日本事務器は「IT導入が一巡してしまって、新しいものを導入していただくのが難しいという指摘があるが、そんなことはない。これまでとは視点を変えていけば、ITを活用していただく場面は無限にある」と指摘する。この言葉通り、業績も好調に推移しているという。IT不況といわれる中、同社が好調な理由はどこにあるのか、視点を変えてということはどういうことなのか、大塚社長に話を聞いた。
IT導入は難しいという指摘があるが、ビジネスチャンスはまだまだ多い
■業績が好調な理由は視点を変えてみること
日本事務器・大塚孝一社長は、社長就任から1年を迎え、「不況が続いたうえ、ITの導入は一巡して、新たな製品、システムを導入していただくのは難しいといわれるが、そんなことはない。当社のビジネスを見ても、売り上げは落ちていない」と、現在の業績が好調であると言及する。
「視点を変えてお客さまの現状を見れば、新しく導入していただくべきシステムは必ずある」。大塚社長は、社長就任直後、本社に4つの事業推進本部を設置。
同社の得意業種である医療、福祉分野を対象とした事業部のビジネスを行う医療福祉事業推進本部、官公庁や地方自治体、学校などを対象とした公共事業推進本部、自社開発の業務パッケージ「CORE Plus」を中核としたSIを提供するSI事業推進本部、サービスメニュー「Tortal System Solution Service(T・S・S・S)」を中心にサービスを提供するサポート&サービス事業推進本部というビジネスユニットである。
さらに今年4月1日には、拠点を4ブロックにまとめ、東日本営業本部、関東甲信越営業本部、中部営業本部、西日本営業本部という営業本部を設置した。そしてその中をビジネスユニットごとに組織した。
■拠点を4ブロックにまとめ情報をダイレクトに伝達 「これまで、営業、システム、サービスの社員は各拠点に所属していたために、活躍できる範囲も拠点テリトリーだけにとどまっていた。今回、拠点を4ブロックにしたことで、力がある社員は拠点の枠を越えて全国で活躍できるようになる。最新の技術動向については中央から拠点にダイレクトに素早く伝えることが可能になり、拠点で成功した事例をもった社員が、それを他の拠点に伝搬するということもできるようになる。これまで、サポート担当といっても、“ある年齢になったら、他の職種に”ということになりがちで、特定分野のプロといえる社員が育ちにくかった。今後は特定分野のプロといえる人材になってもらうことができる」
■現場の声を重視する姿勢がビジネスの提案にもつながる 現在はネットワークによって、各拠点にどんな人材がいるのか知ることができる。「お客さまの要望で、こんなことがやりたい、これはどうなっているのかというリクエストがあがり、自分の拠点ではそれに答えることができない場合でも、ある拠点にはその道のプロがいるとわかれば、その人を呼んだり、話を聞くなどして回答することができるようになる。プロとして認められた側も、仕事をしていく励みにもなり、お互いにプラスになる」。ビジネスとしても、社員のモチベーションとしてもプラスだと指摘する。
昨年の事業推進本部の設置と、拠点を4ブロックとしたことは、大塚社長が全国の拠点を訪れ、現場の社員及びお客さまの声を聞いたことで実施した施策である。大塚社長は「今年4月の拠点を4ブロックとした後でも、この組織変更で実際にどんなよい点が出ているのか、不都合がないのかといったことを聞いて回った」と、現場の声を聞くことを重視し、組織を動かしている。現場の声を生かすという姿勢は、組織だけでなく各事業推進本部の進めるビジネスにも表れている。
■使われる場面を描きながらソリューション提案 医療福祉事業推進本部では、ITを活用できる場面が、従来よりも広がりが出ているのではないかという視点で、システム提案を行っている。「約1000の病院にシステム導入実績があるが、病床数200~500程度の中堅病院に導入できるものとしても、医事会計システムから、オーダリングシステム、電子カルテといったものにまで広がっている。
従来の医事会計システムにとどまらず、電子カルテ、オーダリングシステム、さらにそれらにもっと様々なデータを連動していくということを考えれば、日本事務器の医療関係のお客さまに対して提案できることは、もっと広がっていける」
各事業推進本部のビジネスの適用範囲をもっと広がりをもって考えていくことで、「社内からは景気が悪くてビジネスがやりにくいという声がなくなった」という。
■医療系でITを活用できる場面が増えている 「今後は使われる場面を描きながら、本当の意味でのソリューション提供ができる企業に、変わっていかなければならない」と大塚社長は指摘する。そのために、強化していかなければならないというのが「ネットワーク構築力」である。
直近でいえば、IP電話をはじめ、テレビ会議システム、eラーニング、Web連携アプリケーションといったIPサービスの構築力アップである。特にIP電話については、IT減税の対象となっていることもあり、早急にサービス力を高める必要があるとして、自社内でIP電話を導入。「体感して、IP電話のよい点、悪い点を理解していく」計画だ。子会社であるNJCネットワークエンジニアリングを主体としてネットワーク事業の強化を進めていくが、IP電話サービスを平成16年度から開始する。現在、日本事務器では、タブレットPCを自らで持って、ペーパーレス会議となるとどんなメリット、デメリットがあるのかといったことを体感しているという。
「使ってみると、従来のノートパソコンとは違う使い方を思いつく。認証のサインも、形だけでなく、筆圧、書き方といったこともチェックされていて、簡単には真似できないことがわかる」といった具合に、積極的に新しいことに挑戦している。「いつまでもベンチャー精神をもった、自分たちで新しいビジネスを創っていくことができる企業でありたい」と大塚社長は話している。
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