今後5年間のIT投資は、拡大基調にある――。システムインテグレータなど有力企業21社のトップが予測するIT産業の将来像である。だが一方で、今後は技術革新やビジネスモデルの変化に追いつけない会社の淘汰が進む、との厳しい見方も。IT流通企業の目指すべきビジネスモデル、ソフト開発の手法、成長著しいアジア各国との関係、コンピュータ流通の在り方を、各社トップの証言をもとに検証する。
サービスの高度化で世界に貢献
IT産業は、途切れることなく技術革新が進む。加速度的に進む少子高齢化とアジア各国からの追い上げを受け、日本はITの全面活用で競争力の維持・向上に努める。政府機関の業務改革・高度IT化に伴い、民間のIT投資も持続的な活性化が見込まれる――。
これが各社トップが描く今後5年間の市場動向だ。このなかでIT業界は、より一層の効率化と生産性の向上が求められる。システムインテグレーションビジネスにおけるソフト・サービス分野へのシフトはもとより、システム構築やソフト開発の在り方が大きく変わるのは確実だ。
顧客の言いなりでゼロから情報システムを組み上げる受託開発型のビジネスは先細りし、業務改革、経営革新を実現する独自性の高いパッケージソフト、ASPサービスに果敢に挑戦・提案するシステムインテグレータが成長する。日本ビジネスコンピューター(JB CC)や日立情報システムズ、富士通ビジネスシステム(FJB)などは、相次いでパッケージを基盤としたシステム構築を打ち出している。
急成長するアジア各国については、21社のトップのなかでも“楽観論”と“脅威論”に分かれる。前者は、「5年間では、日本との技術格差は縮まらない」、「ITサービスは地域密着が原則で、海外からの参入は考えにくい」など。後者は、「世界のIT市場全体のなかで、アジアのIT生産力が飛躍的に高まり、日本の生産力が相対的ノ低下する」という見方だ。
ただ、情報家電の分野では、日本のソフト開発力を生かして、海外進出を果す企業も多いだろう。世界の情報家電のオープン化が進み、オープンなミドルウェアやアプリケーションの領域が広がる。富士ソフトABCの松倉哲社長は、「この分野で、日本のソフトベンダーのパッケージ製品が、世界のデファクトスタンダードになる可能性は十分にある」と鼓舞する。
IT流通について、日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)の梅哲雄会長(丸紅インフォテック社長)は、「直販で名を挙げたデルは、PB(プライベートブランド)専門の巨大流通業者である。IT流通の重要性を改めて世界に示した」と、徹頭徹尾、効率化された流通は今後とも繁栄すると指摘する。
一方、ソフトウェアの流通は劇的に変わる。ソフトバンクBBの宮内謙副社長、コンピュータウェーブの辻本和孝社長は、「流通の中心がパッケージからオンライン、ASPへの軸足を移す」との認識で一致する。
ITサービスは、革新的な技術をいち早く身につけ、顧客の問題解決に生かすサービス業に徹してこそ伸びる。随一の水準に達すれば、自ずと世界への道が開ける。
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