロソフトを中心とする8社により、「itSMF Japan」の立ち上げが先月発表された。itSMFは、システム運用管理の標準基準「ITIL」を推進する国際団体。体系的な運用管理手法をもたず、高いコストを支払っている日本のユーザーに対して、運用管理のベストプラクティスを推奨していく。その背景でマイクロソフトは、ITILに準拠した独自の運用管理体系「MOF」の本格的な立ち上げを狙う。ウィンドウズがミッションクリティカルな分野に浸透してくるに従い、運用管理向けのソフトやサービスをもたない同社の弱点が露わになってきた。大手コンピュータベンダーに対抗してエンタープライズ市場で打ち勝っていくには、MOFの成否がポイントになる。(坂口正憲(ジャーナリスト)●取材/文)
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