その他
au、3か月連続で月間首位に 携帯電話純増数でドコモ上回る
2003/07/14 15:00
週刊BCN 2003年07月14日vol.998掲載
KDDIの携帯電話「au」が、初めて3か月連続(4-6月)で月間首位に立った。電気通信事業者協会によると、新規契約数から解約数を引いた純増数で、auが業界首位に君臨するNTTドコモを上回ったのだ。ドコモとJ-フォンを加えた大手3社の純増数におけるauの比率は、4月と5月にそれぞれ37.3%、42.3%と増加傾向が顕著だ。それに対してドコモは、それぞれ32.0%、26.9%と、逆に低下している。そのうえ、ドコモは5月、1996年1月以来の低い数字でJ-フォンにも抜かれ、3位に転落した。シェア全体でも、ドコモには伸び悩みが見られる。こうした状況にKDDI社内は沸き返り、ドコモ社内では危機感が漂っているという。両社の差を生み出したのは、何だったのか。(村田知哉(ジャーナリスト)●取材/文)
両雄の最終決戦は近い?
■「パケット割引」で伸びるau、「着うた」サービスも人気
この1年間、今年3月からのauの伸びが目立っている。3月は入学や進学、就職による需要だが、4月と5月は、昨年11月に開始されたデータ通信料金が3分の1になるサービス「パケット割引(パケ割)」のおかげという。
「昨年4月に始まった『CDMA2000 1X』は、『cdmaOne』に比べ受信時でデータ通信速度が2倍以上の144kbpsになるのが売り。高速通信を前提としたサービスを使う頻度が高まるに従い、利用者の側には『通信料金を安くして欲しい』という欲求が生まれていた。パケ割は、うまくこの好機を捕らえた」(KDDI関係者)。
高速通信向けサービスはこれまで、どれも成功したとはいえない状態だった。しかし、歌声入りの楽曲を取り込んで着信メロディーにできるサービス「着うた」が昨年12月の開始から人気を集め、すでにダウンロードが1000万件を超えたと見られている。
大手レコード会社関係者は、こう嘆息する。「わが社が数年前からやっている音楽配信事業の累計ダウンロード数を、3日間で超えられてしまった」。
あるドコモ社員はかつて、auのパケ割について、「音声通話が減っている今、収益の源であるデータ通信で割り引きするなんて、自分の首を絞めるようなもの」と冷ややかに見ていた。
だが、実はau事業のARPU(利用者1人当たりの料金収入)は下がっていない。02年度のARPUは、パケ割導入前の昨年7-9月期で1130円、導入後の今年1-3月期で1310円と増えているのだ。
KDDI幹部は、「今もARPUは増加傾向にある。そのうえ、純増数でドコモを上回った。これは、ドコモなどライバルから、データ通信を頻繁に使う優良顧客を奪っているからだと考えている」と胸を張る。
ドコモ社員も、これを否定しない。「わが社の純増は、初めて携帯電話を使う層が中心ではないか。優良顧客が流出しているのに…」。
どういうことか。電気通信事業者協会の調べによると、ドコモの純増数が大きく膨らんだのは、昨年6-7月、昨年12月、今年3月の3回。それぞれ、「504」シリーズの登場、写真機能付き新端末の発売、入学・就職などの需要によるものと分析されている。なかでも3月の純増、すなわち入学・就職によって初めて携帯電話をもつ人たちが圧倒的に多いことが、この発言の背景にある。
そして、4月と5月に伸び悩んだ理由について、パケ割のあおりを食っただけではなく、新しい「505」シリーズの買い控えも一因と語られている。
「505の発売予定は当初、5月だったが、1か月も前の4月上旬に公表したうえに、6月末になっても6機種のうち3機種しか出せず、買い控え期間をかなり長くしてしまった。毎回好調の松下電器産業製がいまだに『発売日未定』だから、今回の505の先走った記者発表はまずかった」(業界関係者)。
ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「SO505i」が発売初日に4万台を完売したとされるだけに、このつまずきは痛い。
■計画通りに伸びないFOMA、高精細画面で逆転狙うドコモ
FOMAは計画通りに伸びていない。昨年度中の普及目標は当初138万台だったが、32万台に下方修正。販売実績は、それをやっと超えただけ。そのうえ、「FOMAで初めて実現できるはずだった高機能が、みんな505に搭載されている」(同)。
505の“売り”は横240×縦320ドットの高精細なQVGA表示や、Java対応アプリケーション「iアプリ」の記憶容量の大きさなどだ。特に後者は、505とFOMAでまるっきり同じになっている。FOMAが魅力的に映りようもない。
ただ、ドコモは水面下で「FOMAテコ入れ」を進めていた。その1つが、組織改編。FOMAは当初、新製品の企画から販売促進まで一括して「FOMA営業推進室」が主に担当したが、今後は製品企画がiモードビジネス部、販売促進が営業本部にそれぞれ移る。
KDDI関係者が声を低める。
「iモードビジネス部といえば、ドコモ躍進を中心となって支えたiモードの立役者の1人、夏野剛氏が部長をしている。実は、ヒット商品を次々と送り出す夏野氏がFOMA担当になるのをKDDIはいちばん恐れていた」
夏野部長は自信にあふれている。6月上旬の記者会見の席上、「次のFOMAでミリオンヒットを狙う」と公言したのだ。夏野部長に秘策はあるのか。ある業界関係者は、「505でFOMA並み高機能を実現したことにヒントがある」として、次の2点を挙げる。
「まず、高精細画面とiアプリ大容量化のために、利用者のデータ通信料金の負担が大きくなる。FOMAは505より高速通信ができ、料金も安くあがるので、利用者はFOMAに移行する。さらに、QVGA液晶などはまだ高価な部品だが、FOMAよりもケタ違いに大きな販売台数が見込める505で採用することによって、製造原価を下げられる。これで、低価格のFOMA新製品が開発できる」。
この見方が正しいとしても、KDDIはすでに対抗策を考えている。それが、受信時で500-600kbpsのデータ通信ができ、さらに料金も下げられる技術「EV-DO」だ。KDDI幹部の口から、「EV-DOなら通信速度がFOMAの数倍に上がり、FOMAとの差別化がさらに進む。これでドコモのシェアを抜ける」と、「逆転宣言」まで飛び出した。
6月の純増数では、auとドコモの差は2万2500台だ。前出の業界関係者は、こう見る。
「『504効果』による昨年6月の両社の差は13万6000台だから、改めてauの強さを感じる。このぶんなら、8月あたりにauが再逆転するのではないか。全体シェアでのauの『逆転シナリオ』もぐっと現実味を増したと言える」
両雄の最終決戦は近そうだ。
KDDIの携帯電話「au」が、初めて3か月連続(4-6月)で月間首位に立った。電気通信事業者協会によると、新規契約数から解約数を引いた純増数で、auが業界首位に君臨するNTTドコモを上回ったのだ。ドコモとJ-フォンを加えた大手3社の純増数におけるauの比率は、4月と5月にそれぞれ37.3%、42.3%と増加傾向が顕著だ。それに対してドコモは、それぞれ32.0%、26.9%と、逆に低下している。そのうえ、ドコモは5月、1996年1月以来の低い数字でJ-フォンにも抜かれ、3位に転落した。シェア全体でも、ドコモには伸び悩みが見られる。こうした状況にKDDI社内は沸き返り、ドコモ社内では危機感が漂っているという。両社の差を生み出したのは、何だったのか。(村田知哉(ジャーナリスト)●取材/文)
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