企業、国民生活の中核にブロードバンド

韓国では、情報通信部が2002年4月に策定した情報化促進基本計画「e-KOREA VISION 2006」をベースに国内のIT化に取り組んでいる。
行政サービスについては、06年までに、部署別のオンラインサービスを統合して提供する「電子政府単一窓口サービス」を段階的に拡大。各種手続きをすべてオンライン化していくほか、職員のモバイル機器を活用した業務環境作りを徹底することによるモバイル政府の確立や、デジタル公共サービスの高度化を目指す。
電子政府の企画立案は、情報通信部傘下で国家情報化の中枢を担う機関、韓国電算院が担当している。韓国電算院のシン・サンチョル団長は、「韓国民は、『誰よりも早く行動したい』というのが特徴。この気質がブロードバンド普及率を高める要因となった。これからは過疎地域のデジタルデバイド(情報格差)をなくすことが重要」と、基本計画の意図について語る。
国民のIT化については、06年までにインターネットの利用者を全人口の90%まで拡大するため、ブロードバンド環境を一層整備する。環境整備により教育面でも、(1)生涯学習への参加率を現状の17%から、OECD(経済協力開発機構)水準の30%まで引き上げる、(2)公立学校においてITインフラを整えて20%以上の授業でITを活用する――ことなどを掲げている。
一方、EC(電子商取引)の現状は、「インターネットを活用している国民のうち、ネットで商品などを購入している割合は約70%と比較的高いといえる」と、BtoC(企業と消費者間の電子商取引)については自信をみせている。しかし、「中小企業のIT化は全体の10%」と、まだまだ遅れている状況を問題視する。
「最近では、ネットで映画やアニメをダウンロードして楽しむ人も増えている。ブロードバンド環境をさらに整備することにより、ますますネットビジネスが拡大していく」と、あらゆる層にブロードバンド化の恩恵が行き渡る政策を推進していく。
韓国が積極的なIT化に取り組み始めたのは97年末。金融破綻によりIMF(国際通貨基金)の管理下に置かれるという経済危機に直面したことをきっかけに、国家競争力と国民生活の質の向上を目的とした「創造的知識基盤国家」の創設に乗り出した。
99年3月には具体的な実践戦略「CYBER KOREA21」を創設。02年完成を目標にしていたが、1年前倒しの01年に計画を達成した。「e-KOREA VISION 2006」では、01年までの情報化の成果をもとに、引き続き06年までのIT化施策を盛り込んだ。
それでもシン団長は、「ITを有効的に活用することについては、日本や米国よりも遅れているのは事実」と指摘しており、「今後は、コンテンツを一層充実させ、世界で通用するビジネスモデルを増やしていくことが重要。情報インフラを整備するのはもちろんだが、インターネットの利便性を訴求していくことが情報化水準を高めるカギ」と強調する。