東芝情報機器(TIE)は、東芝100%出資のトータルソリューションプロバイダである。平成14年度の売上高は1217億円で、事業の構成比はパソコン事業57%、システムソリューション事業14%、ドキュメントソリューション事業14%、サポート&サービス事業15%であった。「サポート&サービス事業に力を入れ、付加価値販売の構成比を高めることで、高収益企業への脱皮を図る」というのが能條昭社長の方針だ。
3Sをキーワードに
■ソフト、サポート、サービス、3Sのメニュー増やす
同社の前身は、昭和29年設立の川崎タイプライタである。昭和33年には東芝タイプライタとなり、以来、東芝直系の中核販社として取扱い商品も東芝製の事務機器、OA機器、コンピュータ関連機器、そしてIT機器という激動の時代を生き抜いてきた。
取扱い商品は、東芝・東芝テック・グループ会社及びサードベンダーから仕入れており、それらの商品に独自の付加価値をつけて販売している。
「大きくわけて、ハードウェア単体販売の収益と付加価値を付けたソリューション販売の収益はほぼ半々です。パソコンやMFP(デジタル複合機)などは東芝デジタルメディアネットワーク社や東芝テックから仕入れており、それらの商品に当社独自の付加価値を付けるために、プリンタやメモリなどの周辺機器や各種業務・業種パッケージなどの優れた商品を幅広く購入できる体制を取り、アライアンスは積極的に進めています。いまは、パソコンにしてもMFPにしても、ハード単体の販売だけで収益を出すことはむずかしくなってきており、官公庁などの入札では競合が日々激しさを増している状況です。その中で収益を出していくには、当社ならではの工夫を凝らしたソリューション販売に力を入れるしかありません。どの様に付加価値を付けて販売することが出来るか、これに徹しようと社員には呼びかけています」と能條社長。
「付加価値というのはあくまで当社の呼称であり、お客様が価値を認めてくれなければ意味がありませんので、社内では顧客価値を高めようと話しています。顧客価値を高めるには、今まで以上に使い勝手を良くするとか、今まで以上に効率が上がるシステムにするとか、さまざまな工夫が必要です。そのためには営業、ソフト、サービスが三位一体となって活動し、相乗効果を発揮させ3Sすなわちソフト、サポート、サービスへの積極的取組みが重要になります。従来の発想を変え、人材も3Sへのシフトなどを推進しながら、3Sのメニューも順次増やしていきたいと思っています」
■時代の要請に敏感に対応、解決策を提示して需要を生む そうした発想の転換で能條社長がまず重視しているのは、「時代が要請しているテーマに敏感になろう」という点だ。
「当社は、60歳以上のアクティブシニアの生きがい開発と地域社会の活性化に貢献する機能を果たすシルバー人材センター向けシステム“THE しるばー”や介護保険対応の“ゆとりーなシリーズ”など福祉、医療分野では高いシェアを維持していますが、この分野に早くからチャレンジしてきたためであると思っています。いまは、トレーサビリティシステムといって、食品など生産物がどのような流れで消費者に届いているかをトレース、つまり生産履歴の追跡管理を行うシステムにも既に取り組んでいます。時代の要請するテーマに対し解決策を提示すれば必ず需要が生まれます。現在進行中のe-Japan計画でも、自宅にいながら住民サービスが受けられるようになり、非常に便利になることは間違いありません。工夫次第では新たな市場が生まれるものと思っております。時代の要請するテーマを先取りして商品化し、新しいビジネスを創出していきたいと思っております」
もう一つ重視しているのは「ユビキタスネットワーク社会への対応」である。
「日本ではブロードバンド、携帯電話は個人市場で爆発的に普及しました。これが企業市場にも波及してくることは必然的な流れで、一言でいえばモバイルコンピューティング社会が到来するということです。すでに、企業のIT投資に対する姿勢は明らかに変化してきており、質的変化が起こり始めています。たとえば、SFA(セールスフォースオートメーション)ではモバイル需要が新たな需要喚起に結びつく可能性が見えていますし、将来的にはWebサービスが大きな市場に育つものと思われます。即ち企業間取引では、これまでEDI取引が中心でした。これはあくまで企業間同士のクローズされたシステムでしたが、インターネットを活用したWebサービスになると、他社システムとのリンクが非常に簡単にできるようになります。基幹系データ等のリンクになるとセキュリティ対策が重要になってまいりますが、これはこれで新たな需要を生むことになります。通信インフラの急激な発展を受けて、今後はどのようなアプリケーションを乗せていくかはこれからの課題であるといえます」
■今後の課題は直販強化、ノウハウを販売会社と共有 同社は東芝直系販社として、2次店も多数抱えており、その中で全国550社の主要販売会社がTIE会に加盟し活発な活動を展開している。それ以外にも数多くの大手システムインテグレータなどと取り引きしている。
「当社の販売形態は、全社では市販ルートが70%、直販が30%といったところですが、ソリューション販売では市販ルートが30%、直販が70%と逆転しており、さらに直販の比重を増やしつつあります。取引をしている販売会社は地場に密着、堅実な業績を上げており、ソリューション販売では協業体制を推進し、市販ルートは今後とも重視してまいりますが、市販ルートがカバーしていない大手企業や東芝グループ企業への直販強化は大きな課題だと認識しています」
「オフコンはまだまだ数多くのお客様で稼働しています。いずれ、このオフコン利用のお客様もオープンシステムへ移行されることとなりますが、代替システムとしては東芝eソリューション社のシステム、サン・マイクロシステムズのUNIXシステムに加えて、日本IBMのiシリーズも扱うことにいたしました。中堅規模以上のミッションクリティカルの用途にはiシリーズをお薦めすることになりますが、当面は直販でないと拡販できないと思っております。営業、ソフト、サービスが三位一体となって活動し、相乗効果を発揮させていき、われわれがそのノウハウを蓄積し、販売意欲の高い販売会社様とそのノウハウを共有していきたい」というのが当面の戦略だ。
販売会社への支援策としては、「Webを活用してのキャンペーンの進捗状況などの情報発信、情報共有により、Web環境を体感していただきたい」との意向だ。
【BCNへのメッセージ】 私自身は、東芝時代から長年ソリューション営業に携わってきましたが、その当時から「正確な情報を早く入手すること」の重要さを痛感してきました。いま、当社の社長として、別の観点から「正確な情報を早く入手すること」の重要さを日々体験させられています。求める情報というのは、立場によって各々違いますが、BCNさんはかなり幅広くカバーしておられるのでとても参考になります。これからも、早く、正確な情報を発信続けてくださるようお願いします。