その他
電子自治体実証プロジェクト協議会 北海道庁と連携しオープンソース普及へ
2003/08/25 21:12
週刊BCN 2003年08月25日vol.1003掲載
電子自治体構築が全国で進むなか、北海道庁はサーバーOSをオープンソースに切り替える方針を明らかにし、そのための検討・研究活動をスタートしている。道庁の決定に応える形で、産学共同プロジェクトとしてオープンソースの研究を行う、「電子自治体実証プロジェクト協議会」が2001年度に発足した。3年目となる今年度で道からの補助は終わるが、新たにNPO(民間非営利団体)法人として活動を継続することが決まっている。会員企業も54社に拡大しており、北海道の電子自治体化への対応とともにIT産業振興を使命に新たなステージを迎えることになる。(川井直樹●取材/文)
来年度からNPO法人化し、事業展開も
■大手ベンダーも技術情報を提供、IT業界横断の研究会
電子自治体実証プロジェクト協議会のメンバーは、現在54社。地元のシステムインテグレータだけでなく、東京に本社を置く大手ベンダーの北海道支社や札幌支店も名を連ねる。ある大手ベンダーの北海道駐在の担当者によれば、「北海道庁の“肝いり”ということもあって、協議会に参加しなければ今後のビジネスに影響が出ることもある」という雰囲気ができているとか。
しかし、杉本強・電子自治体実証プロジェクト協議会事務局長(エキスパートアレー会長)は、「最初からビジネスとは無縁。協議会に参加する企業には、商売とは直接つながらないと説明している」と、あくまでも北海道の業界横断の研究会という立場を強調する。
とはいえ、今年度までの3年間は年1000万円の活動費の半分を道の補助金で占め、残りの半分を各社の会費でまかなうなど、道庁の支援が大きいのも事実。「月1回、道庁の担当者と意見交換し、オープンソースによる自治体システムを検討している」とは、NTTコムウェア北海道から協議会事務局に出向している槙尾真一氏。北海道が計画しているIT共通基盤である「北海道電子自治体プラットフォーム(HARP)」構想にも提言などで関わる。
協議会の主な活動は、「オープンソースの研究とともにセミナーなどの研修事業、さらに道内212の市町村向けに広報誌を発行している」(槙尾氏)と、北海道全体の電子自治体構築でオープンソースの標準化を目指している。
大手ベンダーの役割は、「(オープンソースについて)北海道を地盤とするIT企業の情報収集能力は限界がある。大手メーカーには技術情報の提供など、非常に協力してもらっている」(杉本事務局長)という。
01年度からの活動で、道庁が情報システムを発注する際、3000万円以下の案件については、地元企業や地元企業を中心としたコンソーシアムを優先するITチャレンジモデル推進事業やシステム開発参加のルール策定につながったと評価。
ただ、杉本事務局長は、「どうしても大都市の札幌市に企業が集中しているため、活動の中心が限られてくる。北海道は広く、遠隔地の地元企業が参加しにくい」ことを今後の課題に挙げる。
ほかにも成果は出てきている。協議会のメンバー企業の中で、すでにオープンソースで自治体関連業務を受注している企業が出てきたことと、メンバー企業と道、北海道電力と北洋銀行という北海道経済の中核企業が出資してオープンソースのシステムインテグレーションを業務とする「テクノフェイス」を02年4月に設立したことも、オープンソースの普及を後押しする。
テクノフェイスは北海道内の企業のほか、日立ソフトウェアエンジニアリング、NTTコムウェア、横河電機、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)など錚々たる大手企業も出資。取締役には嘉数侑昇・北海道大学大学院工学研究科教授をはじめとして大学の教官が加わる。さらに特徴的なのは、技術顧問として北海道大学、室蘭工業大学など道内の理系大学、工業専門学校の教官を配していることだ。
テクノフェイスの栗田好和社長は、「大学発のベンチャーとして、嘉数教授は“オープンソースでブチ壊す”というのが目標。オープンソースをベースに北海道発の技術を世の中に出す」ことがテクノフェイスの使命という。
出資企業として日本IBMや日立ソフトといった大手が控え、「技術スキルは豊富。それをどう伝え、どのように生かしていくか」(栗田社長)と、オープンソースの普及に努めていく。当然、電子自治体実証プロジェクト協議会や道との連携も深い。そうした立場から、HARP構想に対応してオープンソース研究に関する報告書を、9月末をめどに同社が中心になってまとめる予定だ。
道がオープンソースの採用を電子自治体の方針として掲げていることで、ビジネスチャンスが出てくることは確実。その時、協議会がどのような活動を展開するのかが課題だ。今年度で道の補助金も終了する。メンバーの賛同を得て、来年度からはNPO法人として事業継続することが決まっている。しかし、これまでは研究会として、「ビジネスは別」だった組織も、NPOとしてはビジネスに関わらざるを得ない。
■地域のIT産業振興に貢献、ビジネスの関わり方に課題も
協議会が単独で、自治体の発注する案件に手を挙げることはないが、「メンバー企業と協議会を中心としたコンソーシアムが競合することは出てくるだろう」と、杉本事務局長は語る。問題はその際に、内部の提案情報が他に流れたりしないか、また協議会が調整に走れば単に談合組織になってしまう恐れも出てくる。協議会として事務局の槙尾氏は、「今後も地元を中心に参加したいという企業には門戸を広げていく」と、地域のIT産業振興に貢献していく姿勢は変わらないという。
地域のシステムインテグレータの中には、「直接ビジネスにつながらない。得意分野での競争力が失われるようで、協議会に参加するメリットが見えない」(地元企業首脳)とする企業もあるが、オープンソースで本格的に自治体案件が動き出せば、ベンチャーであっても得意分野で参画するチャンスも出てくるだろう。
経済産業省北海道経済産業局でも、「政府でもオープンソース採用の動きが出ている。北海道での取り組みも進んでおり、地元IT産業振興に与える影響が大きい」(多田好克・北海道経産局情報政策課課長補佐)としており、北海道経産局としてもオープンソースによる道内IT産業の発展に関して調査を開始する考えだ。
電子自治体構築が全国で進むなか、北海道庁はサーバーOSをオープンソースに切り替える方針を明らかにし、そのための検討・研究活動をスタートしている。道庁の決定に応える形で、産学共同プロジェクトとしてオープンソースの研究を行う、「電子自治体実証プロジェクト協議会」が2001年度に発足した。3年目となる今年度で道からの補助は終わるが、新たにNPO(民間非営利団体)法人として活動を継続することが決まっている。会員企業も54社に拡大しており、北海道の電子自治体化への対応とともにIT産業振興を使命に新たなステージを迎えることになる。(川井直樹●取材/文)
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