台湾は過去20年間、パソコンをコンシューマレベルに浸透させるために多大な貢献をしてきた。一方、台湾のパソコン産業としてもう1つ世界に誇れる分野がある。工業パソコンの分野である。台湾でナンバーワンの工業パソコンメーカー、アドバンテック(台北市)の何春盛営業担当副社長に台湾のIT業界の今後について聞いた。
中国と日本を結ぶブリッジに
―― 東アジアのIT産業は今後どのような方向に向かうべきなのでしょうか。 何 1970年代までは、コンシューマ製品の分野では日本が世界で一番リードしていたといっていいでしょう。AV(音響・映像)機器、カメラ、ファクスなどです。しかし、コンピュータに関連する部分は多少違っていました。この部分はソフト、ハードともに米国が主導権を握っていたわけです。
80年に入り、アップルコンピュータやIBMなどのパソコンが登場し、これらは83年から00年にかけてが黄金時代となりました。パソコンがメインフレームやミニコンピュータの領域を侵してきたわけです。
これが台湾にチャンスをもたらしました。日本の家電メーカーの分業または下請けをやっていた台湾企業が一斉にパソコン産業に参入できるチャンスを得たのです。これについては、日本メーカーとの提携などの下地があったからこそ、この移行が容易にできたと言えます。
パソコン黄金時代の後は、ポストパソコン製品が求められています。つまりインターネット接続を基本とする情報家電製品などです。携帯電話関連の分野もその1つです。
この分野ではコンテンツやヒューマンインターフェイス、そして優れた工業デザインのセンスが求められます。
日本のメーカーの力が再び求められるのではないでしょうか。この分野は日本が非常に得意としています。
―― 台湾のメーカーはチャンスを失うということですか。 何 いいえ。情報家電の分野はやはりデジタルの世界です。台湾は依然としてこの分野で優れています。しかし、台湾の場合、いままでOEMを含む製造中心のビジネスに偏り過ぎました。
しかし、今後はR&D(研究開発)やマーケティング、サービス分野で付加価値を取っていかないといけないと思います。
その1つの方法としては日本企業と提携関係などをもつことです。日本は製造そのものに関してはすでに競争力の点で台湾や中国にかないません。
今後、日本のメーカーは意匠面やヒューマンインターフェイスなどの分野に特化し、設計や製造は台湾に任せるべきです。
―― 現在の日本のIT産業の問題点はどんな点にあり、どう改善していくべきと思われますか。 何 日本企業は閉鎖的過ぎるのではないでしょうか。日本以外の企業とのコラボレーションがあまり得意ではありません。
最近は、中国での生産に多くの日本企業が注目していますが、中国は非常にリスクが大きい国です。直接的なコストの安さに目がいきがちですが、いろいろな意味で総合的なコストはそれほど安くないことも多いのです。
歴史的な経緯もあり、日本企業に対する風当たりも強いはずです。台湾企業はブリッジとして日本企業に対して重要な役割を果たすことができます。