その他
利用頻度高まるネットショップ 商品数の増加で新規需要を開拓
2003/05/19 15:00
週刊BCN 2003年05月19日vol.990掲載
家電量販店およびパソコン専門店などがネットショップの取り扱い商品を増やすことに積極的だ。ヨドバシカメラは、商品数を近く5倍以上に引き上げる。ソフマップは、パソコンおよび関連機器以外の品揃えを強化。ムラウチでは、ソフト関連の商品数を増やす。ADSLをはじめとするブロードバンドの普及によるネットユーザーの増加にともない、ネットショップで購入する顧客層の裾野が広がりつつある。今後は、実店舗と同様にネットショップを利用する顧客がさらに増える可能性が高い。(佐相彰彦●取材/文)
実店舗並みの品揃えがカギ
■ブロードバンドの普及にともない、アクセス状況や売れ筋商品に変化
ヨドバシカメラは2002年度(03年1月期)において、ネットショップ「ヨドバシ・ドット・コム」の売上高が前年度比約56%増の約150億円に達した。ムラウチは、02年度(03年3月期)における「murauchi.com」の売上高が同10.5%増の35億円。ECビジネスに注力する量販店は、ネットショップの売上高が順調に伸びている。
両社の好調ぶりは、ADSLなどブローバンド加入者の増加にともない顧客の裾野が広がり、新規顧客を開拓できたことが大きい。
ヨドバシカメラの吉澤勉・ヨドバシ・ドット・コム部長は、「全体の購入者のうち新規顧客は1日平均で23-25%を占めている」と自信をみせており、「これまで男性が70%、女性が30%で推移していた比率は、昨年度に男性が60%、女性が40%と変化した。年齢層は、30-40歳代が大半だが、60-70歳代の購入も徐々に増え、顧客の裾野が広がりつつある」としている。
アクセスについては、「平日と休日で分けた場合、アクセス数や購入の仕方に大きな変化が出てきている」(吉澤部長)という。サイトのアクセス数は、1日平均で120万ページビュー。
「これまでは、平日の夜にアクセス数が集中し、購入者数も多かった。しかし、ADSLなどブロードバンド加入者が増えるにしたがい、今では休日のほうが平日よりもアクセス数が2割程度高い。また、購入者数は休日のほうが3割程度多い」(吉澤部長)という。
購入する商品についても、「記録型DVDや外付けHDD、ビデオキャプチャボードなど、パソコン本体のストレージや映像関連機能を強化する周辺機器が売れ筋となっている。また、これらの商品とあわせて、食器洗い機やドライヤーなど家電機器を購入するケースが増えている。家族が休日に実店舗に訪れるのと同じ意識で、ネットショップで商品を購入しているのではないか」(吉澤部長)と分析する。
現在の商品数は5-6万点。そのため、購入したい商品を適確に探し出す検索機能の強化を図っている。「初めてサイトを訪れた顧客が一番嫌うのは、購入したい商品が見つからないこと。検索機能が充実していれば、顧客が何度もサイトを訪れるなど、リピート率の向上につながる」(吉澤部長)と強調する。
ムラウチの戸田直幸・執行役員EC営業本部長は、「購入者は、店舗を構える八王子市(東京都)が1割程度。サイトでは八王子市以外の地域の顧客を取り込んでいる。しかも、これまではパソコンおよび関連機器が売上高の大半を占めていたが、昨年度はAV(音響・映像)機器の売れ行きが好調だった」と、新規需要を着実に獲得している。
商品別の売上比率は、AV機器とデジタルカメラが21%と最も高く、パソコンおよび関連機器が15%。ほかには、DVDソフトが14%、家電機器が12%などとなっている。
■取扱い商品数の拡大に動く、新商材の販売にチャレンジ
一方、「ソフマップ・ドットコム」を提供するソフマップは、昨年度におけるECビジネスの売上高が前年度比17.9%減の87億円だった。
松田信行・経営企画部広報・IR室長は、「パソコン本体の購買単価が下落したことが、売上高の減少に大きな影響を与えた」と話す。
ネットビジネスの市況については、「消費者がサイトで購入することは、普通の状況になっている。この傾向はますます強まっていくだろう。そのため、さまざまな商品の販売が重要になる」(松田室長)と語る。
そのうえで、「今年度はデジタル機器以外の品揃えを増やしていく」(松田室長)としており、売上増の巻き返しを図る。新しく販売する商品については今後詰める予定だ。
加えて、同社の得意分野である中古パソコンの拡販にも力を入れる。中古パソコンの買い取り体制などの仕組みを一層整え、新品と中古の連携を強化していく。
今年度の売上高は、同21.8%増の106億円と01年度並みに回復することを見込んでおり、「収益性が高い商品を拡販することになるため、利益は01年度よりも高くなる」(松田室長)とみている。
昨年度好調だったヨドバシカメラとムラウチでも積極的に商品数を増している。
ヨドバシカメラでは、「04年中に、商品数を現状の5倍強にあたる約30万点に増やす」(吉澤部長)構え。パソコン本体や白物家電、アクセサリー品などの品揃えを強化する。今年度は、「売上高を200億円規模に引き上げる」(吉澤部長)と鼻息が荒い。
ムラウチでも、現在の商品数である約3万点を、「今年7月までに15万点に引き上げる」(戸田EC営業本部長)としている。
増やす商品については、同社が一層売れ行きが高まるとみているDVDソフトが中心。品揃えが比較的少ない組立パソコン用パーツなどの充実も図っていく。今年度は、「60億円の売上高を目指す」(戸田EC営業本部長)方針だ。
商品数を増やすのは、ネットショップを実店舗と同等に位置づけて、サイトを訪れる消費者の拡大につなげることを前提としている。
ヨドバシカメラの吉澤部長は、「商品の選択肢が多ければ、さまざまな消費者のニーズに対応できる。ネットショップで購入しようと、初めてサイトに訪れた顧客に対しても付加価値を提供できる」と話す。
ソフマップの松田室長は、「新しい商品を掲載して、人気が高ければ実店舗でも販売するという試験的な取り組みが図れる」としている。
ムラウチの戸田EC営業部長も、「さまざまな新しい商品を追加することにチャレンジできる。『ネットショップならでは』の商品は重要だが、『ネットショップだから』といって商品を絞り込むことはECビジネス拡大につながらない」と指摘する。
現在では、ネットショップで販売する商品数を絞り込んでいるケースが多い。近い将来的、実店舗並みに品揃えを増やすことが新規顧客を開拓するうえでの重要戦略となりそうだ。
家電量販店およびパソコン専門店などがネットショップの取り扱い商品を増やすことに積極的だ。ヨドバシカメラは、商品数を近く5倍以上に引き上げる。ソフマップは、パソコンおよび関連機器以外の品揃えを強化。ムラウチでは、ソフト関連の商品数を増やす。ADSLをはじめとするブロードバンドの普及によるネットユーザーの増加にともない、ネットショップで購入する顧客層の裾野が広がりつつある。今後は、実店舗と同様にネットショップを利用する顧客がさらに増える可能性が高い。(佐相彰彦●取材/文)
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