その他
富士通、復活へ大規模組織改革 ソフト・サービス事業をテコ入れ
2003/07/21 21:12
週刊BCN 2003年07月21日vol.999掲載
富士通は生き返るか――。6月24日、秋草直之社長(現会長)に代わり経営トップに就任した黒川博昭社長は、「営業力の強化」を富士通復活の第一歩に掲げ、そのための新体制をぶち上げた。今回の組織改革では、主力のソフト・サービス事業の強化をメインに、取締役ではない常務以下の経営執行役を一気に32人も置いて、事業本部トップの経営判断が現場に即反映される指揮系統の構築を目論んだ。さらに2か月後には、富士通本体とソフト・サービス分野の地域子会社が一体感を強めるための改革など、グループ会社を対象にした大規模な再編も具体化する見通しだ。(谷畑良胤●取材/文)
地域子会社の再編も爼上に
■スピード経営の再構築へ、業種に特化した営業本部新設
富士通は2002年3月期から2期連続で最終赤字を計上。事業構造の変革は急務になっていた。単純に景気後退という理由ばかりではなく、顧客の「富士通離れ」も一部では起きていたという。
7月8日の記者会見で黒川社長は、「富士通はスピード感を失った」と、スピード経営の再構築を強調した。だが、失ったのはスピード感だけではなかった。続けて黒川社長が就任あいさつで強調したことは、「信頼と創造」であり、「お客様起点」というフレーズも現状の富士通に欠けていたという認識の表れだろう。
黒川社長は、経営上の課題を「事業収益力の向上」と「脆弱な財務体質の健全化」、「事業構造の継続的な見直し」の3つに集約した。このうち、事業収益力の向上のためにまず着手すべきは、組織の大改革になる。
6月24日にスタートした黒川社長率いる新体制で、まず重点的に組織改革が実施されたのは、グループ売上高の約45%(03年3月期実績)を占める中核組織「ソフト・サービス事業推進本部」だ。従来の「ソリューション事業本部」と「システムインテグレーション事業本部」の枠組みを業種別に再編。これまで、プロダクト別に事業展開していた2つの事業本部は、産業・流通、金融、公共、通信ユーティリティなど8つの業種別本部に移行した。
「営業はガツガツ仕事を取ってくる狩猟民族。これに対してSE(システムエンジニア)はコツコツ開発する農耕民族」(黒川社長)と文化も習慣も違う“2つの民族”を同じ社会に共存させたのがポイント。その裏には、「SEに必要なのは顧客と同様の業務ノウハウ。顧客に直に接触していなければノウハウはできない」と、自らの長いSE経験に基づくポリシーがある。
それぞれの業種に特化した専属の営業本部を新設したのも、黒川社長が経営方針に掲げる「お客様起点」、「スピード」、「シンプル」を実現したものだ。つまり、収益力の向上にまず売上拡大があり、そのために顧客へ近づくことを掲げたわけだ。
6業種別ソリューション分野以外では、インフラサービス分野の2本部を3つに再編し、「アウトソーシング事業本部」を新設し、同社が提供するネットワークサービス「FENICS(フェニックス)」をアウトソーシング事業を拡大するための基盤として“成長軌道”に乗せることを計画している。
これら「ソフト・サービス事業推進本部」の業務ノウハウや開発資源を本社で統括するため、各部門から精鋭約200人を集め、同推進本部の横断的な組織として「ソフト・サービス共通技術センター」を新設したのも、同社のシステムインテグレーション子会社など、ソフト・サービス関連のグループ会社にある先進技術を効果的に活用するために集約する狙いだ。
開発でも「スピード」を上げ、それを収益につなげていく狙いなのだろう。すでに、製造や流通部門では、同センターへの技術集約が図られており、今後、この枠組みを同推進本部全体に展開していく考えだ。
■SEリソースを集約、グループ企業も再編か
今後、最も注目されるのが2か月後にまとまるグループ全体の事業体制のリニューアル。富士通本体と国内外にあるソフト・サービス子会社57社との役割分担やソフト部品工場の活用など、全体の再構築プランも示されることになるだろう。
特に地方のSE会社は、今後2年弱はe-Japan関連ビジネスの拡大で、「このままでは全国的にSEが足りなくなる」(富士通グループの地方システムエンジニアリング会社社長)という恐れもあるが、「e-Japan以後は、景気が回復して来ない限り、逆にSEが余る状況になる」(同)とさらに深刻な事態が待っている。
それを回避するためにも、SEリソースの分散化から集約化は不可欠になる。手始めに10月には、ソリューションサービス拠点が東京・蒲田(大田区)に完成予定で、東京・恵比寿(渋谷区)と大井町(品川区)に分散したソフト・サービス部門も新拠点に集結し、営業とSE合わせて3000人規模の一大拠点が立ち上がる。
さらに、今回の組織再編にともない、グループ子会社57社の統廃合・再編も視野に入ってくる。ある幹部によると、最近は県境を越えたシステム構築の受注も増えていることから、「秋口にはまず、各都道府県に散らばる27社のシステムエンジニアリング関連地域会社が、大幅に再編される」予定だという。
残るは上場子会社などのグループ企業だが、システムインテグレーション事業担当者によれば、「グループ会社の集約化方針は決定していない。だが、業務・組織改革は途上で、今後は成長分野に特化し、早いジャッジとスピード感のある制度と組織の仕組みが検討される」と、再編の方向性を匂わせている。
富士通の02年3月期の連結業績は、売上高4兆6200億円(前期比7.8%減)、営業損益では赤字から1000億円の黒字に転換、経常損益も124億円の黒字となった。だが、最終損失は2600億円圧縮したものの未だ1200億円の赤字のままだ。04年3月期は売上高4兆8000億円、経常利益600億円、最終利益300億円を目指す。黒川社長は、「今年度で有利子負債総額約1兆8000億円を3000億円圧縮する」ことを掲げている。その実現のためにも、営業力を強化した新体制の成功がカギになる。
富士通は生き返るか――。6月24日、秋草直之社長(現会長)に代わり経営トップに就任した黒川博昭社長は、「営業力の強化」を富士通復活の第一歩に掲げ、そのための新体制をぶち上げた。今回の組織改革では、主力のソフト・サービス事業の強化をメインに、取締役ではない常務以下の経営執行役を一気に32人も置いて、事業本部トップの経営判断が現場に即反映される指揮系統の構築を目論んだ。さらに2か月後には、富士通本体とソフト・サービス分野の地域子会社が一体感を強めるための改革など、グループ会社を対象にした大規模な再編も具体化する見通しだ。(谷畑良胤●取材/文)
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