台湾は一般的に教育に関して熱心である。台湾のIT事情取材にあたり今回訪問した中原大学(中櫪市)は、ミッション系の総合私立大学であるが、バランスのとれた全人教育の理念を掲げるなどユニークな教育方針で有名だ。熊慎幹(ステファン・シュン)学長に、教育の現場からみたIT産業とその未来、東アジアの国々の役割について話を聞いた。
社会人向けにIT教育を実施
―― 台湾の大学はIT教育に力を入れており、IT関連の人材育成に熱心ですね。 熊 その理由は3つあります。まず、過去二十数年間、台湾のIT産業は発展し続けており、その生産高や輸出高は他の産業を大きく上回っています。したがって、IT産業従事者の社会的地位が高く、収入も多いわけです。
台湾では、IT教育を受けたいという希望者が多いのです。
2番目に、ITに対して一般の人々はある程度の知識をもっていることです。つまり、ITの普及度が高いのです。
3番目に、台湾ではIT産業自体が成熟し、大学と産業界の連携もスムーズです。大学で行うIT教育と産業界の実際の需要とのズレが少ないのです。
―― 日本のIT産業界についてはどのような印象をもっていますか。 熊 アジア全体の分業体制が必要だと思います。アジア各国が役割を分担しながら成長してくことは今後も間違いないのですが、日本からの技術移転がうまくいかないと、他の国々にとってバランスが取れなくなります。日本は資本とその内容の両面で、技術転移をもっと容易にすべきです。
―― 中原大学はIT教育に力を注いでいますが、具体的にはどのような施策を行っていますか。 熊 現在、ITに関する学科(情報・計算機工学科、電子工学科)には「第二特徴」というプログラムがあります。
これは、ほかの学科の学生でも、約20単位のITに関する科目を取れば証明書を取得できるというものです。
また、一般の社会人に対しては、政府(労働省にあたる労働委員会)のプログラムに従い、主に若い社会人にIT知識を再教育しています。
―― ITで国が成長するためには、政府や大学と民間企業の連携が重要です。今後10年間どのような計画やモデルが必要であると思われますか。 熊 もちろん、今後数年間にわたって政府が予定している計画はかなり充実していると思いますが、これから台湾がIT産業で優位な立場を取り続けていくためには、創造力とシステムの整合力に対する訓練が必要です。
このようなものを教育に取り込むのは簡単にはいきませんが、そうしていかないと、他国に追い越されてしまうでしょう。